遠く九州からのご依頼です。数年前から回転ムラが出たり回転が止まったりを
繰り返し、ついに全く回転しなくなりました。家電量販店に修理の相談をしたところ
SONYに問い合わせてくれたそうで、「古いものなので受け付けできない」との回答。
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SONY製、カセットコーダーTCM-100B。
昭和53年発売、40年前の製品です。
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取扱説明書ダウンロードページにこの機種は収録
されていません。こちらのサイトに概要があります。
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丸みを排除しエッジを効かせたスタイリッシュな
外装デザインは、今日でも十分通用しそうです。
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それもそのはず、当時1978年の通産省(経済
産業省)グッドデザイン賞を受賞しています。
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カセットテープ装填部のカバーは
プレート1枚のみ、精巧な印象です。
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間もなく登場するウォークマン用の基本
メカニズムがほぼ出来上がっています。
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感心してばかりいないで、故障の
修理にかからなければなりません。
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乾電池カバーを外し、外装カバーを
固定している精密ネジを緩めます。
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キャリングストラップを固定する長めの
ネジは本体側面の固定も兼ねています。
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乾電池ホルダーの内部にも固定ネジがあります。
テープカバーの開閉ダンパーが内蔵されています。
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操作ボタン側のパネル
カバーが外れてきます。
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パネルカバー内側に録音マイクが取り付けられて
います。配線が片方切れているので後で修理します。
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テープカウンターが付いている
側のパネルカバーを外します。
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側面のパネルカバーに保持されていた
背面側カバーが外れ、内部が露わになります。
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40年前の時点で、狭い空間によくぞここまで詰め込んだものです。合理的な
機構と最小限の部品により必要な機能を実現する、考え抜かれたメカニズム
です。右側半分を占めるプリント基板には、昭和の頃のSONYらしさが残ります。
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回転ムラおよび回転しない原因はすぐに
判明しました。このゴムベルトです。
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電源を入れるとモーターは問題なく快調に回転します。
このモーターもウォークマンに搭載されていました。
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フライホイールおよびキャプスタン軸に回転を伝える
メインのベルトです。伸びた後で固化し歪んでいます。
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これはベルトの伸びではなくたるみです。
モーター軸のプーリーが空転してしまいます。
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ともあれゴムベルトを交換しなければ
なりません。駆動系から取り外します。
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フライホイールシャフトを固定している
金具に阻まれてベルトが抜けません。
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固定金具を取り外しにかかりますが、
固定ネジがプリント基板にも跨っています。
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細いビニルコードによる配線束が邪魔に
なります。束を固定している爪を起こします。
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固定金具がどのようにネジ止めされて
いるのか、まだ把握できていません。
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フライホイールの同軸プーリー経由で駆動される、
巻き取りリール系のベルトです。劣化しています。
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2本のゴムベルトいずれも、固定金具の
内側を通っているので抜けてきません。
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プリント基板を持ち上げてみると、その
下に金具の固定ネジが隠れています。
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プリント基板を避けながらぎりぎりで
精密ドライバーがネジにかかります。
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フライホイールシャフトの固定金具がようやく
外れました。精密に打ち抜かれた部品です。
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2本の駆動用ゴムベルトが外れました。40年間もの経年変化に
より10%以上長く伸びた状態で固化し、ひどく変形しています。
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ゴムベルトのストックの中から、元の
長さに見合ったものを選び出します。
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ほぼ同じ長さのものが見つかりましたが、
僅かに太いようです。問題ないでしょう。
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固定金具が外れた状態で
ゴムベルトを掛けていきます。
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フライホイール駆動系のゴムベルトを
モーター軸のプーリーに掛けます。
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リール巻取り系のベルトも掛けてから
固定金具を元の位置に取り付けます。
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この時点で電源を接続し試運転してみます。
何の問題もなかったかのように快調に回転します。
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毎度使用している音楽テープを再生してみます。僅かに音が揺れますが(ワウフラッター)、
デジタル音源を聞きなれているせいでしょう、当時の再生音はこのぐらいのものです。
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内蔵マイクの配線が切れた
ままでは録音が出来ません。
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ビニル被覆を1mmほど取り除き、
芯線を予め半田処理しておきます。
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細いビニルコードは一瞬で半田付けしないと
ビニル被覆が溶けて後退してしまいます。
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接続部をビニルテープで
絶縁しておきます。
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本体カバーを元通りに組み上げます。作業しているとスタイリッシュな
SONYデザインの良さが、手の感触として直接伝わってきます。
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とても大事に使われてきたのでしょう、本体に傷や汚れが見当たりません。
全体を簡単にクリーニングして修理完了です。グッドデザイン賞に輝いた、
昭和の日本が生み出した名品です。ご依頼主様の愛着が良く分かります。
どうぞ大切になさって下さい・・、お宝鑑定団みたいな終わり方かな。
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