電解コンデンサの交換では復旧しなかった電源ユニット(DELTA製DPS-148BB A)です。
修理作業は振り出しに戻り、不具合の原因を最初から探し直さねばなりません。PS端子を
短絡すると短時間だけ電圧が出ること、SB(スタンバイ)出力は正常に出ていることなど、
複数の不可解な症状に攻略を妨げられています。特殊な一体型PC専用のユニットなのか、
ネットショップ・オークション、頼みのAliexpressにも同等品・類似品は見当たりません。
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再度この状態に戻して原因を探ります。裏面に表面実装
されているチップパーツが多く、解析は極めて困難です。
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比較的近いものとして入手できた回路図です。チップ
パーツによる細かい制御系は含まれていません。
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・代替電源ユニットの用意 |
解析中に代替の電解コンデンサから火花が飛び、SB電圧も
停止してしまいました。元の回路は放棄せざるを得ません。
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廃棄されたPCを分解し取り出された電源ユニットを
手に入れました。点検したところ正常に動作します。
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出力240Wで十分です。元のユニットが一体型PC用で
比較的小型のため、大容量のものは必要ありません。
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これを移植利用することを考えます。ただし、K5270の電源
ユニットケース(写真)内に完全に収めなければばなりません。
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代替用の電源ユニットを分解します。外形から
想像するに、何とか収まりそうに見えますが・・
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内部の回路基板が見えてきました。
240Wにしてはコンパクトな設計です。
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AC電源のソケットは元のユニットと同サイズのもの
です。110V・220Vの切り替えスイッチがあります。
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固定ネジを全て緩め、ACソケットからの
配線を切断して基板を取り出します。
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元の回路基板は2枚組になっていました。それに比べて
かなりコンパクトです。十分収めることが出来そうです。
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実際に元のケースに収めて見ます。
幅方向は十分余裕があります。
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奥行き方向は、この一部飛び出した
基板が、ケースから完全にはみ出ます。
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このように、飛び出しているのは基板のごく
一部で、他の部分はケース内に収まります。
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高さ方向にも余裕があり、部品や半田面が
ケースに接触することなく収納できます。
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110V・220Vの切り替えスイッチは、短絡状態で
110V対応なので、基板側で短絡させて省略します。
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AC100Vソケットは再利用する
ので、予め取り外しておきます。
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・代替電源ユニットの移植 |
代替電源ユニットの電源取り出しコードです。各種電源(+5V、±12V、
+3.3V・・)が1カ所からまとめて引き出されハーネスを構成しています。
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このハーネスはコネクタ規格も長さも異なるため
利用できません。半田を溶かして取り外します。
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元のハーネスを移植するため、コードの接続ランドは
クリーナを使い余分な半田を綺麗に取り除いておきます。
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代替電源ユニットからハーネスが切り離され
ました。コードの色分けはほぼ共通です。
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K5270の元の電源ユニットの
電源取り出しコードです。
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この白(FAN-M)とピンク(FAN-SYS)の2本だけ、
代替電源ユニットには該当するコードがありません。
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元のハーネスは再利用するので、傷めない
ように丁寧に半田を溶かして取り外します。
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ハーネスの移植作業にかかります(白・ピンクを
除く)。コードの絡まりや位置関係に留意します。
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全てのコードを接続し終わりました。ハーネスの引き
回しを考え一部のコードは延長(継ぎ足し)しました。
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移植の上で大きな問題となるのが、
この基板の飛び出し部分です。
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飛び出し部分の根元の様子を確認します。
境界を跨ぐパーツはセラコン1個だけです。
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セラコンとランドによる接続を維持すれば、
飛び出し部分は切り離しても問題ありません。
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電力の供給は、1本は切断されたランド、
もう1本はビニルコードによる配線です。
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代替用の基板が2つに分割されました。
移植先での実装に目途が立って来ました。
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移植先、元の電源ユニットケースに
代替用基板を収め、按配を見ます。
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ハーネスの引き出し口が明らかに狭い
ため、ケースを加工して拡大します。
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金切り鋸で切り込みを入れます。ケースの
強度を確保するため、ほどほどにします。
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2方向から切り込みを入れて
間口を四角形に拡大しました。
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ケースの切り口でハーネス(ビニルコード)の
被覆を傷付け、短絡を引き起こす恐れがあります。
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別途太めのビニルコードの被覆を
加工し、保護カバーを作ります。
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被覆の一部を、カッターナイフで
軸方向に切り裂いておきます。
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切り口に被せることでハーネスの
被覆は損傷の心配がなくなります。
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代替用基板をスペーサを介して元のケースにしっかりネジ止めします。ケース
内壁表面と十分なクリアランスがあるので、接触の危険性はありません。
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切り離した基板と、電力供給ライン
(2本)とセラコンを配線・接続します。
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周りを囲むカバーを取り付けて見ます。
ケース内にまだ余裕があります。
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ここに切り離した基板が収まりそうです。
ACソケットとの接続も配線済みです。
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このスペース内でネジ止めは無理ですが、絶縁
保護材を含めて基板を押し込むことは可能です。
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・電源ユニット実装、動作確認 |
クーリングファンを取り付けて通電してみます。
ファンが回転し各電圧が正常に出力されます。
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ところで、白・ピンクのコードが放置されています。
BIOS起動時に「FANエラー」の表示が出ます。
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電源ユニット基板のパターンを調べると
このような回路を構成しています。
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ダイオードを介し電源ユニットの+12Vを引き出して白へ、
クーリングファンのパルス出力(青)をピンクへ接続します。
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元の電源ユニットケースに回路基板を収めた状態でPC(K5270)に
一度載せて見ます。ハーネスの取り回し具合を慎重に確認します。
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ハーネスを取り回し、コネクタを
各々の接続先に差し込みます。
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クーリングファンともに電源ケースのカバーを取り
付けます。ケース内での配線の干渉に留意します。
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電源投入後、BIOSが正常に起動しています。
「FANエラー」も表示されなくなりました。
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撮り残しておいた写真を頼りに、本体を
元通りに正しく組み上げていきます。
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あらためてOSの再インストールを
行います。USBから起動させています。
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無事にセットアップが終了しました。メーカーの設計によりマッチングのとられた
電源ユニットではないため、長期間にわたり安定して動作するか不安が残ります。
そのため現在、工房内でランニングテスト中です。電源のON・OFF、24時間
程度の連続稼働、その後の発熱状態などを確認した上で学校へ納品します。
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