グランパームブランドのヘアドライヤー修理のご依頼をいただきました。
どこへ持って行っても修理を断られてしまい、まだ十分新しいのに大変
お困りだったようです。工房WEBのリペアをご覧になりお問い合わせ
下さったそうで、ここは何としてでもご要望にお応えしたいものです。
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本体側面に「ABSOLUTE STYLING」
「GlamPalm」のロゴがあります。
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ヘアサロンでも使用されている米国UNIL社GlamPalm
ブランドのプロ用ヘアドライヤー「GP709AS」です。
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グランパームブランドのWEB。日本国内に法人は
ないようで、韓国にアジア地域ディーラーがあります。
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GP709ASは現行機種です。USD160、
定価で19000円もする高級機種です。
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シンプルで非常に品の良いデザイン、同時に
プロユースに耐える堅牢で丁寧な造りです。
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電源コードの根元部分が中で断線して
いるようで、電源が入らないとのことです。
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電源コードを確認してみると、繰り返し折り曲げられたためでしょうか根元部分の
被覆に損傷があり、この部分で内部の芯線が断線しているものと思われます。
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本体内部の接続部にアクセスする必要が
あります。本体カバーの分解にかかります。
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まずエアの吹き出し部を取り外します。
上下2本の小ネジで固定されています。
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ヒータ回りのメンテ(クリーニング)が考慮されて
いるのか、吹き出し部の取り付けは簡単です。
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吹き出し部が外れ、中のヒータ
(電熱線)が見えてきました。
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UNIL社独自技術によるヒータです。電熱線やブラケットの
表面に特殊セラミック(黄土色)がコーティングされています。
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分解を続けます。背面にもう
1本小ネジが打たれています。
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グリップ部に伸びる本体カバーは
さらに2本のネジで固定されています。
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グリップ部のネジは本体内に埋め込まれ、
樹脂製のキャップが嵌められています。
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精密で気密性の高いキャップが使われており
ピンセットで隙間を作らないと抜けてきません。
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2本のネジを緩めます。強く固定するため
10mmのタッピングネジが使われています。
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本体カバーを左右に分離します。噛み合っている
爪を破損させないよう慎重に引き離していきます。
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日本製品のような凝った噛み合わせ構造
ではありません。すんなりと分離しました。
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折角内部にアクセスしているので、できるだけのメンテをしておきたいものです。
写真のように送風ファンの流入側に埃が堆積しています。クリーナで吸い取ります。
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フィンの内側にこびり付いた埃も拭き取り
ます。これでクリーンな気流に戻ります。
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カールしたヒータの隙間に毛髪が絡まっています。
異臭の原因になるので丁寧に取り除きます。
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スイッチ基板を引き出します。電源コードは
基板の端の方に半田付けで接続されています。
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AC電源の接続部(ランド)は2組用意されており、
基板の中央寄りのランドが使用されています。
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1200Wの電熱器具用なので、2.0平方mmのHHFF
(ゴム平形コード)が使われています。半田を溶かします。
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半田吸い取り器を用いてランド回りの
余分な半田を綺麗に除去します。
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電源コードの断線部分を、コードホルダーごと取り外しました。低価格の機種(多くの
日本製)ではコードとコードホルダーがモールド(一体成型)されていて、修理不能か
あるいは無理に修理するとホルダーが壊れてコードを保持できなくなってしまいます。
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コードの端をラジオペンチで掴み強く引いて
みます。意外にも素直に抜けてきました。
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驚きました、さすがプロユースです。コードホルダーは2段
構造をしており、金具を内蔵したリングがコードを固定します。
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ご依頼主のご要望でコード長を1.5mに
変更しました。コードの撚りも取り除きます。
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コードホルダーの可撓部(フックが付いている
部分)は簡単にコードを通すことができます。
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固定リングは金具を少し広げた状態で通します。
最後に外側から圧縮すればコードが固定されます。
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スイッチ基板に接続するため
取り出し長さを適切に決めます。
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コード端を処理します。太いコード(162芯)なので
綺麗にまとめないと基板の穴を通りません。
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精緻な設計のため穴の周囲に
ほとんど遊びがありません。
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12Aもの大電流を通過させるため、十分な
半田を溶かし付けてしっかり固定します。
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被覆の端面を基板に密着させ、隙間
から芯線が見えないよう注意します。
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余分な芯線をニッパで切り落とします。
半田の山を少し残すようにカットします。
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電源コードの接続作業を終えました。
内部断線の問題は解消されます。
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本体内部にアクセスできた機会に、海外製品の仕様を観察します。
温風のON-OFF切り替えスイッチ部分です。スイッチの左右に
LEDが配置され、押ボタンと一体の樹脂カバーを点灯させます。
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ヒータへの電力供給コードは、大電流に対応
するためコード端を小ネジで固定しています。
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スイッチ基板を本体グリップ部に収めます。予め風量
切り替えスイッチのスライドプレートを外しておきます。
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コードホルダーの固定用リングをたくし上げ、
先に金具を圧縮してから嵌め込みます。
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続いてコードホルダーの可撓部を
グリップ内の溝に嵌め込みます。
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本体カバーを元通りに組み合わせます。厄介な
噛み合わせ構造がないので、すんなり収まります。
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2本のタッピングネジをしっかりねじ込みます。
この2本が本体剛性のほとんどを担います。
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ネジ穴に樹脂製のキャップを嵌め込みます。
隙間を確保しないと奥まで入りません。
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吹き出し部を取り付け小ねじで固定
します。ほどほどのトルクに留めます。
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4段階の風量について、各々温風の有無で
動作テストを行います。LEDも点灯しています。
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梱包を終えて納品の準備完了です。GP709ASは現行機種なので、グランパームのサービスに
問い合わせれば修理可能だと思います。英語版WEBでは必要書類を添えてロサンゼルスまで
製品を送るように、日本語版では取りあえずフォームから問い合わせるよう説明されています。
おそらく韓国のディーラーが対応するのではないでしょうか。いずれにしてもかなり敷居が高いと
言わざるを得ません。コードの断線程度は十分に対応可能です。守谷工房にお声がけ下さい。
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