守谷工房のリペア2へ                守谷工房Topへ

会議用テーブル修理(2018.1.25)


以前にもご依頼をいただいた都内にある教育施設です。会議用テーブルの
具合が悪いとのことです。非常勤講師を務めている大学の近くなので、授業の
帰りに立ち寄ります。施設も設備も大変立派で、テーブルも安物ではありません。
 

不具合のひとつは、テーブル
面を使用状態(水平)にすると、

 

水平状態でロックがかからず、テーブル
面に手をかけると跳ね上がってしまいます。

 

そうかと思うと、跳ね上がった状態でもロックが
かからず、テーブル面が勝手に倒れてきます。

 

使用時・収納時いずれもロックがかからず、
従ってロックの解除レバーは意味をなしません。

 

当てずっぽうに修理の真似事はできません。ロック機構は
左脚の上部、テーブル面の直下に組み込まれています。

 

ロック機構を正確に把握します。樹脂製化粧
カバーを取り外します。元々外れかけていました。

  

撮影してきた写真と記憶を頼りに機構を再現してみました。少ない部品で簡単な機構で
確実に動作し安価、耐久性と安全性に富む・・、近代工業製品の粋を見る気がします。

 

テーブル面と、脚に取り付けられたステーの間に、樹脂製のボックス型
スライダーが入れられています。スライダーの中に組み込まれたピンに、
ステーに成形されたカギ部分がかかることでロックされる仕組みです。

 

テーブル使用時(水平時)は、スライダがスプリングの
張力により左側(後方)に引き戻されてロックされます。

 

レバーを操作するとスライダが右側(前方)に引かれ、
カギ部分からピンが外れてロックが解除されます。

 

テーブル面が跳ね上がると、やはりスライダが
スプリングにより下方に引き下げられロックされます。

 

レバーを操作するとスライダが上方に引き上げられて
ロックが解除され、テーブル面を倒すことが出来ます。

 

ロックがかからない→ロック機構の作動が阻害されている→スライダの動きが悪い、
と考えたところで足元に目をやると、そこに不具合の原因がありました。左脚の取り
付け角度がおかしなことになっています。明らかに内側に向かって変形しています。

 

変形に連動して脚に固定されているステーの位置も狂い、スライダーを
強く押さえ付けています。さて、現場には変形を修正するほどの工具が
ありません。かなり乱暴ではありますが、このような方法で変形を戻します。

 

うまく行きました、見た目には変形は分かりません。脚の
修正と同時にステーの位置もほぼ元に戻っています。

 

ステーの位置を、テーブル側金具の
できるだけ中央に来るよう調整します。

 

スライダーは自由に動くようになりましたが、まだ自動的に
ロック位置に戻りません。スプリングを取り外してみると、

 

シャフトにかかる側のカールが伸び、外れかけて
います。これではスプリングが機能しません。

 

スライダが押さえ付けられたままレバーを強く引いたことが
原因でしょう。シャフトにかかるようカールを戻しました。

 

厄介なことに、スプリングの取り付け場所はボックス型
スライダーの奥まったところです。直視出来ません。

 

ラジオペンチの先でスプリングを掴み、
手探りでカール部をシャフトにかけます。

 

ロック機構が機能するようになりました。
テーブル面は跳ね上がりません。

 

レバーを操作するとロックが解除され
テーブル面が起き上がっていきます。

 

跳ね上がり切ったところで
再びロック機構が働きます。

 
 
レバーの操作でテーブル面を倒すことが
出来ます。非常にスムーズです。

 

それにしてもなぜ左脚が変形したのでしょう。職員の方と話しをしていて
分かりました。テーブルを移動させる際に、エレベータ内で縦方向に立てた
そうです。片持ち梁状態の脚にテーブル全体の重量が加わったためです。

 

上質の会議用テーブルはデザインも重視される結果、脚周りに最低限の
補強材しか配置されていません。脚部の変形がロック機構の不具合を
引き起こす可能性まで、設計段階で読み取ることは・・難しいでしょう。

 
守谷工房のリペア2へ                守谷工房Topへ