「SONY」の文字が消えかけています。レトロ感と可愛らしさが漂う電池式電気
時計です。ラジオが内蔵されていますが、AM放送が受信できないそうです。
長く愛用されてきただけに、出来ることなら元通りにして欲しいとのご要望です。
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SONY製ICF-A7、1990年発売のAM・FMラジオ内蔵
クオーツ式目覚まし時計。サービスマニュアルがあります。
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右側面後方にラジオ関係の操作ツマミ
(選局、AM・FM切替、音量)があります。
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動作確認のため、同梱して
下さった乾電池を入れます。
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乾電池ホルダー部のカバー内に
アンテナ線(FM用)が仕舞われています。
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取りあえずラジオを聴くには、本体上面のON・OFF
ボタンを操作します。中央はダイヤルスケールです。
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AM受信に切り替えて選局ツマミを回すも、かすかに
ノイズが聞こえるだけで放送は受信できません。
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AMラジオの受信回路に
何か問題があるはずです。
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背面カバーの固定ネジを緩め、
時刻調整ツマミを抜きます。
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背面カバーを開けると、手前にラジオ受信回路が見えます。小型トランジスタ
ラジオのような緻密さはないものの、SONYらしい上手にまとめられた基板です。
今にしてみれば親切に設計された組み立てキットのような印象を受けます。
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回路基板を固定している
ネジは1本だけです。
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バリコンに連動する選局ツマミも
引き抜く必要があります。
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時計基板からの信号を
接続するコネクタです。
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回路基板を引き出します。AMを
受信できない原因を探ります。
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とは言いましても、これまでの修理経験からして
原因のほとんどはバーアンテナ配線の断線です。
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バーアンテナの巻き線が引き出され
基板に直接半田付けされています。
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引き出しに余裕がないと、ラジオに衝撃が
加わった際に簡単に断線するようです。
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今回は断線を発見できません・・が、
ピンと基板の半田付け部分に触れると、
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時おり放送が受信出来ます。半田クラックも
見当たらないので、一度半田を取り除いてみます。
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4本のピンが抜けバーアンテナが基板から
外れます。巻き線の導通は問題ありません。
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原因が分かりました。バーアンテナのピンを
固定している基板上のランドが剥離しています。
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半田ではなくパターン(銅箔)にクラックが入って
います。ランドに続くパターンのレジストを剥がします。
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バーアンテナの固定ピンを差し込み、
問題のない3本を先に半田付けします。
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ランドが剥離した1本は、レジストを
剥がした部分までピンを折り曲げます。
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新たに露出させた銅箔にピンを半田付けします。パターン(銅箔)に
クラックが生じる原因は何か、残留フラックスによる腐食でしょうか?
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AM放送が受信できない問題は解決です。
回路基板を収め、本体を元通り組み上げます。
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バーアンテナ配線周りのトラブル・・非常に
多いです。背面カバーを取り付けます。
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ご依頼主がご自身で修理されようとして
何か具合を悪くされたと聴いておりますが、
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アラーム時刻をセットする文字盤手前のリングが回らなく
なっています。接着剤のようなものが残っています。
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何度試しても周囲の溝にリングが嵌まりません。
少し浮いた状態で、固定用ツメと噛み合いません。
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原因はこの位置決め用のスペーサーです。元から
付いている部品なのに、明らかに邪魔をしています。
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樹脂成型された本体カバーが長い年月で変形
したためでしょうか。思い切って取り除きます。
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取り付け穴が残りますが、リングに
隠れて外側からは見えません。
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「リング」 → 「内側の円盤」 → 「時刻設定軸」の順に
回転が伝えられますが、リングと円盤が噛み合いません。
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確実に回転が伝わるようリングと
円盤を接着剤で固定します。
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スペーサーを取り除いたので
非常にスムーズに回転します。
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長針・短針・秒針を取り付け、アラーム
設定と時刻表示を正確に一致させます。
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外側の透明カバーをコンパウンドで
磨きます。表裏ともかなり曇っています。
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輝きを取り戻したカバーを本体に嵌め込みます。内側の
固定ツメが折れているので、少量の接着剤を併用します。
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外側の黒色リングを回すと、内側のリング・円盤・時刻設定軸へと連動して
アラーム時刻を設定することが出来ます。アンバー色の円盤上に付けられた
青色のマークが設定時刻を示しています。時計とラジオと目覚ましに加えて、
カメラもネットも財布も何もかも一つになったスマホが、どこか疎ましい気が・・。
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