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大陸から寒波が南下してきて厳しい寒さが続いています。その最中、工房に設備されているビルトイン(天井埋め込み型)マルチエアコンが故障しました。
実は今回で3度目の故障で、最初は室内機から大量の水漏れ、次は室外機内部でリークがあり漏電ブレーカーが飛ぶ、いずれもメーカーから出張修理に来てもらいましたが、原因不明かつ部品の供給が終了しているとの理由で、何も修理せずお金だけ取って帰って行きました。
水漏れの原因は排水ポンプの取り付けブラケットが、樹脂の経年劣化により破損し排水ポンプが脱落したためで、取り付けネジの長さを変えて自分で修理しました。
漏電は室外機に組み込まれているリアクタのフレームに錆が
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広がったためで、絶縁体を挟み固定し直して解決しました。
室内機(CS-BMG40RC2)は2階と3階に設置され、2階のベランダに室外機(CU-MG67R2)が置かれています。冷房能力6.8kwの室外機に4.0kwの室内機が2台接続されています。いずれも20年以上前のNational社(現Panasonic社)製品です。
同クラスの現行機種で機器更新の見積もりを取り寄せてみると、工事費用・処分費用を含めて35~36万円、機材だけ購入して自力で取り付けると25万円弱になります。
工房の経営状態からしてとても賄える範囲ではありません。かくなる上は、「Repair」を営業品目にする守谷工房の技術力を発揮して、故障原因の究明と修理に挑みます。 |
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リモコンでスイッチを入れても室外機は全く動き出しません。
しばらくすると室内機の3個のLEDが同時に点滅し始めます。
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おそらく、制御部品や制御基板が集中している
室外機側に故障原因があると思われますが・・
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トラブルシューティングのヒントを得ようとネット検索してところ、
素晴らしいWEBサイトを見つけました。アスナロネットです。
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「室内機の全てのLED点滅で停止する」はDCピークの
エラー! 基板とパワーTRの交換が必要とあります。
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固定ネジを緩めて室外機の上蓋を開けます。巨大なコンデンサや回路基板が
見えます。回路図もなく基板やパワートランジスタに手を出すのは気が引けます。
接続されている電源は単相AC200Vです。作業前にブレーカーを切っておきます。
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室外機の制御基板です。エアコンの制御機能が凝集し何本もの
ケーブルが接続されています。下側は電源の受配電端子です。
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制御基板を取り出しました。中央にプロセッサがありほとんど
PCの基板のようです。デジタル系に問題があると厄介です。
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取り外す前にケーブル(コネクタ)の接続関係を
写真に残しておきます。基板左上部分です。 |
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基板右上部分。プロセッサはD78328、NEC製
16/8bitの1チップマイクロコントローラです。
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基板左下部分です。黄・青・赤と並ぶコネクタからは
インバーターのパワーTRを駆動する制御信号が出ます。
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基板右下部分です。8セグメントの数字LEDが1個取り
付けられています。室外機の動作状況をモニターします。
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制御基板を裏側から点検します。基板表面に保護剤のコーティングがなく、筐体内とは言え長年寒暑に晒されてきたわけです。
半田の腐食やクラックの発生が十分考えられます。電子部品やケーブルの接続不良であれば、比較的簡単に復旧させることができるでしょう。
しかし、意外と半田の状態は良好で明らかな接続・接触不良は見当たりません。それでもアスナロネットのアドバイスに従い、
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コンデンサなど背の高い部品、力のかかるソケットは再半田付けしておきます。
制御基板を元に戻しケーブルを全て接続して再度電源をれてみます。結果は・・変化なしです。接続不良個所が他に残っているのか、電子部品の破損があるのか、制御基板以外に故障原因があるのか・・、泥の中へ潜り込んで行きます。
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重要なことを見逃していました。実は同型のマルチエアコンが
1階にも設備されています。こちらは正常に機能しています。
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基板のように完全に取り出すことのできる部分は、同型機
同士で入れ替えてみれば不良の有無がすぐに分かります。
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最初に制御基板を交換してみました。が、状況は変わり
ません。つまり、制御基板に問題はないということです。
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次に疑われるのはインバーターのパワーTR基板です。
250Vに達する高圧回路の配線を先に確認します。
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太めの赤・青・黄ケーブルで周波数可変の3相
交流がコンプレッサのモータに送り込まれます。
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パワートランジスタモジュールの隣に整流用ダイオード
ブリッジが2個取り付けられています。配線を記録します。
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室外機から放熱器ごとパワーTR基板を取り外します。言うまでもなく予め
ブレーカーを切り、大容量コンデンサが十分に放電するのを待って作業します。
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取り外したパワーTR基板です。大きな放熱器上にパワーTR
モジュールと整流用ダイオードブリッジが固定されています。
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放熱器の表側です。室外機ファンの送風が
フィン表面にも当たり、パワーTRを冷却します。
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パワーTR基板を入れ替えると・・・エアコンは正常に動作します。
これで、パワーTR基板に問題があることが判明しました。
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動作しない側のパワーTR基板に戻り、先に整流用
ダイオードブリッジに問題がないか点検します。
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内蔵されている4個のダイオード、および
相互の接続いずれにも問題ありません。
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さらに故障個所が絞られて、パワーTR基板すなわち「パワーTR
モジュール」あるいは「ドライブ基板」のどちらかに問題があります。
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パワーTRモジュールとドライブ基板は、17本の
端子が半田付けされて互いに接続されています。
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17本の端子はパワーTRモジュールから
直接外部に取り出されています。
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ドライブ基板を取り外すため、17カ所の半田を除去します。
呼び半田を補いながら固着・変質した半田を溶かします。
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半田吸取器を使用して、スルーホールの
内側まで半田を完全に取り除きます。
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スルーホール内で端子の周囲に隙間が見えれば、
基板の取り外しがほぼ可能な状態になっています。
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ランドや配線パターンを破損しないよう
ドライブ基板を丁寧に取り外します。
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半田付けの状態を目視にて点検し、制御基板と同様に
コンデンサやコネクタを中心に再度半田付けし直します。
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フォトカプラーを使った単純なアイソレート回路
なので、故障の可能性は低いと思われます。
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いったんドライブ基板を取り付けパワーTR基板を
元に戻しますが、まだエアコンは動作しません。
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100%と断言できないものの、ドライブ基板
(G67RU681)はおそらく正常でしょう。
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パワーTRモジュール(PM30CEF060-33)が
破損している可能性が高く、交換が必要です。
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国内には存在しないG67RU681+PM30CEF060の
同等部品が、こちらのサイトに$63で在庫があります。
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$63の同等部品はUSED(中古)のため、寿命に不安が
あります。他方、PM30CEF060の単体は$28です。
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パワーTRモジュール(PM30CEF060)の新品を
発注し、交換に備えて元のモジュールを取り外します。
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熱伝導グリスを介し2本のネジによって
放熱器に強力に固定されていました。
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インバーターの搭載により劇的な効率化を果たしたエアコンですが、高圧の三相交流を
高速スイッチングするパワーTRのお蔭です。室外機内の厳しい環境下で20年以上も
働き続けたのですから、故障したとは言え十分に耐久性に富んでいると考えるべきです。
それ以外の部分は全て機能しているのですから、メーカーは保証期間(無償保証期間
ではなく補修部品の保管期間や修理対応期間)を20年間以上に拡大するべきです。
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まだ修理が完了したわけではありません。中国本土へ注文したパワーTR
モジュールが届いてから、1階のマルチエアコンを復活させることにします。
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