「窓の開閉ができない」とお聞きし、ご依頼主のお住まいに出向きました。
2階の1室の3面にすべり出し窓があり、実際に開閉しようとすると動きが
ひどく重く、力を入れてようやく30cmほど開きます。閉じようとするとさらに
重く、今度は窓障子が開口部窓枠からずれて閉めることが出来ません。
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窓を開閉させているのは、開閉に合わせてアームがスライドする
フリクションステーと呼ばれる金具です。築30年近い建物本体と
ともに長く雨風に耐え続け、部品の劣化が進んでいるようです。
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窓障子の上下で、吊り方向の異なる2本の
フリクションステーが使用されています。
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アームの摺動部が材質劣化をきたし、
摺動摩擦が極端に大きくなっています。
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この機会に新しい部品に交換することをご希望
でしたので、一部を取り外して持ち帰ってきました。
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レール部分に注油することで取りあえず
復活、スライドするようにはなりますが、
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レール内を摺動するこの
小さな樹脂製アームが、
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破断しています。このためパンタグラフを
構成するリンク構造が成立していません。
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単に開閉できないばかりか、中途半端に窓を
こじ開けると閉鎖位置に復帰できなくなります。
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窓3面、計6本のステーのうち、破断はこの2本
です。しかし、他も破断は時間の問題でしょう。
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補修部品が入手できるのであれば6本全てを交換して
おく方が賢明です。しかし、30年近く前の部品です。
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窓サッシのメーカーは新日軽、現在のLIXILです。
LIXIL製ではなく汎用品の中から該当品を見つけました。
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元の部品と各部寸法が微妙に異なり一抹の不安がありましたが、半月以上もの納期を
経てようやく配送されてきました。同色塗装品は見つからずステンレスの無塗装品です。
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強度を向上させているのか、レール部の幅が
やや大きくなっています。部品構造は同一です。
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発注段階で気付いておりましたが、1か所だけ
ネジ穴の位置が異なります。工房で再加工します。
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他のネジ穴と位置関係を正確に合わせるため、
別のネジ穴2か所をネジで仮り固定します。
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ステンレスの固さに負けることなく、元の部品と
同じ位置に正確に穴を開けることができます。
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2回りほど太いドリルに付け替えて
ネジ穴の周りを皿モミします。
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皿ネジの頭を引き込まないと、窓の開閉に伴い
回転してくる樹脂製摺動部品に干渉します。
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引き込み方が少し甘い感じですが、他の既存穴もこの程度です。
全てのフリクションステーに加工を施し、再び現場に出向きます。
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ほとんど仮固定状態だった窓障子を取り外します。
この間に台風が通過しているので心配していました。
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作業は窓の外、1階の屋根上に立って行います。
勾配の緩やかな屋根でいくらか安心です。
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劣化した古いステーを取り外し、工房で
加工した新しいステーに交換します。
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窓障子側、窓枠側いずれも
ネジ穴は完全に一致しています。
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下側ステーを窓枠に載せた状態で
上側ステーを先に取り付けます。
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風のない日だったので、窓障子が煽られる心配はあり
ませんが、高所でバランスを維持するのはしんどいです。
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下側フリクションステーも取り付けを終えました。
窓障子や窓枠と色違いですがさほど気になりません。
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30年近く前の製品とはいえ、サッシシステムの
デザイン・施工性は実に良く考えられています。
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所定のネジ穴にネジ固定するだけで、閉まり具合や隙間の調整
など全く行う必要がありません。誤差や狂いなく1発で決まります。
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屋根伝いに北東側の小窓に移動します。
窓幅が狭くここから出入りすることはできません。
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窓障子が小さく軽いので
作業も比較的簡単です。
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上下のフリクションステーを交換し終わりました。
手回しのドライバーでネジを確実に締め付けます。
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北東壁の反対側に同じサイズで
開閉方向が逆の窓があります。
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屋根伝いに移動してこちらも
同様にステーを交換します。
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3窓全てのフリクションステー交換を終えました。もうしばらく
台風シーズンが続きますが、これで安心していただけます。
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