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衣類乾燥機の徹底清掃(2018.5.16)


衣類乾燥機の修理はあまり気が進みません。過去に何度も修理してきましたが、
とにかく手も衣服も周囲もひどく汚れるからです。原因は衣類から大量の埃が発生
するからであり、乾燥機の機能上どこかに集積せざるを得ません。当然フィルターが
備わっているものの、神経質なくらい徹底的に掃除をしないとすぐに目詰まりし、埃は
内部のあらゆる隙間に入り込んでいきます。分解作業は大量の綿埃との戦いです。

 

外観的にはさほど埃っぽくありません。
汚れもなくかつてなく綺麗な状態です。

 

ともあれ床に置いていては作業が
辛いので作業台上に載せます。

 

使用中に動作が停止する(エラー?)、
時に最初からスイッチが入らないそうです。

 

三洋電機製の電気乾燥機CD-ST60、
2005年の発売でとうに生産終了しています。

  

その後三洋は吸収されてパナソニック
下にあります。取扱説明書もDL可能です。

 

製品表示の隣にこのようなシールが貼られて
います。2014年に点検を受けているようです。

 

2014年の点検まで最長で9年間、点検から
さらに4年間が経過していることになります。

 

現在普及しているドラム型衣類乾燥機が
長期間トラブルなく動作するとは思えません。

 

外観的な傷みの少なさを不思議に
思いながら、裏カバーを取り外します。

 

固定ネジを全て緩めると、金属製
裏カバーが外れてきます。

 

やはり内部は埃の集積が進み
一様に汚れが付着しています。

 

送風ファン中心部のベルトプーリーです。
一面に綿埃がこびりついています。

 

ファンブレードの周囲部分、隙間
(溝内)に綿埃が入り込んでいます。

 

圧縮されて固まりになっており、
指で引っかくと丸ごと取れてきます。

 
 
掃除機を当てて全周を
一挙に吸い取ります。

 
  
スポスポと面白いように
固まりが取れてきます。

 

「スッキリ」・・しました、長年にわたる埃の集積はすごいものです。
しかし、この部分の埃は機能や性能にあまり影響を与えないで
しょう。乾燥送風時の風量が多少低下する程度かと思います。

 

ここで乾燥ドラム内のフィルターセットを
点検します。簡単に取り外せます。

 

フィルターセットの外側には専用フェルト製の
円形フィルターが入れられています。

 

フェルト内にかなりの埃を吸い込んでいるようですが、
日常的に清掃されているようで比較的綺麗です。

 

フィルターセットは2重構造になっており、
内側はナイロン製の細かいメッシュです。

 

メッシュを取り付けているリングは外されたことが
ないようです。綿埃が詰まりに詰まっています。

 

送風がほとんどブロックされていたと思われます。本来の
通風経路を失い、綿埃は乾燥機内を右往左往したはずです。

 

掃除機で徹底的に清掃します。これで乾燥機
(ドラム)内は本来の熱平衡状態に戻るはずです。

 

熱風の循環が阻害され熱平衡が崩れると、各所が
ダメージを受けいずれ正常に動作しなくなりますが、

 

その前にセンサーが機能して動作を停止させるで
しょう。つまり「エラー」状態に遷移するわけです。

 

部品の劣化や損傷を疑う前に、エラーの原因を除去する
必要があります。フェルト製フィルターも綺麗になりました。

 

本体後ろ側に回り、分解を続けます。
ファンを回転させるベルトを外します。

 

大型の送風ファンを留めている
スナップリングを抜きます。
 

スナップリングの奥に樹脂製・金属製の
ワッシャが3枚入れられています。

 

この際、乾燥ドラムも取り出し
さらに内部もメンテします。

 

送風ファンの裏側です。表側同様に
ファンブレードの溝に埃が詰まっています。

 

ドラムに面している側で空気中の水分量が多いので
しょう。水分が媒介してブレード表面に固着しています。

 

ドライバーの先で1か所ずつ掻き出し、
その後掃除機で一挙に吸い取ります。

 

こちら側もスッキリ綺麗になりました。ファン
全体の変形はないので、当分使用できるでしょう。

 

本体側面にある点検口です。
取り外して内部を調べます。

 

点検口というよりも、ドラムを回転させる
ベルトを指を入れて脱着するための窓です。

 

点検口から内部を覗き込むと、衝撃的な光景が飛び込んできました。一瞬
断熱材」かと思うほどの大量の綿埃です。もちろん衣類乾燥機に断熱材など
使用されているわけがありません。前面操作パネルのちょうど裏側あたりに
広がっています。これらが水分を含んだ状態を想像するとゾッとします。

 

モーターからのシャフト、ベルトの
テンションプーリーあたりも埃まみれです。

 
 
乾燥ドラムを引き抜くためには
ベルトを解放する必要があります。

 

引き抜く前にセンサーを
接続するコードも解放します。

 

コネクターを抜き取ります。前面操作パネル
内部の制御基板に接続されています。

 

最後の固定ネジを緩めます。水平に寝かせた方が作業しや
すいのですが、ドラムの重量を考慮し立てたままで進めます。

 

本体外側カバーとの隙間がぎりぎり、
かなりタイト・シビアな筐体設計です。

 

金属部品の端で手指を切る心配があるので
軍手をはめて作業します。ドラムが出てきました。

 

先ほど点検口から覗き見た内部の全貌です。「フィルターが詰まる」→「循環空気が
通り道を失う」→「逃げ道を求めて乾燥機内部を右往左往する」→「あらぬところに
大量の綿埃が吹き溜まる」、このような流れで長年の間に形成されたのでしょう。

 

ものすごい量です。もう少しすると、ドラムの
回転も止めていたのではないでしょうか。

 

ひたすら掃除機で吸い取ります。紙フィルター式の
吸引力の強い掃除機でないと歯が立ちません。

 

あっけなく紙フィルターが満杯です。
新しいものに交換し作業を続けます。

 

最後は手で直接綿埃をわし掴みにして
取り出します。圧縮されて固くなっています。

 

新品時同様の状態に戻りました。確認したわけでもないのに
既に不具合が解消してしまったかのような気分です。

 

まだ清掃の残っている部分があります。
ファンからの送風をドラム内に導く通路です。

 

ダクトを外すと、その陰にまだ埃が残っています。
この辺りにも綿埃が届いていた証拠です。

 

三角の窓から空気が送り込まれ、ヒーターユニットを
通過して反転し、手前のパンチ穴から吹き出ます。

 

中の奥まった部分に埃が集積している可能性が
あります。手前からエアを吹いて取り除きます。

 

前面操作パネルも取り外してみます。
電気的制御機能が集中しています。

 

この狭い隙間にまで埃が入り込んでいます。
水分を含むと電気回路に悪影響を及ぼします。

 

掃除機で徹底的に吸い取ります。いよいよ、深刻な故障
ではなく、埃集積によるエラーの可能性が高まってきます。

 

前面樹脂製カバーを外すため
裏側の固定ネジを緩めます。

 

既に清掃済みではありますが、空気加熱用のヒーターユニットが見えて
います。ドラム内のフィルターが詰まり、埃を含む空気がファン側に抜けて
こないため、送風ダクト内およびヒーターユニット周りの埃は少な目です。

 

カバーの隙間を通してヒーター
ユニットの状態を確認します。

 

高圧エアを吹いたこともあり、熱変換用
フィンの隙間は非常に綺麗なものです。

 

乾燥ドラムを戻す前に、フィルター奥側の樹脂製
リングを点検します。ネジ止めされています。

 

ネジを緩め取り外してみると、
周囲に何かパッキンのようなものが・・

 

パッキンなどではありません、ここにも綿埃がぎっしり集積
しています。ネジ固定されている内部にまで埃が入るとは。

 

ネジを外さなければならないメンテなど、
およそ一般家庭向けの設計ではありません。

 

取扱説明書にある最低限の手入れでは
いずれ確実にトラブルに至るということです。

 

埃の大量発生が前提の家電製品なのに、
その埃のせいで確実に不具合を起こすとは・・

 

送風ファン下部に溜まる水を抜くための
パイプだと思います。先に差し込んでおきます。

 

乾燥ドラムを筐体内に収めます。最小限の
隙間を縫って徐々に押し込んでいきます。

 

最後は(当然)所定の位置に正確にはまります。
各部のレイアウトに関しては実に巧妙な設計です。

 

水抜きパイプを引き込み、ドラム
回転ベルトの下を通します。

 

水抜きパイプを一時貯留タンクに接続し、モーターシャフトと
テンションプーリーにベルトをかけ、ドラムに当たる位置を合わせます。

 

送風ファンを嵌め込みます。
軸受部に少量注油しておきます。

 

ワッシャーを入れスナップリングをはめて
取付完了です。ファン回転ベルトも戻します。

 

本体前面の洗濯物投入口の開閉カバーです。
洗濯物が擦れて傷が付き、内部が良く見えません。

 

アクリル製なのでサンダーで
研磨し大きな傷を落とします。

 

光沢面になるまで研磨するのは大変ですが、コンパウンドで
磨き込み、ある程度内部が透視できるようにします。

 

さて、洗濯物を放り込み、工房内にて試運転してみます。容量上限近く洗濯物を
入れたわけではありませんが、取りあえず何も問題なく乾燥が終了します。大量に
集積した綿埃により、内部の熱循環が阻害され著しい温度上昇を招いたのだと
思います。そして、温度の監視センサーは正常に機能していたということです。
しかし・・、コンシューマ向け家電製品がこれでいいのでしょうか。使用者が多少
手入れを怠ることで、いずれこのような事態に直面させられる現状には納得でき
ません。いよいよ2014年に行われた「点検」が何だったのか、疑問が募ります。

 
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