施設で使われている大型強力加湿器修理の依頼をいただきました。
とにかく大きいです。故障状況は、これまで修理してきたものと同様
ミストが出なくなったとのことです。小型加湿器で修理実績を重ねて
きたので、何とか修理できるだろうと工房に持ち運んできました。
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アイリスオーヤマ製、PHA-1000
「強力ハイブリッド加湿器」です。
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大型のファンを内蔵し、発生させた
ミストを広範囲に拡散させます。
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8リットルのタック容量で、17畳の
木造和室を8時間にわたり加湿します。
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超音波振動子とヒーター併用によるハイブリッド
加湿方式です。ネット上の取扱説明書はSPKから
始まる型番で、アイリス社直販モデルのようです。
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内部を点検するため
まず上蓋を外します。
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内蔵されている4リットル
タンク2本を抜きます。
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運転モードを切り替えると、8リットルの
水で18時間近く連続加湿が可能です。
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タンクを抜き取ると、中央に加湿筒
(ミストを上部に導く)が現れます。
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側面の掃除用窓カバーを取り外します。
ここから内部の手入れができます。
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すぐ隣の吸気口カバーを取り外します。内側に
エアフィルターが取り付けられています。
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加湿筒を引き抜きます。手入れが
しやすいよう簡単に外れます。
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超音波振動子が2個取り付けられて
います。小型加湿器と同じもののようです。
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振動子の周りに、まだ水が残っています。
ゴミが浮遊しひどい汚れ方をしています。
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イオン交換樹脂カートリッジを引き上げます。
カルキの発生を抑える働きがあります。
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カートリッジの入っていた底部分にも水が残り
変色してほとんど汚水の状態です。
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取りあえず残っていた水を捨てました。付属の
スポイトではなく、逆さにして一挙に放り出します。
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水道水を注ぎ濯いでは捨てる作業を繰り返す
ことで、砂のような沈殿物も取り除きました。
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カートリッジの効果でいくらかはマシですが、
こびり付いたカルキや垢は薬品で取り除きます。
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ミストが発生しないのは、ほぼ超音波
振動子の劣化・寿命が原因でしょう。
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劣化した超音波振動子を交換します。
内部にアクセスするため底蓋を外します。
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本体が大型だけに、底蓋の取り付けも厳重
です。計15本のネジで固定されています。
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本体内部の電気回路部分が露出しました左側に制御回路、その奥に電源回路、中央に超音波
振動子とドライブ回路が見えます。右側の給水パイプに加熱用ヒータが取り付けられています。
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超音波振動子・ドライブ回路ともに、小型の
加湿器と同様のものが2組使用されています。
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修理に先立って内部を清掃します。
カルキと埃にまみれています。
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ドライブ基板上に出力調整用の半固定抵抗器がありま
せん。超音波振動子の僅かな劣化で交換が必要です。
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制御基盤とドライブ基板を接続
しているコネクタを抜きます。
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ドライブ基板を固定して
いるネジを緩めます。
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超音波振動子を固定しているネジを緩めます。
ダイキャスト製のベースに強く固定されています。
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作業の邪魔になるので、給水パイプヒータの
温度センサーのケーブルも抜いておきます。
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ドライブ用のパワートランジスタは、過熱
センサーごとネジで固定されていました。
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取り外された2組のドライブ
基板および超音波振動子です。
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ドライブ基板の裏側(配線側)を点検
します。カルキと埃が付着しています。
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ブラシで汚れを落とします。配線パターンや
部品の半田付け状態も確認します。
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汚れが落ちて綺麗になりました。
特に回路には問題ないようです。
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元の超音波振動子を取り外します。振動面や
その周囲にカルキが集積しています。
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新しい超音波振動子(左側)と取り外した振動子です。
リード線の色は同じ(青・黄)ですが、極性が逆です。
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2組とも新しい超音波振動子に交換しました。新しい方は内側
電極に青色リード、外周部電極に黄色リードが接続されています。
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超音波振動子が取り付けられるダイキャスト製
ベースにもカルキが集積しています。削り落とします
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金属製カバーを重ねて超音波
振動子をネジで強く固定します。
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超音波振動子の交換作業終了です。ドライブ基板上に出力調整の
可変抵抗器がないため、このまま一発で動作することを祈ります。
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水位センサーも点検しておきます。
この部分に差し込まれています。
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ネジを緩めブラケットごと
手前に引き抜きます。
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小型のリードスイッチが使われています。
フロートのマグネットによりON・OFFします。
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ミストは内部のシロッコファンに加え、大型プロペラファンに
より拡散されます。サーキュレータのカバーを外します。
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本体左右の取っ手を外します。
予想外に強くはめ込まれています。
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なかなか本体を分解できません。
どこかに隠しネジがありそうです。
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本体背面の製品シールに隠れて
ネジが1本みつかりました。
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本体のほぼ中央部分に3mmの
タッピングネジが締め込まれていました。
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片側4か所で噛み合う爪を解放すると
ようやく本体が前後に分離します。
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本体上端周囲は別部品が組み付けられています。
本体前面部に固定しているネジを緩めます。
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操作パネル側の嚙み合わせが非常に
タイトです。ミストが入り込みにくい設計です。
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操作パネル内側に組み込まれている
スイッチ・LED表示基板を取り外しました。
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電源操作スイッチの動作が不安定だからです。
このタクトスイッチの劣化が原因です。
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工房に同等の補修部品の在庫があり
ました。端子が長いので切り詰めます。
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表面実装でランド面積が小さく
微細な半田付け作業が必要です。
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電源操作スイッチが復旧しました。が、加湿
モードを表示するLEDが1個点灯していません。
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加湿モード「パワフル」を表示する
このLEDが破損しています。
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長さ3mmの表面実装タイプの緑色LEDです。
左右の端子に均等に半田ごてを当てます。
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作業は蛍光灯付き拡大鏡の下で
行います。前後の距離感が狂います。
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同等の補修用LEDを購入しました。数十円の
部品で、交通費・送料がはるかに高くつきます。
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運の悪いことに入手したLEDは
長さ2mmで一段と小さなものです。
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アノード・カソードを取り違えないよう取り付けます。
半田付け作業中は息を止めていないとコテ先がぶれます。
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本体内部を全体的に掃除します。
カルキと埃が隅々に広がっています。
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サーキュレータのプロペラファン
です。清掃のため抜き取ります。
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プロペラファンの羽の表面も
カルキと埃で汚れています。
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ブラシで表面を強く擦りながら、
クリーナで汚れを吸い取ります。
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樹脂の白さが戻り、艶が出て
見た目にも綺麗になりました。
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ひと通り故障個所の修理が終わったので
ここでいったん動作確認を行います。
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モードを「パワフル」にすると、ダブルの
超音波振動子から猛烈にミストが発生します。
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ミスト発生中に、内部から何か
機械的なノイズが聞こえてきます。
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ミストを外部に送り出すシロッコファンが
回転に伴って耳障りな音を立てています。
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シロッコファンを覆っている
カバーを取り外します。
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下側のネジは電源基板の奥に
あります。基板を外します。
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僅かなノイズも、夜間など静寂な
環境下では気に障ります。
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ファンやモータはカバー側に取り付けられています。
ノイズ源の軸受を清掃し、羽の汚れも落とします。
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元通りに組み付けます。
非常に静かになりました。
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本体を元通りに組み立てます。
故障修理としてはここまでですが・・
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各部はまだ汚れたままです。この加湿筒も、
ひと晩クエン酸溶液に浸けておきました。
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カルキが溶け出しているので、
ブラシと洗剤で一挙に落とします。
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カルキ・カビ・水垢が合体して
一面に褐色の膜を作っています。
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クレンザーを使えば楽に汚れを落とせますが、
細かな傷が付き次の汚れが付きやすくなります。
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真っ白な樹脂の色が戻りました。
とても清潔な印象です。
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加湿筒を組み付けます。ノズルの下部にも小さな
マグネットがあり、リードスイッチをON・OFFさせます。
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操作パネルの端が捲れていました。
瞬間接着剤で修復します。
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切れていた「パワフル」のLEDも正常に点灯します。
両隣のLEDと輝度や色味がほぼ同じです。
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本体外周部にはあちこち
傷+汚れが付いています。
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比較的浅い傷なので、樹脂用
コンパウンドで丁寧に擦り取ります。
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傷が消えるとこの通りクオリティが一段上がります。
年式が新しいので全体的に艶が保たれています。
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背面側を見ると、何かにぶつけたのか
赤い傷+汚れが付いています。
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こちらも樹脂用コンパウンドで
綺麗に消し去ることができました。
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全体の組み立てを終え、最終的な動作確認を
行います。操作パネルの問題も全て解決しました。
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ドライブ基板に半固定抵抗器がないため、出力調整に
よって超音波振動子の寿命を維持することができません。
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出力調整ができれば、最初は出力を絞り気味で使用し、超音波振動子が劣化
(振動特性が変化)してきたなら、出力を少し上げて限界まで使用することができます。
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