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家庭用のヘアドライヤーの故障を修理します。
スイッチを入れても動作しない(風が出ない、温まらない)そうです。
完全に故障するまでに、ドライヤーの持ち方によりスイッチが入ったり切れたりを繰り返していました。
故障の原因は単純な断線によるもので、修理は簡単ですが電熱器具なので確実に作業します。
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故障箇所の確認
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ドライヤーを手にしてすぐに気づいたのは、電源コードの取り出し口のビニル製保護カバーが根元で切れている
ことです(写真左)。その中で電源コードも切れかかっています(写真右)。
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電源コードの傷みは深刻で、黒く変色した芯線が一部外に飛び出しています。芯線どうしが接触して過大電流が
流れ、火花が出て発熱していたようです。芯線は黒く焼け、ビニル被覆も熱で溶けかかっています。
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分解作業
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電源コードを交換するか、少なくとも焼けた部分を取り除かねばなりません。ハンドル部分のカバーを開けます。
2か所のネジを緩めるとカバーが外れて内部にアクセスできるようになります。
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電源コードの根元部分が切れかかっているので、損傷箇所だけを取り除くことにします。本体からコードを切り離す
ため、いったん接続部の手前で切断します。
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作業をしやすくするためニッパで電源コードを切断しておき、半田ごてを当てて接続部からコードの残りを完全に
取り除きます。
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モーター・ヒータおよびスパイクノイズ防止用のコンデンサの配線が残りました(写真左)。続いてスイッチ端子に
接続されていたコードの残りを取り除きます(写真右)。
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電源コードの修復
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根元近くに見られる電源コードの損傷部分を、少し余裕をみて切り落とします。その後、ビニル被覆を取り去って
新しい芯線を出し、作業しやすいように1方向に撚り合わせておきます。
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スイッチ端子の穴に芯線を通し、折り曲げて反転させます。さらに半田を十分に溶かし付けて固定します。
小型とはいえ電熱器具なので電気容量が大きく、確実に接続させるよう丁寧に作業します。
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接続部が完全に半田で覆われてました。芯線がはみ出ている場合はニッパで取り除きます。続いて、モーター・
コンデンサ側を接続します。予め芯線を折り曲げて互いにからませておきます。
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こちら側も半田を十分に溶かし付けて、接続部を完全に覆います。本来ならば接続部周りを絶縁テープなどで
保護すべきでしょうが、元々措置されていなかったのでそのままにしておきます。
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ハンドル内部の損傷
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ハンドル部カバーを元通りに組み直そうとしたところ、本体側の凹部に何か破片のようなものが挟まっていることに
気づきました。両者の凹凸はカムのような構造をしており、ハンドルをたたむ際にクリック感を持たせています。
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カバーの内側、リング状の凸部をよく観察すると、1か所材料が欠け飛んだようなところがあります。先ほどの
破片を合わせてみると形状がぴたりと一致します。使用しているうちにここが欠けてしまったのでしょう。
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樹脂の可撓性を利用してクリック感を持たせており、噛み合い部にはかなりの力がかかるはずです。
心許ない感はありますが、樹脂用接着剤で欠けた面同士を軟化させてから融着させます。
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吊り輪の修復
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電源コード取り出し口のビニル製保護カバーを修復します。同様の部品が手に入れば簡単ですが、少なくともコードと
一体で安くないでしょう。カバーの一部はリング形で、ドライヤーの吊り輪として機能するのでしょう。
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接着以外に特に良い修理方法は見当たりません。破断部分の接着性を向上させるため、断面に出ている突起を
カッターで切り落としてから接着します。新品時の耐久性は期待できませんが、使用時の危険性は除去できました。
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ハンドル部のカバーを元通りに組み付けます。内部に溜まりがちな埃もクリーニングしておきます。最後に動作
確認を行って作業終了です。
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数日前のテレビ番組で、家電製品の買い替えについて放送していました。その中で、ヘアドライヤーに多い故障と
して電源コードの損傷が取り上げられていました。原因のほとんどは、使用後コードを本体に無理に巻き付けて
しまうことです。火災につながる重大な故障ですので十分に留意しながら利用下さい。点検や修理は守谷工房へ。
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