電子レンジのスイッチが入らない・・、お料理の必須アイテムが利用できず
助けを求める連絡が入りました。午前からの現場がお昼過ぎに完了し、
その足でご依頼主のお宅に伺いました。可能ならば現地で対応したい
ところですが、確実かつ丁寧に修理するため、また夕方までまだ時間が
あったので、お預かりして工房に持ち帰ってきました。手早く片付けます。
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この「あたためスタート」ボタンの調子が悪いそうです。
ボタンの上端あたりを押すとスイッチが入りますが、
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ボタンの左半分や下端を押しても入りません。
強く押すとまれに入ることがあります。不安定です。
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側面パネルに貼り付けられている製品シールを
確認します。SHARP製RE-S31E-Sです。
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既にSHARP社に製品情報はありませんが
こちらから取扱説明書をダウンロード出来ます。
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2011年発売、庫内容量31L、最大レンジ出力
1000Wの大型でパワフルなオーブンレンジです。
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仰向け(ドアを上向き)にすると、底面の
吸気グリルが綿埃で詰まりかけています。
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電気掃除機で完全に吸い取ります。内部に見える
ブロアモーターも埃だらけです・・が、先を急ぎます。
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スイッチが組み込まれている、ドアパネルの
内部にアクセスしなければなりません。
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家電製品などの民生機器は、使用者の手が容易に入らない
よう、パーツの組付けや固定ネジの位置が工夫されています。
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分解(組付け)の手順が非常に分かりにくいのです。足を
取り付けるネジが、本体の固定ネジを兼ねることもあります。
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足を取り外しましたが、無関係でした。このカバー状の
構造は、全体が嵌め込み式になっているのかも・・、
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そうではありません。ドアの内側に嵌め込まれている
インナーフレームを、ドアパネルが受け止める構造です。
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ネジは使用されておらず、周囲数か所に配置されたツメが噛み合う
ことで固定されています。フレームを破損しないよう丁寧に外します。
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インナーフレームが外れました。製品の分解図が
あれば試行錯誤せずに済みますが、入手困難です。
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インナーフレームの内側に、堅牢な金属製フレームに
よりガラス板とパンチングメタルが固定されています。
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金属製フレームは、ドアパネル外側の樹脂製
カバーにネジ止めされています。全て緩めます
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ドアパネルが内外2枚に分離しました。内側の
パネルは極めて重要な役割を果たします。
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このパンチングメタルは、マグネトロンが発生する
2450MHzの電磁波をほぼ完全にシールドします。
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電子レンジの強力な加熱原理を考えれば、電磁波が
外に漏れ出すことは絶対に防がなければなりません。
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内側パネルが外れると、さらにネジが隠れています。
操作パネルを内側から固定しているネジでしょう。
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ドアパネル前面下部に取り付けられている
操作パネルです。ようやく外れてきました。
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これで不具合を起こしているスイッチにアクセスすることが出来ます。
操作パネル内側に、スイッチやディスプレイをまとめた回路基板が取り
付けられています。右側ヒンジの近くにケーブルが配線されています。
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コネクタを抜きケーブルを外します。多くの家電製品で
操作パネル部分にこのような構造が採用されています。
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表側パネルと回路基板は計15本もの
ネジで固定されています。全て緩めます。
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両者が分離しました。表側パネルに配置されたボタンが、
回路基板上に実装されたタクトスイッチを押し込みます。
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不具合を起こしている「あたためスタート」
ボタンに該当するタクトスイッチはこれです。
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タクトスイッチを押したときの導通状態を
回路計を用いて点検します。導通しません。
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原則的に部品交換です。タクトスイッチの
劣化による不具合発生を実に多く見かけます。
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タクトスイッチを取り付けて
いる半田を吸い取ります。
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新品に交換したいところですが、このサイズ、押しボタンの高さ、
端子の間隔など、いずれも同等品を手に入れるのは困難です。
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しかも、大急ぎで修理してほしいとのご要望なので、潤滑剤を用いて電気接点の
復活を試みます。潤滑剤の溜まりを作り、その中にスイッチを浸潤させます。
ピンセットでボタンを数百回繰り返し押し込み、潤滑剤の浸透を促します。
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ほぼ完全に復活しました。もちろん新品に交換したいところですが、タクトスイッチは
全部で16個使用されています。点検してみると他のスイッチも大なり小なり劣化が
進行しています。新品への交換は複数のスイッチが不具合を起こした時点でよろしい
でしょう。今回は全てのタクトスイッチに潤滑剤を吹き付け、接点の劣化を予防します。
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15個の固定ネジを締めます。タクトスイッチ単体での導通は
OKですが、レンジ全体が機能するかまだ分かりません。
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操作パネルの組み付けが終わりました。が、
ここでパネル表面に付着した汚れが気になります。
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フィルム上の樹脂が成型加工されているので
樹脂用コンパウンドで綺麗になるはずです。
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丸型ボタンの周囲溝に入り込んだ
汚れも完全に落とします。
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本体内部へつながるケーブル(コネクタ)を
接続します。ケーブル長がぎりぎりです。
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調理器具である電子レンジは、とかく汚れが付着しやすい
ものです。分解ついでに前面ガラス内側をクリーニングします。
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うっすら広がった内側の曇りが取れました。
普段、外側だけを拭いても綺麗になりません。
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折角、工房にお預かりしたので外部全体をクリーニング
します。家庭用洗剤で油汚れのベタつきを一掃します。
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庫内温度や調理時間設定用のツマミです。
表面に油汚れがこびり付いています。
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樹脂メッキされた表面は、洗剤で
簡単に汚れが落ち、光沢が戻ります。
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そのつまみを元に戻して作業完了です。何かヘマをやらかしていな
ければ良いのですが。ここから再度分解、ということがままあります。
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ボタンに触れた瞬間にスイッチが入ります。レスポンスがまるで異なります。元々、
このような仕様だったのでしょう。タクトスイッチの接点劣化は悩ましい問題です。
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「あたためスタート」ボタンのどこを押しても瞬時に確実に
スイッチが入ります。何とも小気味良い感じがします。
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表面全体の汚れがすっきりと落ちて、非常に見栄えが良くなりました。
ご依頼主のお宅に戻り、再び毎日の調理で元気に働いて欲しいものです。
夕食の準備の時間が迫ってきました。簡単に包装し急いで納品に向かいます。
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