梅雨明けの前後からエアコン関係のご依頼が続いています。英会話の先生を
しておられるイギリス人の方から、当初はこのエアコンを修理して欲しいとの
ご用命でした。10数年が経過するコロナ製で、冷房も暖房も機能しません。
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2階以上に設置されている場合、高所作業には
危険が伴うため原則的にお断りしているのですが、
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冷媒ガスの不足が原因で、ガスを追加するだけで
済むのであれば、高所作業にはなりません。
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配管のどこかにリークがあるのでしょうか。
室内機の電源を入れ、室外機を観察します。
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しばらく待っても室外機が作動し始めません。冷媒ガス
以外に制御基板やコンプレッサーの故障が考えられます。
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基板やコンプレッサーを交換するには新品購入と
同じくらい費用がかかります。修理は諦めます。
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元のエアコンを取り外して処分します。コンプレッサーが
動かないのでポンプダウンによる冷媒回収が出来ません。
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しかし、少しずつバルブを開放してみると配管内のガスは
ほんの僅かでした。回収機を用意するまでもありません。
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修理不能の場合はこちらのエアコンを取り付けるよう指示
されていました。シャープ製プラズマクラスター内蔵型です。
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以前のお住まいで利用されていたそうで、ご自身で取り外されたとのことです。
室内機・室外機は入れ替えますが、高所作業のこともあり配管は既存のものを
再利用させてもらいます(リークを防ぐには配管も新しく交換すべきです)。比較的
新しい製品でまだ綺麗ですが、取り外す時にフレアナット部を分離するのではなく、
何と配管を丸ごと途中で切断しています。これを修復するのは容易ではありません。
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えらい仕事を引き受けてしまったと思いつつも
作業を先に進めます。室内機を取り外します。
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配管類は本体右端からの取り出しです。
ここで、さらに嫌な予感が漂います。
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2階の窓から配管カバーを確認します。フレアナット
接続部は、室外に出た配管カバー内にあります。
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本来ならばお断りする高所作業になります。窓から
身を半分乗り出しての作業(これが一番危険)です。
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取り外す時はまだしも、取り付ける際は身を
乗り出しての作業は完全に無理です。
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取りあえず既存エアコンの取り外し作業は終了
です。配管の両端(開口部)を養生しておきます。
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入れ替える新しいエアコンは、フレアナット部が切り落とされています。
が、取り外した旧エアコンのフレアナット部を再利用(移植)する方法が
あります。見通しの暗い中、問題のひとつに解決法が見えてきました。
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フレアナット部を移植する作業は現場では無理
です。室内機を工房に持ち帰って作業します。
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まず、金切り鋸でギザギザに切られた
配管をパイプカッターで切断し直します。
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切り口が綺麗に揃います。内部に異物が
入り込んでいないか、祈るしかありません。
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次に、旧エアコンのフレアナット部を
フレア管に余裕を持たせて切り取ります。
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切り屑が入り込まないよう
下向きのまま作業します。
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フレア管の突き出し長さ(フレアナット部の位置)を
決めるため、切り離した元の位置を確認します。
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新しいエアコンにおいて、切り離した元の
位置あたりにフレア管の端を合わせます。
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連結させるべき位置にマークします。再利用する配管位置は
変更できないので、正確に長さを決める必要があります。
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マークした位置にパイプ
カッターを当てます。
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グリップを少しずつ締め込み
ながらブレードを回転させます。
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金切り鋸が鬱陶しくなる
ほど見事に切れます。
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液側(2分)・ガス側(3分)とも
マーク位置で切断します。
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銅管同士の接続はもちろんロウ付けです。イモ付けにはできないので接続用
ソケットを使用します。2分用は6.35mm、3分用は9.52mmにそれぞれ
内径が加工されているので、2分管・3分管とも丁度嵌まり込むサイズです。
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僅かに余裕が残されており、溶けたロウ
(半田)が隙間に入り込むことが出来ます。
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トーチの熱が内部に伝わらないよう
途中部分を濡れ雑巾で覆います。
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配管表面は酸化が進んでいるので
フラックスを少量塗り付けます。
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トーチに点火し配管表面
(接合部)を十分に加熱します。
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十分加熱してからいったんトーチを離し、
表面に半田を押し当てて溶かし付けます。
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再びトーチで加熱しながら
ソケットを嵌め込みます。
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液側(2分)・ガス側(3分)とも
先にソケットを取り付けます。
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次にフレアナット部を接続します。
表面を加熱し半田を溶かし付けます。
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加熱しながらソケットに嵌め込みます。接続部に半田を
溶かし付けると、毛管現象で隙間に入り込んでいきます。
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ロウ付け技能っぽい作業で、接続部が
完全に密閉されたのか不安が残ります。
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配管を組み付けた後で真空ポンプを接続し、真空圧が維持されるか確認するしか
ありません。また、配管内に半田のゴミやフラックスが残っている可能性も・・否定
出来ません(厳密には)。しかし、明日に予定している高所作業での配管接続、その
無事を祈る方が先決問題です。同じく切り落とされていた排水管も修復しました。
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作業2日目です。新しい室外機を設置しました。
取り外し時にポンプダウンを行っていないそうです。
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そうすると、配管内残留分の冷媒ガスが
失われていて不足することが心配です。
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室内機の取り付けを進めます。配管の接続は、
外壁に長い梯子をかけて作業しました(恐怖)。
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配管取り出し部の収まりも良好です。
フレアナット部の位置は見込み通りでした。
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全ての配管接続を終え、ポンプを接続
して配管内の真空引きを行います。
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ポンプを停止し30分程度放置します。真空圧が変化しない
ことを確認します。ロウ付け部分も含めて問題ないようです。
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液側・ガス側ともバルブを開放し
配管内に冷媒ガスを送り込みます。
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猛暑の中2日間に渡る作業の結果が出ます。エアコンの
電源を入れます。エラーコードが出なければ良いのですが。
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久しぶりに動作を再開したせいか、しばらく
間があって冷風が吹き出てきました。
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十分冷えてはいますが、ガツンという冷たさでは
ありません。やはり冷媒ガスの不足のせいでしょうか。
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ご依頼主にしばらく様子をみていただくことにします。かなり念入りにロウ付けしましたし、
フレア部にはリーク防止用のシール材を十分に入れました。冷暖房能力に物足りなさを
感じたり消費電力が急に増加するようであれば、冷媒ガスの不足が深刻だということです。
その際はいつでも補充に伺います。「フレアナット部の修復」+「高所作業」+「猛暑」に
「英語でのやり取り」が加わり、台風前のなかなかハードな仕事になりました。
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