「ガーデンハット」を修理して欲しいとのご依頼があるも、何のことなのか見当も付きません。
ご依頼主のお宅を訪問し、直接見せていただいて分かりました。電動開閉式のオーニング、
ベランダなどの庇部分に取り付ける日除けのことで、その一商品名でした。リモコンで操作
しても何の反応もせず、日除けが途中まで開いた状態で既に数年が経過しているそうです。
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1.現地作業1日目 事前調査 |
この状態で開くことも閉じることもできず、何年もの間そのままになっていました。強風時
など面積のあるオーニングに大きな力が加わるので、とても心配されてきたそうです。
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開閉は離れた所からリモコンで操作します。このボックスは
リモコンの受信部とモータの電力制御部を内蔵しています。
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以前にメーカーも含めて何度か修理に来たとのこと
です。リモコンのチャンネル合わせをし直したそうです。 |
パネル上のパイロットLEDは正しく表示されます。
リモコン操作や電力制御は問題ないようです。
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オーニングを開閉する12V駆動のギヤードモータです。
このモータが不具合を起こしている可能性もあります。
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制御部から外壁伝いにケーブルが延びています。
その先にひとかたまりの装置が取り付けられています。
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太陽光パネルです。太陽光から電力を得て
全く電気代をかけることなく運転できます。
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太陽光パネルは寿命があり経年劣化します。取り外して発電能力を点検します。
明るい場所に置くだけで20V(無負荷)近い電圧があります。まだ使えるでしょう。
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太陽光パネルを支えている背面のボックス
です。耐候性のある堅牢な樹脂製です。
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上下のカバーを外すと中からバッテリーパックが出て
きました。仕様12Vに対して10Vしかありません。
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2.現地作業2日目 電源ユニットによる試運転 |
バッテリーパックからの電力供給が、経年劣化により仕様電圧12Vを下回っていることが動作
しない原因であると考えられます。作業2日目は工房から12Vの電源装置を持参しました。
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ボックス手前の庇上に必要な
器材を載せて作業します。
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ケーブルのコネクタに合わせ同じ
規格のコネクタを用意しました。
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スイッチング電源の+12V端子
から電力を取り出し供給します。
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2P端子と3P端子ですが、
〇形と□形を合わせます。
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ケーブルを介して制御部およびギヤード
モータに電力が供給されているはずです。
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オーニングが動き始めました。つまり、
制御部~駆動部に不具合はないようです。
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数年ぶりにオーニングが閉じていきます。
リモコンの通信も特に問題ありません。
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オーニングが完全に収納されました。日射を多く取り
込みたい冬期間はさぞご不便だったことと思います。
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電動で開閉ができない場合、ハンドルを使って手動で開閉することになります。
ギヤ比が電動用に設計されているため、ハンドルを回す回数が大変です。
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3.バッテリーパック製作 |
不具合の原因はバッテリーパックの劣化です。
10年近く経過しているので止むを得ません。
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外装の印刷を確認すると12V、
2000mAhのNi-Cd電池です。
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ニッカド電池であれば容易に入手できます。
リチウムイオンに比べてはるかに安価です。
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ただし、12Vを構成するには計10本が必要
です。何故か12Vパックは数万円もします。
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費用を抑えるために2本パックを5セット
購入してバッテリーパックを製作します。
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10本が直列になるよう端子の向きを揃えて
配列し、まず2本ずつグルーガンで接着します。
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2本ずつ5セットを用意してから
再度配列と極性を確認します。
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2本ずつのセットを縦方向に積み重ねます。
外装フィルムとグルーの接着性が良好です。
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10本12V分のパックが出来上がりました。
両極端子から出ているタブの長さを調整します。
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タブを互いに半田付けします。
多めの半田でしっかり接合します。
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元のバッテリーパックから配線を取り
外します。コネクタごと再利用します。
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新しく製作したバッテリー
パックに取り付けます。
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12Vのパックを購入しても、コネクタの規格が異なって
いる場合が多くあります。そして、とても高額です。
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注意深く組み立てたつもりですが、念の
ため電圧を確認します・・12Vです。
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上下を挟む電極端子保護用のカバーも
再利用します。グルーガンで固定します。
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外側を保護する熱収縮性のフィルムを入手
できず、幅広のビニルテープを使用します。
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3重に巻き付けて保護します。屋外に設置する
ので、耐候性の点でやや不安が残ります。
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とにかく格安に仕上げることが出来ました。ニッカド電池ですから定期的な交換
(おそらく2・3年ごとでは)が不可欠です。安価な交換方法を確立しておきます。
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4.現地作業3日目 バッテリーパック交換・復旧 |
工房で製作したバッテリーパックを携え、
現地3日目(3回目)の作業に臨みます。
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ボックスの上部からバッテリーを落とし
込み、下側にケーブルを引き出します。
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太陽光パネルと直結配線されている
2個のコネクタの片方に接続します。
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上側のカバーを取り付けます。
両側からネジ固定される構造です。
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続いて太陽光パネルを元に戻します。
コネクタ付きのケーブルをパイプに通します。
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パイプの左右2方向からネジを
しっかり締め込み固定します。
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バッテリーパックが回路に電力を供給している
状態で、電圧を再度確認します。12Vです。
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太陽光パネルのコネクタとの間に電流計を入れて
確認します。20mA強、こんなところでしょうか。
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下側のカバーを取り付けます。中央に
排水用の穴(ドレン)が開いています。
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この太陽光パネルにも経年劣化があるはずです。
数日間バッテリーの充電状態を見て判断します。
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バッテリーパック交換の際に、部品だけで数万円もかかるとすると、家庭の
電灯線を使った電気代とあまり変わらない・・逆に高くつくかも知れません。
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太陽光パネルやバッテリパックを取り止めて、電灯線の電力を使用するよう方式を変更することも
可能でしょう。しかし、製品としての安全性を担保する上で、不用意に工事することは却ってお客様に
迷惑をおかけします。製品本来の仕様通りに、できるだけ安価で復活させるよう努力して参ります。
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