帳票を印刷すると罫線が曲がってしまう、CANON製MG7530修理のご依頼です。
一緒にお持ちになった印刷結果(写真左側)を見ると、直線であるべき縦方向の罫線が
くねくねと左右に曲がっています。正確には罫線がずれながら二重に印刷されており、
正しく印刷されたもの(写真右側)と比べると、不具合が生じていることは明らかです。
ご自身でもユーティリティによるヘッド位置調整を試されましたが、改善が見られません。
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あらためてテストページを印刷してみます(写真左側)。モノクロ印字用ヘッドと
カラー印字用ヘッドが別々にインクを吹き、両者のタイミングが合っていません。
その結果、位置がずれて印刷され歪んで見えてしまう・・ということでしょう。
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ヘッド位置調整で解消しない場合、用紙排出部の奥に取り
付けられているキャリッジタイミングフィルムを点検します。
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機種によりますが、MG7530は本体カバーを
取り外さなければフィルムに手が届きません。
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左右側面のカバーを外します。外観からは
どこから分解するのか見当も付きません。
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手前の操作パネルを開けてもまだ届きません。
原稿台を含む本体上側カバーを外します。
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左下の本体内部で大き目のツメが噛んでいます。
ドライバーで解除しながらカバーを持ち上げます。
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反対側右下にもツメによる篏合があります。
解除しながら2cmほど持ち上げます。
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左上の1か所のみネジで固定されています。
厄介な篏合がなく、この方が作業が楽です。
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右上は底面方向に下がったところに
大きなツメによる篏合があります。
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何とも統一性のない、整備のしにくい構造です。
メーカーの修理サポートも大変ではないでしょうか。
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原稿台ごと上側カバーがはずれました。
ようやく駆動部にアクセスできます。
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印字ヘッドブロックの奥、駆動ベルトと並行してキャリッジタイミングフィルムが
取り付けられています。ヘッドの左右移動方向に沿って空中に張られています。
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透明なフィルム素材に見えますが、細かな
縦縞が印刷された一種のエンコーダです。
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フィルムの右端に横長の穴が開けられており、
本体金属フレームのツメに引っかけられています。
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左端はスプリングを介して本体に止められています。
細長いフィルムに左右方向の引張力を与えます。
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スプリングの端をつまんでツメから外します。
フィルムを緩めて右端もツメから外します。
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キャリッジタイミングフィルムを静かに引き抜きます。途中から色が少し
濃くなっているのは、エンコーダとなる縦縞が印刷されている部分です。
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フィルムの表面を点検すると、所々に
汚れが付着していることが分かります。
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インクジェットプリンターの内部は、飛び散ったインクでかなり
汚れています。その一部がフィルムに付着すると考えられます。
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精密に印刷されている縦縞が、汚れが付着して
判別できなくなるとエンコーダの役割を果たしません。
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修理の実際は簡単なものです。フイルム表面を丁寧に
清掃するだけです。元通り組み上げて印字を確認すると・・、
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印字の歪みは直っていません。原因はフィルムの
汚れだけではないようです。さらに分解を進めます。
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ヘッドユニットを左右に走行させる金属製
ガイドレールの上側を取り外します。
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ヘッド駆動用溝付きベルトを外し、ヘッドユニットを取り出し
ます。インクカートリッジや印字ヘッドは予め外してあります。
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キャリッジタイミングフィルムの縦縞を読み取るオプティカル
センサーを探します。こちらが汚れている可能性があります。
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この白い樹脂部品の中にセンサーが組み込まれていると
思い、ティッシュを差し入れて清掃しますが・・、違いました。
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フィルムの通過する位置からして、この
ブラケットの奥が本来のセンサーです。
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このセンサーがインクジェットのドット単位で、ヘッドユニットの走行位置を
割り出します。少量のアルコールを付けて表面を丁寧に清掃します。
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分解したついでに、内部に飛び散ったインクの汚れを清掃
します。廃インクパッドはインクを吸ってビショビショです。
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非純正の互換インクを使い続けると、特に汚れが
ひどくなるように思います。元通りに組み上げます。
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再びテストページを印刷してみます。写真左側が元の印刷結果、右側が修理後の
印刷結果です。正常に印字されており、文字がぶれている様子はありません。
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罫線を含む帳票を印刷してみます。写真右側が修理後の印刷結果です。縦方向の
罫線が真直ぐ正確に印刷されています。不具合の原因は単純(ただの汚れ)、修理
方法も簡単なものです。しかし、センサー1個の汚れを取り除くため、そこにアクセスする
までの分解手順が実に厄介です。高品位の印字をもたらすプリンターですが、優れた
性能とは裏腹に、この極端なメンテナンス性の低さは何とかならないものでしょうか。
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