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超音波洗浄器修理その2(2016.4.3)

井出電機製作所様から依頼のあった超音波洗浄器、短絡によるパターン焼損、ヒューズ切れ、
劣化したゴムパッキンなど修理を終え勇んで納品に出向きました。ところが、担当部署にて
職人の方に点検いただいたところ、「振動がほとんど出ていない」、「前面パネルスイッチで
タイマーの操作ができない」の2点、ダメ出しを受けてしまいました。本体をいくら綺麗にして
みたところで、機能が回復していないのでは修理したことにはなりません。やり直しです。

 

回路基板側は既に点検しているので
パネルのスイッチを疑ってみます。
 


前面操作パネルのプラカバーを剥がし
内側の留めネジ4本を緩めます。
 

固定用カバーが外れると
スイッチ基板が現れます。
 

3桁分の8セグメント数字表示LEDと
3個のタクトスイッチが実装されています。
 

またしてもタクトスイッチの不良です。最下部のタイマーセット用は、完全に接触が
失われています。パーツが入手できれば交換、あるいはケミカルで接点を回復させます。
 


最初の修理で手を入れなかった超音波発生
部分です。今回は内側ケースを開けて見ます。
 

驚きました! 樹脂製内側ケースの
内部がひどく焦げ付いています。
 

ケースの焼け焦げ部分に丁度接している
超音波振動子のコード取り出し部です。
 


コードを覆っている絶縁固定用樹脂も焦げて
おり、材質が劣化してぼろぼろ剥がれてきます。
 

樹脂を除去するにつれてコード接続
部分の状況が分かってきました。
 


小さく発火が続いたようで、固定用の樹脂、コードの
被覆、コードの芯線まで焼損が広がっています。
 

原因が分かりました。最初は超音波振動の一部によって芯線の劣化が進んだのでしょう。芯線の
許容電流が低下するに従って発熱を伴い、コード自身および周囲を焼損して行ったようです。内側
ケースも焼損し(クラックが生じたのはこのためです)、そこからパッキンの劣化によって侵入した
洗浄水が回路基板上に落下、高圧部の短絡を招いたと考えられます。内側ケースにはドレーン
口があるものの、用をなさなかったようです。超音波振動子の耐久性、および製品への実装
方法や安全対策に疑問を感じます。最悪の場合、発火事故や火災を引き起こしかねません。
 


煤を取り除くと半田盛りが出てきました。ここに
切れたコードが半田付けされていたようです。
 

セラミックス製超音波振動子の表面に蒸着された
金属が電極です。熱を加えると剥がれてきます。
 

難易度の高い半田付けです。
コードを先端処理します。
 

フラックスを少量使用して
一挙に半田固定します。
 

半田に「濡れ」が生じて振動子の
電極に何とか接合できたようです。
 

コードの周囲を瞬間接着剤で仮固定し
さらにエポキシ接着剤で補強します。
 

エポキシ接着剤の耐熱性は高くありませんが
この部分は正常ならば本来発熱などしません。
 

操作パネルスイッチ修理の際に、プラ
カバーの塗装が剥がれてしまいました。
 

裏側から塗装されており、発色を良く
するために白で重ね塗りされています。
 

プラモデル用の塗料の中でできる
だけ近い色を探してきました。
 

塗装が欠損している部分に
裏側から塗料を入れていきます。
 

文字は最下層(プラカバーの裏表面)に刻印
されているので補修の必要はありません。
 
 
色合いが完全には一致しませんが
まあまあの出来具合でしょうか。
 

洗浄液(水)を入れてあらためて動作確認を行ったところ、振動音らしき音がほとんど聞こえ
なくました。超音波ですからそもそも音が聞こえるわけはなく、これまではコードの焼損箇所が
断続することで、可聴域周波数の振動音が聞こえていたに過ぎません。汚れの付いた部品などを
入れてみると、表面から洗浄液中に汚れが拡散していくことが確認できます。ただし、振動子や
発振回路の経年劣化により、出力(洗浄能力)は当初の性能通りではないかも知れません。

 
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