CANON製フォトプリンタSELPHY CP400の印刷に問題があります。
昇華型熱転写方式を採用し、写真DPEと同等の光沢品質で手軽に印刷
することができます。何より圧倒的に小型かつ軽量で、デジタルカメラを
直結し操作も簡単です。不具合の原因究明にあれこれ試行錯誤しました。
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ご依頼者は製品箱を大切に保管されています。
説明書や付属品も一緒に預けて下さいました。
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必要な物は全て揃っています。加えて
用紙やインクカセットも予備があります。
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SELPHYシリーズの中でCP400は2004年
発売、最新型は2016年発売のCP1200です。
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専用の印刷用紙をこの専用
カセットに装填して使用します。
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使用時は手前のカバーを開けた
状態で、本体前面に挿入します。
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CANON独自規格のプロトコルに対応した
デジタルカメラをUSBケーブルで直結します。
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上手く設計されており、カメラで画像を
見ながら印刷を行うことができます。
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取りあえず写真を1枚
テスト印刷してみると・・
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用紙が前後に往復しながら、イエロー、
マゼンタ・・の順に印刷が進んでいます。
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各色とも用紙の端3分の1
くらいしか印刷されません。
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用紙の3分の1に限れば、昇華型熱転写方式らしい光沢のある美しい印刷です。しかし、残り
3分の2は何が原因で空白なのでしょうか。突き止めるまで用紙とインクの無駄が続きます。
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本体側面からインクカセットが装填
されています。取り出してみます。
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昇華型インクが塗布されたフィルムのロールが内蔵
されています。新しいカセットでも結果は同様です。
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サーマルヘッドをクリーニングするための器具です。
使用法をご存じなかったようで、試してみる価値ありです。
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インクカセットと同じように挿入し、数回
出し入れします・・、結果は変わりません。
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簡単な手入れでは解決しないことが分かりました。
本体内部に原因を探るため分解作業に入ります。
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上側の外カバーが外れてきました。プリンタの
機械的メカニズムが大半を占めています。
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非常にコンパクトな設計と実装です。凹凸を出さない弁当箱のような
外装を実現するため、全ての部品が美しい収まりを見せています。
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用紙カセットが装填される全面の開口部
です。特に損傷している様子はありません。
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インクカセットが装填される側面の開口部
です。こちらも特に問題は見当たりません。
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背面側にサーマルヘッド冷却用のファンがあり、
底面のスリットから用紙が後方に排出されます。
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外観的な損傷を発見できない(ほとんど)と、電子
回路やサーマルヘッドの点検に入ることになります。
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回路基板の半田不良やクラックが原因であれば
簡単なのですが、完璧な実装で誠に綺麗です。
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基板上のコネクタやフィルム
配線を全て抜き取ります。
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基板の裏側には、サーマルヘッドへのフィルム配線がコネクタを介して
接続されています。基板の実装密度が高いため、個々の電子部品の
不良は対応できません。問題があれば基板ごと交換することになります。
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部分的に印刷されないということは、
サーマルヘッドの不良も考えられます。
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底側のカバーも取り外しました。
印刷メカニズムを詳しく調べます。
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両端にジュラコン部品の付いた金属シャフトが、
サーマルヘッドアセンブリを押さえつけています。
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端のロックを解除すると
シャフト全体が外れます。
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シャフトが外れるとサーマルヘッドの保持が解放され、バネにより上に跳ね上がってきます。
実はこの写真の中に不具合の原因が捉えられています(この時点では気付いていません)。
途中経過を飛ばし結論を先に知りたい方は写真をクリックして下さい。
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保持部をさらに跳ね上げると、サーマル
ヘッドの印字面を確認することができます。
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外見的には問題はありません。しかし、
目視で確認できるわけではありません。
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サーマルヘッドの取り付け構造に、
何か不具合がある可能性もあります。
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放熱器とともにサーマルヘッドを取り外します。
高温による劣化の可能性も考えられます。
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電子部品の劣化同様に、サーマルヘッドの
劣化もほとんど調べようがありません。
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できることと言えば、フィルム配線表面の傷の
確認や、端子部分の接触の改善程度です。
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あるいは保持金具上の六角ネジを回して、サーマル
ヘッドと用紙のクリアランスを調整するぐらいです。
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やはりこの程度の作業では修理どころか
原因究明にもなりません。やはり直りません。
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かくなる上はドナー機を用意するしかありません。幸いなことにAmzonで中古の同型機が、
送料込みで2000円以下です。この金額ならば修理費用としてご負担いただける範囲内です。
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回路基板、サーマルヘッドを移植し原因を特定するつもり
でした・・が、この中古機自体が既に故障しています。
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用紙カセットの装填センサーが動作しないようで、
「ペーパーがありません」とエラーが表示されます。
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ほぼ2昼夜にわたり修理事例を検索したあげく、何と「Youtube」に
同じシリーズCP510の修理事例(英語版動画)を見つけました。
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ジュランコン部品に生じているこのクラックが原因です。
途中経過を飛ばしてこられた方は写真をクリックすると元に戻れます。
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シャフトに切り欠きがあるにもかかわらず、
簡単に回ってしまうことを軽視していました。
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このジュラコン部品はシャフトを空回りしては
いけません。切り欠きによりロックされる構造です。
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タイラップのような無骨な補修手段は
用いません。ステンレス線を使います。
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ジュラコンの円筒部分にステン
レス線を2周ほど巻き付けます。
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ステンレス線の端を強めに
撚り合わせ、割れを閉じます。
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シャフトに打ち込み直します。
かなり強く固定されています。
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左端のギヤの回転により突起部分が押し下げられ、サーマル
ヘッド全体を、インクフィルムを挟んで均一に押さえ付けます。
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右端の押さえ付けが効いていなかったため、
大部分でインクフィルムが密着不足だったのです。
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全面にわたり見事に印刷が復活しました。
シアン・ブラックまで順調に進行します。
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回路基板もサーマルヘッドも全く正常、
1個のジュラコン部品破損が原因でした。
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本当に手軽に高品質の写真プリントを得ることができます。用紙・インク
いずれも印刷コストが嵩みますが、需要が衰えない理由が分かります。
Amazonの不良中古品は、送料も含めて即刻返品です。
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