井出電機製作所様から依頼のあった超音波洗浄器、短絡によるパターン焼損、ヒューズ切れ、
劣化したゴムパッキンなど修理を終え勇んで納品に出向きました。ところが、担当部署にて
職人の方に点検いただいたところ、「振動がほとんど出ていない」、「前面パネルスイッチで
タイマーの操作ができない」の2点、ダメ出しを受けてしまいました。本体をいくら綺麗にして
みたところで、機能が回復していないのでは修理したことにはなりません。やり直しです。
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回路基板側は既に点検しているので
パネルのスイッチを疑ってみます。
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前面操作パネルのプラカバーを剥がし
内側の留めネジ4本を緩めます。
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固定用カバーが外れると
スイッチ基板が現れます。
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3桁分の8セグメント数字表示LEDと
3個のタクトスイッチが実装されています。
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またしてもタクトスイッチの不良です。最下部のタイマーセット用は、完全に接触が
失われています。パーツが入手できれば交換、あるいはケミカルで接点を回復させます。
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最初の修理で手を入れなかった超音波発生
部分です。今回は内側ケースを開けて見ます。
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驚きました! 樹脂製内側ケースの
内部がひどく焦げ付いています。
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ケースの焼け焦げ部分に丁度接している
超音波振動子のコード取り出し部です。
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コードを覆っている絶縁固定用樹脂も焦げて
おり、材質が劣化してぼろぼろ剥がれてきます。
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樹脂を除去するにつれてコード接続
部分の状況が分かってきました。
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小さく発火が続いたようで、固定用の樹脂、コードの
被覆、コードの芯線まで焼損が広がっています。
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原因が分かりました。最初は超音波振動の一部によって芯線の劣化が進んだのでしょう。芯線の
許容電流が低下するに従って発熱を伴い、コード自身および周囲を焼損して行ったようです。内側
ケースも焼損し(クラックが生じたのはこのためです)、そこからパッキンの劣化によって侵入した
洗浄水が回路基板上に落下、高圧部の短絡を招いたと考えられます。内側ケースにはドレーン
口があるものの、用をなさなかったようです。超音波振動子の耐久性、および製品への実装
方法や安全対策に疑問を感じます。最悪の場合、発火事故や火災を引き起こしかねません。
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煤を取り除くと半田盛りが出てきました。ここに
切れたコードが半田付けされていたようです。
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セラミックス製超音波振動子の表面に蒸着された
金属が電極です。熱を加えると剥がれてきます。
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難易度の高い半田付けです。
コードを先端処理します。
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フラックスを少量使用して
一挙に半田固定します。
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半田に「濡れ」が生じて振動子の
電極に何とか接合できたようです。
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コードの周囲を瞬間接着剤で仮固定し
さらにエポキシ接着剤で補強します。
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エポキシ接着剤の耐熱性は高くありませんが
この部分は正常ならば本来発熱などしません。
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操作パネルスイッチ修理の際に、プラ
カバーの塗装が剥がれてしまいました。
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裏側から塗装されており、発色を良く
するために白で重ね塗りされています。
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プラモデル用の塗料の中でできる
だけ近い色を探してきました。
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塗装が欠損している部分に
裏側から塗料を入れていきます。
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文字は最下層(プラカバーの裏表面)に刻印
されているので補修の必要はありません。
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色合いが完全には一致しませんが
まあまあの出来具合でしょうか。
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洗浄液(水)を入れてあらためて動作確認を行ったところ、振動音らしき音がほとんど聞こえ
なくました。超音波ですからそもそも音が聞こえるわけはなく、これまではコードの焼損箇所が
断続することで、可聴域周波数の振動音が聞こえていたに過ぎません。汚れの付いた部品などを
入れてみると、表面から洗浄液中に汚れが拡散していくことが確認できます。ただし、振動子や
発振回路の経年劣化により、出力(洗浄能力)は当初の性能通りではないかも知れません。
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