学校のコンピュータ室で利用されているPCの修理を依頼されました。電源が入らなくなって
います。富士通社が法人向けに販売しているモニター一体型PCで、コンパクトな筐体ゆえ
設置や取り回しに非常に優れています。予めお断りしますが、本編の修理作業は残念
ながら失敗に終わります。一体型PCの分解過程を参考になさるなどの目的でご覧下さい。
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2009年発売のFUJITSU製FMV-K5270、
インテルCore2DuoP8600(2.40GHz)搭載機です。
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電源スイッチを押すといったん起動するものの、
OSの読み込み段階で電源が落ちてしまいます。
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・本体分解作業 |
典型的な電源ユニットの不具合と思われます。
同様の故障を何度か修理したことがあります。 |
一体型のため筐体の構造が複雑で、
分解・組立は簡単ではありません。
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ESPRIMO・Kシリーズは、数世代(当時)に
わたりほぼ同様の構造に設計されています。
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順序良く外側カバーを外していきます。
サイドに続きトップカバーを外します。
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サイドカバーが外れていれば、トップ
カバーは横にスライドさせるだけです。
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トップカバーの中に背面カバーの固定
ネジが隠れています。2本とも緩めます。
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背面カバーは、まず上の方に
少し引き上げておいてから・・
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後方に取り外します。ここまではユーザが
メンテナンス時にアクセスできる範囲内です。
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問題のある電源ユニットは、この金属製
カバーの下に取り付けられています。
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ここから先に分解を進めた場合、製造メーカーは
有償・無償いずれの補償もしないと思われます。
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・電源ユニットの取り出し |
発売から10年近く経過するので、有償によるメーカー修理も終了していると
思います。補修部品の在庫がなければ修理のしようがありません。しかし、
学校は簡単に設備更新の予算措置もできず、何とかするしかありません。
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この1台を修理できないと、生徒1名が授業でPCを使用
できない事態を生みます。金属製カバーを取り外します。
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このネジを最後に計5本の
ネジで固定されていました。
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金属製カバー側面にあるD-SUB9ピンと
25ピンコネクタへのFケーブル配線です。
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シリアル・パラレルコネクタへの
Fケーブル配線を抜いておきます。
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金属製カバーが外れると、中から
電源ユニットやマザーボードが現れます。
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電源ユニットを取り外すため、
接続ケーブルを全て抜きます。
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液晶パネルのバックライトへの電源供給ラインで
しょう。もう1枚のカバーの中で接続されています。
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先に取り外した金属製カバーと
巧妙に嵌合構造になっています。
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このケーブルが外れると電源ユニットは
完全に解放状態になるはずですが・・、
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電源ユニット本体は、本体のボトムカバーの中でも
固定されています。カバーを外さねばなりません。
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ボトムカバー左右のネジを緩めますが、
これだけではカバーは外れません。
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先に回転台を外しておく必要が
あります。4本のネジを緩めます。
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回転台が外れると、電源ユニットに
付属するクーリングファンが見えます。
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ボトムカバーは、中心部の1本を含め
計5本のネジで固定されています。
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さらに、前面スイッチパネルの
固定ネジも緩める必要があります。
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ボトムカバーが外れ、これで完全に
電源ユニットにアクセス可能になります。
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電源ユニットの固定ネジを緩めます(ボトムカバーが
まだ付いているのは写真が前後したためです)。
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電源コードソケット・電源スイッチ周りの
樹脂製グリルパーツを外します。
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固定ネジが電源ユニット筐体内部に届いて、
筐体を分解できない可能性があります。
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電源ユニットと干渉するカバー類、
および固定ネジを全て取り除きました。
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電源ユニットをゆっくり移動させて
見ます。特に障害はないようです。
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・本体内部のメンテナンス |
せっかくPC内部が露出しているので、奥深く
入り込んでいる埃等を掃除機で取り除きます。
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クーリングファンの本体内部側(CPU放熱
器側)に大量の綿埃が集積しています。
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冷却効果が著しく低下していたはずです。
こちらも掃除機を使って完全に取り除きます。
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念のため放熱器やCPU
周辺の状態も点検します。
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CPU放熱器の固定金具を外します。省スペースの
ためか放熱器用のクーリングファンは略されています。
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放熱器を外します。プロセッサ
Core2DuoP8600が見えます。
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気流方向に合わせて放熱フィンが配置されて
います。ほとんど埃が付着しておらず綺麗です。
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プロセッサもいったん
取り外して見ます。
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プロセッサ・ソケットの双方にエアを吹き付けて
埃を飛ばします。ピンの状態を確認します。
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放熱器とプロセッサの接触面に
熱伝導グリスを補っておきます。
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・電源ユニットの点検・修理 |
電源関係の故障はほとんど電解コンデンサの劣化に起因
します。先にマザーボード上のコンデンサを点検します。
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劣化したコンデンサは頂上部が膨張したり変色
したりします。が、特に異常は見当たりません。
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ACコードを接続し電源を入れ、マザー
ボードに供給される+5Vを確認します。
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+2Vを下回りかつ安定しません。しばらくすると
完全に0Vになりました。明らかに異常です。
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PS-ON端子をショートさせることで電源ユニット単体でも動作確認を
行いました。結果は同じで、しばらくすると電源が落ちてしまいます。
この時点で、電源ユニット側に問題があることが明らかです。
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電源ユニットはDELTA社(台湾)製、148WのATXです。
形状からして富士通製一体型PC専用かと思われます。
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内部の回路(おそらく電解コンデンサ)に
問題があることは明らかです。分解します。
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クーリングファンの取り付け方がユニークです。
1台でCPUと電源ユニット両方を冷却しています。
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外側カバー、絶縁シートの下に高圧発生・
整流側の基板が組み込まれています。
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基板は外側カバーから独立して取り付け
られています。基板の固定ネジを緩めます。
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高圧側基板を持ち上げると、反対側に分圧側の基板が
見えます。両者は4本のコードで接続されています。
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外側カバーは、クーリングファンの
取り付けブラケットを兼ねています。
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分圧側基板の裏側を見ています。多くの
チップパーツが表面実装されています。
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2枚の基板を取り外しました。両者は+B(赤)、-B(白)、
PS(緑)、SB(青)の4本のコードで互いに接続されています。
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電解コンデンサを確認します。マザーボード
同様、見たところ特に異常がありません。
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見た目ではなく電気的特性に劣化があるかも
知れません。取り外す前に番号を記入します。
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大容量(1500μF)のコンデンサが使用されて
います。取り外して1本ずつ点検します。
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導通を調べます。チャージが進むにつれて
抵抗が大きくなります。問題ありません。
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回路計の容量測定モードでも確認します。
1500μFに対して1508μFと正常です。
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3本が1500μFに対して1800μF近くを示しましたが、
容量抜けなどの明らかな劣化はありませんでした。
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不具合の原因になりがちな電解コンデンサ
なので、念のため全て新品に交換します。
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背の高さと太さは相反する関係にあります。
同サイズのパーツがないと実装に苦労します。
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元のコンデンサを取り外した後、半田クリーナを
使ってランド周りを綺麗にしておきます。
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電源回路には容量の大きい(80~100W)
半田ごてを使用し、半田を十分に流します。
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電解コンデンサの交換で不具合が解決したか確認
します。クリップを使ってAC100Vを仮接続します。
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動作確認の全体風景です。400V以上の高電圧が
発生しているので短絡や感電に十分留意します。
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コネクタのPS-ON端子(緑)を
短絡し電源ユニットを起動します。
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起動してしばらくクーリングファンが回り
ますが、間もなく停止してしまいます。
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+5Vの出力を確認すると、マザーボードに接続して確認した時と同様に電圧が異常に
低く安定しません。間もなく0Vに戻ってしまいます。電解コンデンサが原因ではなかった
ようです。劣化はなかったと言えます。残念ながら交換作業は徒労だったということです。
このPCは「直らなかった」では済みません。電解コンデンサ以外で不具合の原因を探し
当てるか、何か別の解決方法を考えなければなりません。その後の顛末は続編にて。
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