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空気が乾燥しインフルが流行する季節に欠かせないのが加湿器です。超音波式、
沸騰式、気化式、それらを組み合わせたハイブリッド式など、様々な方式の製品が
出回っております。これまでは超音波式の修理ばかりで、寿命を迎えた超音波
振動子を交換することがほとんどでした。今回は見たことのない製品の修理です。
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製品シールを確認します。アイリスオーヤマ社製、
気化ハイブリッド方式の加湿器EHH-500です。
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外気をそのまま使う自然気化式と、加熱して
使う温風気化式を併せたハイブリッドです。
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ハイブリッドと呼ぶには無理があるような気も・・。
しかし、温度・湿度センサーを備えた優れものです。
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運転するとエラーが出ると聞いておりますが特に問題なく
動作します・・、いや吹き出し口から強烈な臭いがします。
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加湿器にありがちなカビ臭さでもなく、
頭痛や嘔吐を催すような嫌な臭気です。
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タンクを抜き取り、本体側面から
水を溜めるトレイを引き出します。
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トレイの奥に加湿気化フィルターが置かれており、
その下部1~2cmが水に浸かっています。
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フィルターの繊維を水が吸い上がり、電動の
ファンにより強制的に蒸散させられる構造です。
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化繊(レーヨン)を編み込んだフィルターにカルキがこびり付いています。ここで細菌が
繁殖したせいでしょう、広い範囲で褐色に変色しています。悪臭の原因はこれです。
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ナイロンたわしをかけてみますが、
固着したカルキには歯が立ちません。
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気化フィルターは、日常のお手入れとしてクエン酸による
洗浄が指示されています。まず温水の中に浸します。
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温水の温度は40℃以上あります。
クエン酸を投入し良く攪拌します。
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炭酸カルシウムとクエン酸が反応し炭酸が発泡します。
3CaCo3
+ 2C6H8O7
→ Ca3(C6H5O7)2
+ 3H2CO3
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1昼夜放置した後、取り出して水道水で洗浄
します。落ちたような雰囲気ではありません。
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残ったクエン酸液にはクエン酸カルシウムが溶け込んで
います。細菌繁殖による生成物のため変色しています。
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フィルター表面を確認します。まだカルキがかなり残って
います。長期間にわたり集積したようで簡単には落ちません。
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側面に折り畳まれている部分を広げてみます。
メッシュの中に入り込んだカルキは除去不能でしょう。
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気化フィルターの再利用は諦め、お手入れの指示通り「臭いの取れないフィルターは
交換」することにします。フィルターの取扱説明書によると、「月1回のクエン酸洗浄を
行った場合で5シーズン」が寿命だそうです。ネット上の製品レビューには、「下手に洗浄
すると却って臭ってくる」、「毎年交換した方が良い」などの書き込みが多く見られます。
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新しい気化フィルターに交換する前に、
トレイを洗浄し垢やヌメリを取ります。
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新しい気化フィルターを取り付け、
トレイに深さ2cmほど水を入れます。
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カルキが付着しているとフィルターの吸水力が
低下し、水がほとんど蒸散出来なくなります。
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15分ほど待っていると、気化フィルターの
上面まで水が吸い上がってきました。
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気化式加湿器の長所は、故障しやすい超音波振動子が不要、水を沸騰させるヒーターも
不要、消費電力が小さい、運転音が静かなど、他の方式にはない優れた点がいくつもあり
ます。しかし、気化フィルターのカルキ集積、カルキを取り除くクエン酸洗浄の手間、それでも
避けられない臭気の発生など、深刻な短所もあり悩ましいところです。カルキ防止用に
ゼオライトを使ったカートリッジもありますが、効果の持続は3か月程度でしかありません。
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