7月末の日曜日、ガスの抜けたエアコン修理に千葉市まで出かけました。ご依頼主が
モノを非常に大切にされる方で、エアコンの不具合を何とかしたいとお考えです。以前
にもガスが抜けたことがあり、業者を呼んで冷媒補充してもらったのですが、数週間で
元に戻ってしまったそうです。本当に修理不能なのか、納得のいく点検と説明をお望み
です。「ダメモト」でよろしいとのことで、50km近い遠方までお伺いすることにしました。
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戸建て住宅の外壁とブロック塀の間に室外機が設置
されています。作業前に蚊よけスプレーを吹きます。
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National時代の200V仕様4kWのエアコンです。
冷媒はR410A、2004年製で14年経過しています。
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リモコンで室内機の電源を入れ
簡単に動作確認を行います。
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一応電源が入り、吹き出し口から風が出てきます。
異常停止するほどの不具合はないようです。
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吸込み側の温度を計測してみます。
室温に等しい29.8℃を示しています。
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続いて吹き出し側の温度を計測します。
29.3℃で全く温度変化がありません。
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室外機側面のカバーを外します。スプレーが
効いているのか藪蚊が姿を消しています。
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修理の方針は、配管の気密を点検し漏れを修理出来れば
冷媒を補充します。出来なければ買い替えをお勧めします。
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配管接続部での漏れは比較的修理が容易ですが、
室外機内部(コンプレッサ等)の不具合は困難です。
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液側・ガス側ともポート周りに錆が広がっています。
バルブに指を当ててみますが、全く冷えていません。
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液側ポートの温度を計測します。
33.0℃でほぼ当日の気温です。
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ガス側ポートの温度は27.6℃で5℃ほど低く
なっています。僅かに冷媒が残っているようです。
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サービスポートのキャップを外します。冷媒がどれだけ
抜けているか、どれだけ残っているかは分かりません。
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冷媒の残量が把握できない、すなわち
正確な補充量を割り出すことが出来ません。
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吸込み側と吹き出し側の温度差から推定するしかあり
ません。ポンプダウンに備えてポートのキャップを外します。
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サービスポートにコントロールバルブを取り付け、三方弁を
少し開いてみると、冷媒がほとんど吹き出してきません。
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数秒で抜け切ってしまいました、冷媒はほとんど
残っていません・・空の方が正確に補充出来ます。
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マニホールドを経由して真空ポンプを取り
付けます。配管系の気密性を点検します。
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液側・ガス側ともにバルブを閉め、室外機を含まない
経路をエアパージします。真空ポンプを始動します。
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マニホールドのバルブを開き、
配管系から真空を引きます。
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5分ほど真空を引いたところでマニホールドの
バルブを閉じ、真空ポンプを止めます。
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しばらく放置して配管系の真空度が低下して
こないか確認します。大丈夫です、問題ありません。
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次に液側・ガス側のバルブを開き、室外機も含む経路で
真空を引きます。マニホールドを閉じポンプを止めます。
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しばらく放置するも真空度に変化はありません。出来れば
ひと晩とか数日間様子を見るべきですが、それは無理です。
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ご依頼主と相談の上、取りあえず明らかな
漏れはないので、冷媒を補充することにします。
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数日~数週間かかり漏れる可能性はありますが、
そのような微少の漏れは発見も修理も困難です。
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真空ポンプへの配管を外し、冷媒ボンベへつなぎ
変えます。マニホールド手前で一度パージします。
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ボンベのバルブを開きます。流入量調整はマニホールド
バルブあるいはコントロールバルブで行います。
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冷媒補充量を確認します。既に空になって
いるので規定量の1.21kgを目指します。
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補充開始前のボンベ重量を計量します。
7463gですが、±20gほどふらつきます。
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冷媒補充完了後のボンベ重量を計算
します。6300gあたりを目標にします。
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サイフォン付きのボンベなので正立させた状態で液相で
補充されます。バルブを少しずつ開きゆっくり補充します。
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補充開始後間もなく、吹き出し
側の温度が低下し始めています。
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200gほど補充されたところです。ボンベに接続
されているホースに手を触れないようにします。
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さらに吹き出し側の温度が低下
してきます。25℃を下回っています。
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室外機の液側配管表面の温度を確認
します。冷媒が圧縮され40℃近くあります。
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室内機を経由し膨張して戻ってくる
ガス側配管の表面温度です。
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ほぼ目標の冷媒補充量に達し
ました。ここでバルブを閉じます。
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再度、室内機の吸込み側温度を計測します。
室内が少し涼しくなり、現在29.4℃です。
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吹き出し側の温度は18.7℃まで低下しています。
吸込み側との温度差は約11℃になります。
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がんがん冷えてきます。冷媒とコンプレッサーの威力は凄いものです。辛抱を
強いられてきたご依頼主には、これで当面の酷暑をしのいでもらえます。しかし、
冷媒補充後に一度は抜けてしまったガスが、再び抜けない保証はありません。
守谷工房の現状(設備・技術・経験)では、室外機内部も含む微量の冷媒漏れを
把握・修理することは困難です(ご依頼主には申し訳ございません)。それでも、
せめてこの状態のまま夏を乗り切ることが出来れば、15年近い使用期間から
しても、その後新型に入れ替えていただきやすいのではないかと思います。
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