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玄関屋根の補修(2017.11.27~29)


市内の戸建住宅で玄関屋根の補修に挑みます。夏の盛りにご依頼いただいたのが、
猛暑を避け台風を避け業務をやり繰りしているうち、こんな時期になってしまいました。
限られた面積ですが、上塗りの劣化が進みトタン板の表面全体に錆が広がっています。

 

この屋根は、トタン板の再塗装以外に
より深刻な問題を抱えています。

 

なぜか右側支柱の高さが不足し、
屋根が明らかに傾いています。

 

軒に水準器を当てると、右側に
傾いていることが確認できます。

 

支柱の基礎部分で高さ調整用でもある鉄丸棒が、
腐食によりコンクリートの土台から離れています。
 

腐食により基礎の鉄丸棒が折れ、さらに年月を経て長さ(高さ)が短くなって
いったようです。雨樋はこの通り、排水溝の反対側に雨水が溜まっています。

 

まず支柱の高さを修正します。鉄丸棒を交換
することは困難なので、塩ビ管を代用します。

 

100mm径のジョイントは肉厚があり丈夫
です。バンドソーで縦方向に2分割します。

 

ひと回り系の大きい塩ビ管を用意します。ホームセンターで
内径がジョイントの外径とほぼ同じであることを確認済みです。

 

ジョイントと同じ長さに切り出し、
同じように縦に2分割します。

 

縦方向に2分割するのは、基礎部分に
嵌め込む(通す)方法がないからです。

 

2分割しておくことで、左右外側から
合体させ取り付けることが出来ます。

 

ジョイントによるインナーと塩ビ管によるアウターを重ねることで、屋根の
重力に耐え得る強度を確保します。また、半円同士の接合部を互いに
90度ずらして接着し、接合部に応力が加わり分離することを防止します。

 

ジャッキを使い屋根の傾きを修正します。
支柱と平行に2m弱の支え材をいれます。

 

支え材を介して下がっている側の
屋根を持ち上げていきます。

 

面積も小さくトタン葺きの屋根ですが、相当の
重量があり、建屋本体に強く固定されています。

 

支柱の基礎部分が浮き上がってきました。
軒が完全に水平になるまで持ち上げます。

 

水準器を当てながらジャッキを微妙に調整
します。ほぼ水平状態に到達したようです。

 

雨樋は排水溝に向かい傾斜を付けて取り付け
られています。溜まっていた雨水が流れ出ました。

 

支柱の構造は、鉄丸棒の上に鉄管、その上に磨き柱が取り
付けられています。鉄管の内側に空間があるので採寸します。

 

鉄管下部の地上高に空間部分の高さを加え、
塩ビ管の仕上げ高さを割り出します。

 

インナー・アウター4個の部品に正確に高さをけがきます。
現場現物合わせするつもりで、長めに加工してあります。

 

工房ならばスライドソーで一瞬で切断でき
ますが、現場なので塩ビ用鋸を使用します。

 

この塩ビ管専用鋸、初めて現場に持ち出しますが、
非常に切れ味が良く、手作業でも正確に切断できます。

 

基礎部分の鉄丸棒を挟み、分割された
塩ビ管を接着剤で左右から合体させます。

 

インナーの表面にも接着剤を塗り、接合部位置を
90度ずらしてアウターを被せ合体させます。

 

接着剤が固化するまでガムテープで
補強し、ひと晩放置することにします。

 

作業2日目から、トタン板表面の再塗装作業に入ります。上塗りの劣化が
進み、広範囲に錆が浮き出ているので、サンディングが不可欠です。

 

電動のサンダーを用意します。
とても手作業では対応できません。

 

研磨パッドは、錆落とし専用の化繊を
スポンジ状に加工したものを使用します。

 

40分ほどでサンディング作業終了です。電源コードを
引きながらで、写真を撮る余裕がありませんでした。

 

続いて下塗り作業に入ります。油性の錆止めを使用
します。近年の製品は性能が向上し頼りになります。

 

蚊取り線香の空き缶がとても便利です。
吊り下げ紐も付いており作業が捗ります。

 

原液状態で使うか、もし刷毛運びが
悪ければ若干のシンナーを入れます。

 

錆を抑え付け塗装膜の下支えが役割なので、
塗膜を厚めに、塗り残しなく丁寧に塗り付けます。

 

天気が良くて気温も高く、また油性塗料なので
間もなく乾燥してきます。が、ひと晩置くことにします。

 

長く時間を置くことで、乾燥するだけでなく塗装膜が
安定してきます。3日目は上塗りを行います。

 

ご依頼主のご希望で、塗装色は以前と同じ銀色
です。十分に攪拌しメタリック材を母材に混合します。

 

塗料が良く伸びて作業が順調に進みます。
最近の塗料製品の性能向上を実感します。

 

手作業による刷毛塗りで、これだけの光沢が得られ
ます。トタンの重なり部分にも丁寧に塗料を入れます。

 

吹き付け塗装時のような周囲の養生や
マスキングは特に必要ありません。

 

脚立を架け替え、左側けらばの周囲を塗ります。
トタン板が巧みに折り曲げ加工されています。

 

その奥側に降りていく小屋根も仕上げます。壁面との
境界(コーキング)には塗料を乗せないようにします。

 

この日も天気が良く、日中気温が上昇したため、作業が終了し道具を片付ける頃には
塗装膜がほぼ乾いてしまいました。乾燥後の塗膜状態まで確認することが出来ます。

 

脚立から降りると、屋根全体を平面的に眺めることが出来ません。家屋から離れて地上高から
見上げるしかありません。しかし、浮き出た錆が一掃され輝きを取り戻した屋根は綺麗なものです。

 

実を言うと、作業中に一度脚立から落下し、脛を思いきり打撲して未だに傷が痛みます。
ですが、それをはるかに上回る激痛が、脚立を繰り返し昇り降りしたことによる筋肉痛
です。塗装業者さんや建築業の方々の驚異的な身のこなしに、尊敬の念を抱きます。

 
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