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大型加湿器修理(2016.12.23)

施設で使われている大型強力加湿器修理の依頼をいただきました。
とにかく大きいです。故障状況は、これまで修理してきたものと同様
ミストが出なくなったとのことです。小型加湿器で修理実績を重ねて
きたので、何とか修理できるだろうと工房に持ち運んできました。
 

アイリスオーヤマ製、PHA-1000
「強力ハイブリッド加湿器」です。
 
 
大型のファンを内蔵し、発生させた
ミストを広範囲に拡散させます。
 

8リットルのタック容量で、17畳の
木造和室を8時間にわたり加湿します。
 

超音波振動子とヒーター併用によるハイブリッド
加湿方式です。ネット上の取扱説明書はSPKから
始まる型番で、アイリス社直販モデルのようです。
 

内部を点検するため
まず上蓋を外します。
 

内蔵されている4リットル
タンク2本を抜きます。
 

運転モードを切り替えると、8リットルの
水で18時間近く連続加湿が可能です。
 

タンクを抜き取ると、中央に加湿筒
(ミストを上部に導く)が現れます。
 

側面の掃除用窓カバーを取り外します。
ここから内部の手入れができます。
 

すぐ隣の吸気口カバーを取り外します。内側に
エアフィルターが取り付けられています。
 

加湿筒を引き抜きます。手入れが
しやすいよう簡単に外れます。
 

超音波振動子が2個取り付けられて
います。小型加湿器と同じもののようです。
 

振動子の周りに、まだ水が残っています。
ゴミが浮遊しひどい汚れ方をしています。
 

イオン交換樹脂カートリッジを引き上げます。
カルキの発生を抑える働きがあります。
 

カートリッジの入っていた底部分にも水が残り
変色してほとんど汚水の状態です。
 

取りあえず残っていた水を捨てました。付属の
スポイトではなく、逆さにして一挙に放り出します。
 

水道水を注ぎ濯いでは捨てる作業を繰り返す
ことで、砂のような沈殿物も取り除きました。
 

カートリッジの効果でいくらかはマシですが、
こびり付いたカルキや垢は薬品で取り除きます。
 

ミストが発生しないのは、ほぼ超音波
振動子の劣化・寿命が原因でしょう。
 

劣化した超音波振動子を交換します。
内部にアクセスするため底蓋を外します。
 

本体が大型だけに、底蓋の取り付けも厳重
です。計15本のネジで固定されています。
 

本体内部の電気回路部分が露出しました左側に制御回路、その奥に電源回路、中央に超音波
振動子とドライブ回路が見えます。右側の給水パイプに加熱用ヒータが取り付けられています。
 

超音波振動子・ドライブ回路ともに、小型の
加湿器と同様のものが2組使用されています。
 

修理に先立って内部を清掃します。
カルキと埃にまみれています。
 

ドライブ基板上に出力調整用の半固定抵抗器がありま
せん。超音波振動子の僅かな劣化で交換が必要です。
 

制御基盤とドライブ基板を接続
しているコネクタを抜きます。
 

ドライブ基板を固定して
いるネジを緩めます。
 

超音波振動子を固定しているネジを緩めます。
ダイキャスト製のベースに強く固定されています。
 

作業の邪魔になるので、給水パイプヒータの
温度センサーのケーブルも抜いておきます。
 

ドライブ用のパワートランジスタは、過熱
センサーごとネジで固定されていました。
 

取り外された2組のドライブ
基板および超音波振動子です。
 

ドライブ基板の裏側(配線側)を点検
します。カルキと埃が付着しています。
 

ブラシで汚れを落とします。配線パターンや
部品の半田付け状態も確認します。
 

汚れが落ちて綺麗になりました。
特に回路には問題ないようです。
 

元の超音波振動子を取り外します。振動面や
その周囲にカルキが集積しています。
 

新しい超音波振動子(左側)と取り外した振動子です。
リード線の色は同じ(青・黄)ですが、極性が逆です。
 

2組とも新しい超音波振動子に交換しました。新しい方は内側
電極に青色リード、外周部電極に黄色リードが接続されています。
 

超音波振動子が取り付けられるダイキャスト製
ベースにもカルキが集積しています。削り落とします
 

金属製カバーを重ねて超音波
振動子をネジで強く固定します。
 

超音波振動子の交換作業終了です。ドライブ基板上に出力調整の
可変抵抗器がないため、このまま一発で動作することを祈ります。
 

水位センサーも点検しておきます。
この部分に差し込まれています。
 

ネジを緩めブラケットごと
手前に引き抜きます。
 

小型のリードスイッチが使われています。
フロートのマグネットによりON・OFFします。
 

ミストは内部のシロッコファンに加え、大型プロペラファンに
より拡散されます。サーキュレータのカバーを外します。
 

本体左右の取っ手を外します。
予想外に強くはめ込まれています。
 

なかなか本体を分解できません。
どこかに隠しネジがありそうです。
 

本体背面の製品シールに隠れて
ネジが1本みつかりました。
 

本体のほぼ中央部分に3mmの
タッピングネジが締め込まれていました。
 

片側4か所で噛み合う爪を解放すると
ようやく本体が前後に分離します。
 

本体上端周囲は別部品が組み付けられています。
本体前面部に固定しているネジを緩めます。
 

操作パネル側の嚙み合わせが非常に
タイトです。ミストが入り込みにくい設計です。
 

操作パネル内側に組み込まれている
スイッチ・LED表示基板を取り外しました。
 

電源操作スイッチの動作が不安定だからです。
このタクトスイッチの劣化が原因です。
 

工房に同等の補修部品の在庫があり
ました。端子が長いので切り詰めます。
 

表面実装でランド面積が小さく
微細な半田付け作業が必要です。
 

電源操作スイッチが復旧しました。が、加湿
モードを表示するLEDが1個点灯していません。
 

加湿モード「パワフル」を表示する
このLEDが破損しています。
 

長さ3mmの表面実装タイプの緑色LEDです。
左右の端子に均等に半田ごてを当てます。
 

作業は蛍光灯付き拡大鏡の下で
行います。前後の距離感が狂います。
 

同等の補修用LEDを購入しました。数十円の
部品で、交通費・送料がはるかに高くつきます。
 

運の悪いことに入手したLEDは
長さ2mmで一段と小さなものです。
 

アノード・カソードを取り違えないよう取り付けます。
半田付け作業中は息を止めていないとコテ先がぶれます。
 

本体内部を全体的に掃除します。
カルキと埃が隅々に広がっています。
 

サーキュレータのプロペラファン
です。清掃のため抜き取ります。
 

プロペラファンの羽の表面も
カルキと埃で汚れています。
 

ブラシで表面を強く擦りながら、
クリーナで汚れを吸い取ります。
 

樹脂の白さが戻り、艶が出て
見た目にも綺麗になりました。
 

ひと通り故障個所の修理が終わったので
ここでいったん動作確認を行います。
 

モードを「パワフル」にすると、ダブルの
超音波振動子から猛烈にミストが発生します。
 

ミスト発生中に、内部から何か
機械的なノイズが聞こえてきます。
 

ミストを外部に送り出すシロッコファンが
回転に伴って耳障りな音を立てています。
 

シロッコファンを覆っている
カバーを取り外します。
 

下側のネジは電源基板の奥に
あります。基板を外します。
 

僅かなノイズも、夜間など静寂な
環境下では気に障ります。
 

ファンやモータはカバー側に取り付けられています。
ノイズ源の軸受を清掃し、羽の汚れも落とします。
 

元通りに組み付けます。
非常に静かになりました。
 

本体を元通りに組み立てます。
故障修理としてはここまでですが・・
 

各部はまだ汚れたままです。この加湿筒も、
ひと晩クエン酸溶液に浸けておきました。
 

カルキが溶け出しているので、
ブラシと洗剤で一挙に落とします。
 

カルキ・カビ・水垢が合体して
一面に褐色の膜を作っています。
 

クレンザーを使えば楽に汚れを落とせますが、
細かな傷が付き次の汚れが付きやすくなります。
 

真っ白な樹脂の色が戻りました。
とても清潔な印象です。
 

加湿筒を組み付けます。ノズルの下部にも小さな
マグネットがあり、リードスイッチをON・OFFさせます。
 

操作パネルの端が捲れていました。
瞬間接着剤で修復します。
 

切れていた「パワフル」のLEDも正常に点灯します。
両隣のLEDと輝度や色味がほぼ同じです。
 

本体外周部にはあちこち
傷+汚れが付いています。
 

比較的浅い傷なので、樹脂用
コンパウンドで丁寧に擦り取ります。
 

傷が消えるとこの通りクオリティが一段上がります。
年式が新しいので全体的に艶が保たれています。
 

背面側を見ると、何かにぶつけたのか
赤い傷+汚れが付いています。
 

こちらも樹脂用コンパウンドで
綺麗に消し去ることができました。
 

全体の組み立てを終え、最終的な動作確認を
行います。操作パネルの問題も全て解決しました。
 

ドライブ基板に半固定抵抗器がないため、出力調整に
よって超音波振動子の寿命を維持することができません。
 

出力調整ができれば、最初は出力を絞り気味で使用し、超音波振動子が劣化
(振動特性が変化)してきたなら、出力を少し上げて限界まで使用することができます。

 
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