ビデオ編集用の高性能タワー型デスクトップPCの修理です。中・高等学校の生徒視聴覚委員会で
利用されているPCで、大容量のHDDには学校行事を記録した貴重なビデオファイルが収められて
います。起動できない・・ようですが、状況を伝えるために以下のようなメモが添えられていました。
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・立ち上げようとしても電源が付かない。真ん中のファンが動いていない。
・電源ボタンを押すと、点滅はするがすぐに消える。
・何十秒間か押すと、動かなかった真ん中のファンが動き出した。
・またすぐにファンが止まり、電源も止まった。
・ファンを取り換えると、電源はつくようになった。
・しかし、ディスプレイをつなげてみると信号なし・・・
・HDMIもVGAも、他のディスプレイも試したが「NO SIGNAL」
・マザーボードをずらしてしまった。
・ボタン電池も多分大丈夫
・グラフィックカードを取り外した。
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このようなメモを添えて下さると大変助かります。原因解明のヒントが
いくつも含まれているように思います。全体的にPC起動時の動作が
ひどく不安定です。何はともあれ、電源ユニットの動作が疑われます。
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圧倒的に大型のタワー筐体に、これまた大型の電源ユニットが組み込まれて
います。全てのケーブルを抜き、電源ユニットを取り出します。埃まみれです。
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ユニット内蔵クーリングファンも大型です。大量の埃が
入り込み、ファンブレードが埃を引きずっています。
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手近にあったAT電源ユニットを用意します。電力容量が明らかに不足
していますが、マザーボードを最低限動作させる電力を供給します。
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CPUファンを始め、前面・上面・背面の各内蔵ファンが全て
回り始めました。トラブルの原因は電源ユニットです・・が、
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やはりディスプレイに表示が出ません(NO SIGNAL)。
PC自体のクレジットやBIOS画面も出ないということは、
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CPUがBIOSを処理する段階から動作していない、ということであり、各デバイス・
チップ単位で点検が必要です。手始めに、チップの代表格CPUから点検します。
クーリングファンを外して清掃し、ソケットからCPUチップを抜き取ってみます。
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ソケット内面に緻密に並ぶ端子群です。CPUチップ裏面の端子と電気的に
完全接触させるため、バネ構造に成形された微細な金メッキピンが、規則正しく
精密に植え込まれています・・、写真の中に不具合の原因が見えています。
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数本のピンが欠損しています。正確には、何かの原因でピンが起き上がる方向に
曲がっています。拡大鏡下で極細先端のピンセットを使い、1本ずつ修正します。
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PCのクレジットが表示されるようになりました。この先、HDDの読み書きが始まると
電源容量が追い付かなくなる恐れがあります。電源を落として修理を続けます。
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組み込まれている電源ユニットは「hec WIN+3 700W」です。
高性能グラボや何台ものストレージを駆動する大容量電源です。
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「電源ユニットの不具合=コンデンサのパンク」と期待しつつも、外見上
コンデンサには問題が見当たりません。放熱器付きパワートランジスタに
容疑がかかりますが、その点検や交換には多く時間と手間がかかります。
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電源ユニットごと交換する方が賢明です。同等の製品を探します。
同型の「WIN+3」は品薄のようです。15000円ほどします。
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似たような製品で「hec WIN+3s 700W」があります。「WIN
+3」の半額程度の価格です。互換性があれば良いのですが。
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守谷工房様
お問い合わせいただき、誠にありがとうございます。
Genkibuyサポートセンターでございます。
お問い合わせいただきました
「HEC WIN+ POWER 3s(700W)」と「HEC WIN+POWER 3(700W)」
のコネクタにつきまして、基本的には同じ仕様となっておりますが、
「HEC WIN+ POWER 3s(700W)」では一部のコネクタの数の変更が行われて
います。
主要な変更点としまして「HEC WIN+ POWER 3s(700W)」では
・ペリフェラルコネクターがx4→x3に変更
・PCI-Expressコネクターがすべて「6+2ピン」に変更
となっております。
詳しくは代理店製品ページをご確認ください。
■WIN+ POWER 3s製品ページ
http://www.milestone-net.co.jp/product/hec/power_supply/win+power3s.html
■HEC WIN+POWER 3製品ページ
http://www.milestone-net.co.jp/product/hec/power_supply/win+power3.html
※ページ内の「スペック」タブをクリックいただくと詳細なコネクタ数が確認い
ただけます。
ご参考になりましたら幸いでございます。 よろしくお願い申し上げます。
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取り扱いのあるPCショップに、両者の互換性を問い合わせてみました。
その日のうちに返信があり、上のような丁寧な回答を得ることができました。
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「WIN+3」(元の電源ユニット)のケーブル・コネクタ一覧です。
このレベルの電源ユニットになると、すごいコネクタ数です。
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ケーブル・コネクタの図式説明です。非常に
分かりやすく、コネクタ過不足の確認が簡単です。
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「WIN+3s」(後継機種の電源ユニット)のケーブル・コネクタ一覧
です。旧型「WIN+3」に比べて、若干整理統合されています。
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「WIN+3s」(後継機種の電源ユニット)のケーブル・コネクタの
図式説明です。結論は、互換性に何ら問題はありません。
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PCショップからの回答通り、基本的に同じ仕様でした。残念ながら
いざ発注時に、半額近い価格での在庫はありませんでした。学校では
編集作業が中断しているので、発注を先延ばしするわけにはいきません。
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ボックスの裏面にコネクタ一覧と入出力仕様が印刷されています。このビデオ編集用
PCは、グラボ1枚とストレージ2台しか搭載されていないので・・、ほとんど余ります。
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内部クリーニング、ケーブルの配線し直し、一部誤配線の
修正を終え、新しい電源ユニットのもと電源を入れます。
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HDDのブートセクターが読み込まれOSが起動します。
Windows7 Home ・・だったのですね。
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HDDの時代は終わった感が漂います。SSDを
搭載したタブレットの方がよほど速く起動します。
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ログインの画面まで辿り着きました。ここまで
来れば、他に問題はまず考えられないでしょう。
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念のためパスワード不要の「Guest」アカウントでログインさせて
もらい、HDD内のビデオファイルを読み出せることを確認しました。
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