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引き出物の置時計止まる(2017.10.23)


自宅で使用している、一見華やかそうで実は安物の置時計です。その昔、職場の同僚の
結婚式に出席して引き出物でいただいてきたものです。かれこれ30年以上、故障もせず
電池切れ以外、非常に正確に動いてきました。今回はどうやら電池切れではありません。

 

桂由美の意匠のようで、ぎっちり金メッキ
された樹脂製、〇ンキで売られているような・・
 

結婚式の記念品とあって、そう
簡単に捨てるわけにも行きません。
 

派手な本体と相まって、ムーブメントは
クォーツユニットの大量生産品です。

 

正確に時を刻む装置としては素晴らしいのですが、
およそ置時計の価値を低下させたことも事実です。

 

先に文字盤側から3針を
取り外しておきます。

 

ガラスが入っていないためか、
文字盤が少し汚れています。

 

ムーブメントを本体に固定して
いるネジ2本を緩めます。

 

本体はマンハッタンのビル群をイメージしたワンプレス
成型品で、樹脂メッキはほとんど劣化がありません。

 

ムーブメントを取り外しました。可能性は低いのですが、
チップやクリスタルに不具合があると即刻スクラップです。
 

時刻合わせ用のツマミを引き抜きます。
アラーム機能がないので構造は簡単です。

 

しかし、振り子が(装飾的に)付いており、
次に振り子駆動関係の部品を外します。

 

前後2個の三角形の頂点で、極力
小さな抵抗で振り子を支える構造です。

 

ほとんどのムーブメントが、上下2ピースの本体を
周囲4か所程度の爪で組み合わせています。

 

歯車シャフトの軸受も本体壁面に
精密に成型加工されています。

 

正確に時を刻む回路はこれだけです。中央の6260Cは
時計専用の分周ICでしょう(データは見つかりません)。

 

裏側のプリント面です。3針駆動用、振り子
駆動用のコイルも基板上にまとめられています。

 

チップを含めわずか数個の電子部品が、経年により劣化・故障する可能性はほとんど
ありません。考えられるのは部品の金属部分、基板の半田面の腐食ぐらいでしょう。

 

半田付け個所を入念に点検します。乾電池ホルダーの
金属板を固定した部分に、わずかな変色が見られます。

 

長年かかりフラックス剤が変質したもので、
導通を阻害しているかも知れません。

 

修理と呼べるような修理ではありませんが、いったん古い半田を
除去し新たに半田付けし直します。半田の跡が綺麗になりました。

 

駆動コイルの中でマグネット付き歯車が回り始め
ました。半田付けの劣化が原因・・ということです。

 

腑に落ちない修理でしたが・・・
修理完了で元通り組み上げます。

 

振り子が左右に揺れ、3針とも正常に動いています。時計は長く時を刻み続けますが、
時計を下さった方とは久しく音信が途絶えています。お元気で過ごされているでしょうか。

 

おそらく5・6個の時計用クォーツムーブメントが、一般の家庭内で使われているでしょう。
ホームセンターでは汎用のムーブメントがユニットとして安価で販売されています。しかし、
これだけ多くのムーブメント間で、振り子、アラーム、秒針の有無などほとんど互換性が
ないのが現実です。ムーブメントの修理に失敗すると時計自体が再生できなくなります。

 
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