
隣町常総市のお客様が、カセットプレーヤーを2台持参され工房を訪ねて
おいでになりました。その1台は昭和のレガシー、乗用車のデザインも
クリスタルカット全盛の当時を彷彿させる、豪華ダブルラジカセでした。
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40年ほど経過しているのでしょうか、決して粗末に扱われてきたわけ
ではなくとも、年月の長さがおびただしい汚損をもたらしています。
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樹脂成型された本体の隅という隅に、ことごとく埃が入り込んでいます。しかし、極端に
汚れてはいますが傷付いているわけではありません。工房にとっては綺麗な1台です。
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フェアメイト製RD-W33型です。
何とネット検索にヒットしません。
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私の記憶では、かつて三洋電機製で同じデザインの
製品がありました。どちらかが他方のOEMでしょうか。
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比較的しっかりした10cmスピーカーが組み込まれて
います。四角形の部品はツイーターのグリルです。
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この3個並んだボリュームのツマミを今でも
覚えています。回路基板が共通なのでしょう。
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簡単に動作テストを行います。ラジオは
各バンドとも正常に受信できます。
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カセットプレーヤ部を確認します。
PLAYボタンを押しても回転しません。
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当然、カセットテープを入れて再生しようとしても、巻き取り側・送り出し側いずれのリールも回転せず、
テープが送られていません。何か深刻な故障・・というよりも、この汚れでは動作しそうに思えません。
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故障が発見されればもちろん修理しますが、
とにかく汚れを落とすこと、を目標に作業します。
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背面側のバッテリーボックスカバーを外し
本体を組み合わせているネジを緩めます。
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このような長ネジを用いて、背面側から前面側
カバーを固定する方式が良く採用されていました。
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このツマミも同じ部品だったように思います。
隙間にドライバーの先を入れて引き抜きます。
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ツマミの入る溝の内側も埃まみれです。
しかし、傷はないので綺麗にできます。
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前後本体カバーの組み付けは、当時はまだ
さほど複雑ではありません。素直に外れてきます。
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内部のカセットテープ駆動メカニズム、その背後に回路基板が
組み込まれています。おびただしい埃が入り込んでいます。
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指で触れると積もり重なった埃が寄ってきます。
埃の中にザラザラした砂・土が混ざっています。
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磁気ヘッドの周囲も埃だらけです。
操作ボタンの隙間から侵入したようです。
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作業中に脱落する埃がメカニズム内に入り込む
心配があります。ここでいったん全体を清掃します。
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ぱらぱら埃が落ちてこない程度に清掃しました。
構造がよく読み取れる・・ような気がします。
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カセットテープ駆動メカニズムは、3本の
ネジで回路基板の手前に固定されています。
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駆動メカ~回路基板間は、比較的単純な配線
です。が、確認しながら丁寧に引き離します。
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モーター駆動用電力、磁気ヘッド信号、受信
周波数同調表示LEDに配線が分かれます。
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ダブルカセットとはいえ、駆動モーターは
1個です。製品価格を低く抑える仕様です。
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駆動メカが邪魔をして手が届かなかった
本体奥の部分をあらためて清掃します。
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基板上のディスクリート部品も
一つ一つ丁寧に埃を取り除きます。
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取り出されたカセットテープ駆動メカニズムを、あらためて観察します。録音機能を備えて
いるのはB機(右側)のみです。操作ボタンが1つ多く、録再ヘッドと消去ヘッドが見えます。
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A機(左側)の磁気ヘッド周りです。完全に埃が除去され
綺麗なものです。特に故障個所は見当たりません。
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B機(右側)の磁気ヘッド周りです。
こちらも外見的に問題はありません。
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裏側を確認します。別シャシーにより1段高くモーターが取り付けられ、その隙間に駆動
ベルトが渡されています。1台のモーターで駆動するため長いベルトが使われています。
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ゴム製ベルトは経年劣化を避けられません。
ピンセットでつまむと、伸びて緩んでいます。
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年数を経過したベルトは交換が必須です。しかし、ベルト
数本を入手するだけで送料・交通費、時間がかかります。
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経年変化で伸びてはいますが、破断するような材質
劣化には至っていません。ケミカルで養生します。
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簡易的な修理として、伸びた
分の長さを詰めることにします。
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全体の1割弱程度の長さを切り詰めます。
接着強度を考慮して斜めに切断します。
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瞬間接着剤はゴムに対して高い接着性が
あります。切断面にのみ少量使用します。
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ピンセットで軽く押さえて
接着面の固化を待ちます。
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接着部分では可撓性が低下するため、音声再生に影響が
出る可能性があります。その際はベルトを交換します。
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B機(右側)のキャプスタン駆動フライホイールを手で
回すと、シュッシュッと摺動音が聞こえます。点検します。
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キャプスタンの根元に溝が切ってあり、そこに樹脂製
ワッシャを嵌め込んで抜け落ちないようにしています。
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ワッシャを持ち上げて外します。これで
キャプスタンは裏側へ抜けていくはずです。
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裏側からフライホイールを引き抜きます。2段のプーリの
片側に巻き取りリール駆動用のベルトがかけられています。
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キャプスタンシャフトとともにフライホイールが抜けました。
シャフトの中ほどにワッシャ固定用の溝が見えます。
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PAUSE機構のレバーです。可動域が残るよう、
スプリングを介してピンで固定されています。
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スプリングを介してレバーを固定するはずのピン(メス型)が、簡単に
抜けてきます。下にあるオス型ピンと篏合しているはずですが・・
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何か衝撃が加わった際に抜けたのだと思います。
強く押してあらためて嵌め込んでおきます。
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キャプスタンが抜けている間に、軸穴に潤滑剤を
入れます。軸穴内の汚れを落とす意味があります。
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以上の作業でおそらく動作不良は解消していると
思います。テストの前に外装をリフレッシュします。
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まず電気掃除機の先にブラシを取り
付けて、全体を徹底的に吸引します。
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前面側カバーにはスピーカーが取り付け
られています。内側も丁寧に清掃します。
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カセットテープ挿入部のカバーを開けて
内部の埃を可能な限り吸い出します。
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カセットテープの操作ボタンです。樹脂
クロムメッキ表面が汚れ切っています。
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研磨剤を使用すると新品
当時の光沢が蘇ります。
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外装表面を拭き上げます。先に中性洗剤で水溶
性の汚れを落とし、次に研磨剤を少量使用します。
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汚れてはいても傷んではいません。
丁寧に磨き上げると光沢が復活します。
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側面の平坦な外装面も、同様の
手順で汚れを落とします。
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スピーカーグリルのクロムメッキ、ステンレス
部品も研磨により光沢を取り戻します。
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モードを切り替えるスイッチです。
ツマミを外すとやはり埃まみれです。
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電気掃除機で吸引しながら
刷毛を使って埃を掻き出します。
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仮組みの状態でカセットテープを
セットし再生テストを行います。
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何の問題もなかったかのように、A機・B機とも
音声が再生されます。ベルトの影響もありません。
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清掃の終了した前後カバーを組み付けます。
操作ボタンをくぐらせる際にコツが要ります。
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光沢の蘇った本体と操作ボタンが
往時の存在感を醸し出します。
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背面側カバーにまだ汚れが残っています。
ドライバーの先を使い奥まった部分にも手を入れます。
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樹脂表面を中性洗剤で
丁寧に拭き上げます。
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ロッドアンテナのクロムメッキも
酸化が進んでくすんでいます。
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金属用の研磨剤で磨き上げました。
美しい光沢を放っています。
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音量・音質調整用のツマミです。
右側がBefore、左側がAfter。
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3連ツマミが揃って光沢を放ちます。
40年も前に見た光景です。
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精悍なルックスが復活しました。外観だけではあり
ません、ラジカセとしての機能も全て元通りです。
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確か、アニメのロボットのような無用にごつごつしたデザインに変化して行ったのは、
この後だったと思います。機能性を基本に置いた無駄のないデザインに徹しています。
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CDが普及する以前の時代、そこそこの音質とまとまりの良い機能を
備え、低価格で電気屋の店頭を飾った「ラジカセ」、良き時代でした。
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