工房の業務に小さく「襖紙・障子紙の張り替え」と書き込んであります。
一応やります・・程度のつもりでしたが、本当にご依頼が舞い込んできました。
|
市内にある町内会の集会所です。8畳間がふた間続く、計16畳間の襖を張り替えて
欲しいとのご要望です。通常の襖8枚と天袋用襖4枚で12枚の張り替えです。
*写真をクリックすると作業後の写真にジャンプします。
|
確か20年近く経過しているとおっしゃっていました。
襖紙が全体的に色褪せ、同時に変色が進行しています。
|
框が外れない構造(戸襖)のため、紙の隅を中に
巻き込んでおらず、一部が剥がれかけています。
|
軽量化を図るため内部に組子を入れず、段ボール材が
使用されています。嵌め込み式引手を抜きます。
|
隅が剥がれかけているものは、古い襖紙を完全に
剥がす必要があります。霧を吹いて糊を緩めます。
|
糊が緩み始めるタイミングを見て、古い襖紙を剥がします。
時間を置くと母材に水が浸透し反りを引き起こします。
|
この襖紙を張った職人さんは良い仕事をされています。襖紙の
周囲にだけ糊を塗り、中の部分は張りを持たせているだけです。
|
一部に糊の強い部分もありますが、
霧を追加しながら丁寧に剥がします。
|
スクレーパを忘れてしまったため
カッティングメジャーを代用しました。
|
框が組まれたままで張り替えます。框全周に
マスキングテープを貼り、糊の付着を避けます。
|
マスキングテープを貼り終わりました。
ブルーシートの上で作業しています。
|
用意した襖紙です。無地をご希望でしたので
僅かに青みを含む明るいアイボリーを選びました。
|
糊を均一に塗るには経験が今ひとつ、シールを剥がす
素人仕事は避けたい、結果、水で濡らす再湿タイプを選択。
|
糊面に満遍なく霧を吹きます。強くかかっている
カールは、水が浸透するにつれ収まります。
|
3回ほど繰り返し全体に霧を吹き、
水を十分に含ませ糊を溶きます。
|
ここで数分寝かせて襖紙が水を吸って十分に伸びるのを待ちます。伸び
切らないまま張り付けると、表面にしわが生じ易く除去が難しくなります。
|
無地の襖紙にもかかわらず、天地方向が
示されています。念のため方向を合わせます。
|
一部の襖は、敷居や鴨居の変形のため取り外せ
ません。止むを得ず立てたままで作業します。
|
周囲の框にマスキングテープを貼ります。
表面に残った糊を拭き取る手間を省くためです。
|
襖の表面にも軽く霧を吹きます。襖紙側に吹いた
水分が移動し、調整前に固着するのを抑えます。
|
襖紙の端を持って両手で吊り下げ、鴨居側の框付近に仮止め
します。この位置合わせは、襖が立っている方が容易です。
|
押え刷毛により空気を追い出しながら襖紙を密着
させていきます。上→下、中→左右に刷毛を振ります。
|
4辺の隅近くでは、やや力を入れてしごくように刷毛を
振ります。框との境界部で完全な密着を目指します。
|
框との境界部では、刷毛を強めに
当てて襖紙を段差に馴染ませます。
|
1枚全体を張り終えましたが、急速に乾燥が進行し糊の
粘着性が失われていくので、急いで余分を切り離します。
|
カッティングメジャー(安物です)を強く当て、
框の段差内側に襖紙を十分押し込みます。
|
框側に乗っている紙を一部引きずり
下すようにすると紙が破れません。
|
四隅では紙に特に無理がかかるので
紙が伸びるのを待ちながら押し込みます。
|
隅部分(角)にも奥まで紙が入り込み
框の段差が浮き出ています。
|
框の上に載っている余分の襖紙を切り離します。
カッティングメジャーを当て0.2mmの薄刃で切ります。
|
濡れた紙を綺麗に切るのは難度が高く、
熟練を要します。守谷工房はまだまだです。
|
熟練した職人は躊躇せず一挙に紙を引き離します。
が、切り残しに備えカッター片手に慎重に離します。
|
続いてマスキングテープも剥がしてしまいます。框の
境界に再度カッティングメジャーを当て、紙を押さえます。
|
2・3枚目あたりから要領が固まり、1枚に
付き20~30分で作業が進行します。
|
しかし、補助作業員なしで襖紙張りに加え
襖の取り回し全てを作業するのはきついです。
|
引き手を取り付けると一挙に見栄えがしてきます。「明るいアイボリー」のはずが
「かなり白に近い」印象です。張り終えた後の印象を想像するのも職人の域です。
|
写真に写っていない左端の1枚は、張り付け直後から地のアクが浮き出て
きて、張り直しせざるを得なくなりました。また、その上の天袋襖は、鴨居の
変形で外すことができませんでした。襖紙を追加購入し、鴨居を押し上げる
ジャッキを用意して、後日、作業を完了させに再度伺うことにします。
*写真をクリックすると作業前の写真にジャンプします。
|
|
|