守谷工房のリペア2へ                守谷工房Topへ

SONY製TCM-100B 昭和の名品復活す(2018.4.2)


遠く九州からのご依頼です。数年前から回転ムラが出たり回転が止まったりを
繰り返し、ついに全く回転しなくなりました。家電量販店に修理の相談をしたところ
SONYに問い合わせてくれたそうで、「古いものなので受け付けできない」との回答。

 

SONY製、カセットコーダーTCM-100B。
昭和53年発売、40年前の製品です。

 

取扱説明書ダウンロードページにこの機種は収録
されていません。こちらのサイトに概要があります。

 

丸みを排除しエッジを効かせたスタイリッシュな
外装デザインは、今日でも十分通用しそうです。

 

それもそのはず、当時1978年の通産省(経済
産業省)グッドデザイン賞を受賞しています。

  

カセットテープ装填部のカバーは
プレート1枚のみ、精巧な印象です。

 

間もなく登場するウォークマン用の基本
メカニズムがほぼ出来上がっています。

 

感心してばかりいないで、故障の
修理にかからなければなりません。

 

乾電池カバーを外し、外装カバーを
固定している精密ネジを緩めます。

 

キャリングストラップを固定する長めの
ネジは本体側面の固定も兼ねています。

 

乾電池ホルダーの内部にも固定ネジがあります。
テープカバーの開閉ダンパーが内蔵されています。

 

操作ボタン側のパネル
カバーが外れてきます。

 

パネルカバー内側に録音マイクが取り付けられて
います。配線が片方切れているので後で修理します。

 

テープカウンターが付いている
側のパネルカバーを外します。

 

側面のパネルカバーに保持されていた
背面側カバーが外れ、内部が露わになります。

 

40年前の時点で、狭い空間によくぞここまで詰め込んだものです。合理的な
機構と最小限の部品により必要な機能を実現する、考え抜かれたメカニズム
です。右側半分を占めるプリント基板には、昭和の頃のSONYらしさが残ります。

 
 
回転ムラおよび回転しない原因はすぐに
判明しました。このゴムベルトです。

 
  
電源を入れるとモーターは問題なく快調に回転します。
このモーターもウォークマンに搭載されていました。

 

フライホイールおよびキャプスタン軸に回転を伝える
メインのベルトです。伸びた後で固化し歪んでいます。

 

これはベルトの伸びではなくたるみです。
モーター軸のプーリーが空転してしまいます。

 

ともあれゴムベルトを交換しなければ
なりません。駆動系から取り外します。

 

フライホイールシャフトを固定している
金具に阻まれてベルトが抜けません。

 

固定金具を取り外しにかかりますが、
固定ネジがプリント基板にも跨っています。

 

細いビニルコードによる配線束が邪魔に
なります。束を固定している爪を起こします。

 

固定金具がどのようにネジ止めされて
いるのか、まだ把握できていません。

 

フライホイールの同軸プーリー経由で駆動される、
巻き取りリール系のベルトです。劣化しています。

 

2本のゴムベルトいずれも、固定金具の
内側を通っているので抜けてきません。

 

プリント基板を持ち上げてみると、その
下に金具の固定ネジが隠れています。

 

プリント基板を避けながらぎりぎりで
精密ドライバーがネジにかかります。

 

フライホイールシャフトの固定金具がようやく
外れました。精密に打ち抜かれた部品です。
 

2本の駆動用ゴムベルトが外れました。40年間もの経年変化に
より10%以上長く伸びた状態で固化し、ひどく変形しています。

 

ゴムベルトのストックの中から、元の
長さに見合ったものを選び出します。

 

ほぼ同じ長さのものが見つかりましたが、
僅かに太いようです。問題ないでしょう。

 

固定金具が外れた状態で
ゴムベルトを掛けていきます。

 

フライホイール駆動系のゴムベルトを
モーター軸のプーリーに掛けます。

 

リール巻取り系のベルトも掛けてから
固定金具を元の位置に取り付けます。

 

この時点で電源を接続し試運転してみます。
何の問題もなかったかのように快調に回転します。

 

毎度使用している音楽テープを再生してみます。僅かに音が揺れますが(ワウフラッター)、
デジタル音源を聞きなれているせいでしょう、当時の再生音はこのぐらいのものです。

 

内蔵マイクの配線が切れた
ままでは録音が出来ません。

 

ビニル被覆を1mmほど取り除き、
芯線を予め半田処理しておきます。

 

細いビニルコードは一瞬で半田付けしないと
ビニル被覆が溶けて後退してしまいます。

 

接続部をビニルテープで
絶縁しておきます。

 

本体カバーを元通りに組み上げます。作業しているとスタイリッシュな
SONYデザインの良さが、手の感触として直接伝わってきます。

 

とても大事に使われてきたのでしょう、本体に傷や汚れが見当たりません。
全体を簡単にクリーニングして修理完了です。グッドデザイン賞に輝いた、
昭和の日本が生み出した名品です。ご依頼主様の愛着が良く分かります。
どうぞ大切になさって下さい・・、お宝鑑定団みたいな終わり方かな。

 
守谷工房のリペア2へ                守谷工房Topへ