一連のBOSE製品が次々と舞い込み、既に10機種ほど修理してきました。
おかげでBOSE製品の進化を辿ることができ、非常に興味深いものです。
以前からその存在は知っていましたが、ついにAWMSのシリーズが工房に
やってきました。AWMSはAccustic Wave Music Systemの略です。
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とにかくこの筐体のデカさです。スピーカーシステムには、「ウェーブガイドスピーカー
テクノロジー」とやらが採用されており、全長203cmにおよぶ「ウェーブガイド(音道)」が、
僅かな空気の振動を大きな音エネルギーに変換することで重低音を再生する・・そうです。
また、「アクティブ・エレクトロニクス・イコライゼーション」が小音量時の低域を補正し、
バランスの取れた豊かなサウンドを再生するとのことですが、これはいわゆるラウドネス
回路の強力版のようなものです。もちろん、音質はラウドネス回路の比ではありません。
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この大きさで6.5kgだそうで、女性でも
持ち運べる軽さ(?)を売りにしています。
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AWMSⅡということはAWMSⅠがあるはずで、
単にAWMSという機種が実際に存在します。
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AWMSⅡはAM・FMラジオにCDプレーヤーが組み
合わされた機種で、WMSシリーズと歩調を揃えます。
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ともあれ、実際にCDをかけてみます。
CDの再生不具合が修理の内容です。
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上面パネル右側にCD再生関係の操作ボタンが並び
ます。リードインからTOCを読み出そうとしていますが・・
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読み出しに失敗したか、読み出せなかったか、
「NO DISK」と表示されCDを再生できません。
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おそらく・・ピックアップの劣化が原因でしょう。本体の
分解にかかります。左右側面に固定ネジがあります。
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背面側上部にも固定ネジが2本あります。
この時点で組み立て構造はまだ不明です。
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4本の固定ネジを緩めたところで、本体上部
3分の1ほどが分離できることに気付きました。
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前面側は水平方向にスライドする
篏合により固定されています。
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分かってしまうと単純・・ではなく、考え抜かれた合理的な構造をしています。
分離した上側3分の1ほどの部分に、メイン基板、2個の中高音用スピーカー、
中高音用アンプ、CDドライブ、操作パネルがひとまとまりになっています。
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下部に内蔵されているであろう電源回路、低音用
アンプとは2本のコネクターで接続されています。
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ケーブルを引き抜くと上部が完全に
分離独立します。作業に集中できます。
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CDドライブは外側カバー(筐体)とメイン基板の間に
組み込まれています。基板を筐体から取り外します。
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筐体まで届いている
数本のネジを緩めます。
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前方はバックル式の金具により
左右2か所で固定されています。
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簡単に外れてきます。非常に
メンテナンスしやすい構造です。
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メイン基板等が固定されたフレームごと表裏を返します。操作パネルに対応するタクト
スイッチが基板上に並んでいます。CDドライブへのアクセスは簡単そのものです。
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軟質ゴム製インシュレーターを介して
フレーム上に置かれているだけです。
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CDドライブの裏側を点検します。見慣れ
ない小基板が1枚取り付けられています。
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小基板を外してピックアップの型式を確認します。
SF-DA23に組み込まれているものと同型です。
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小基板を取り除くと、ユニット全体が
SF-DA23そのものです。
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工房に在庫のユニットが流用できそうですが、
残念ながらディスクの固定方式が異なります。
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ならば、ピックアップ部のみを
移植交換することにします。
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ピックアップの支持構造、シーク用
スクリューシャフトも全く同等です。
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ユニットのスリットにピックアップ
レンズ部がフィットしています。
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しかし、問題が残っています。元の
ピックアップには小基板が付属します。
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SF-DA23との唯一の違いは、ピックアップ
から出るフレキシブルケーブルの形状です。
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ネット情報は、AWMSⅡ用のピックアップはSF-DA23であると解説しています。
形状こそ異なりますが、両者ケーブルのピン数は同じで、SF-DA23のケーブルは
途中で向きを90度変えています。CDドライブの手前にコネクタが出ているので、
こちらの方がケーブルの取り回しが簡単そうです。実際、位置も寸法も合致します。
どうやら、元のピックアップの方が特殊な設計で、ストレートに出ているケーブルを中継
するために小基板が加えられたようです。ピンのアサインが同じであることを祈ります。
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元通りに本体を組み上げ、
動作確認に臨みます。
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カントリー曲が詰まった
工房のテスト用CDです。
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トラック1がシークされました。新品の
ピックアップなのでキャッチが速いです。
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音楽の再生が始まります。
快調そのものです。
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結論としては、元のピックアップは中継用小基板を設けることで、ケーブルの
形状と、もしかするとピンアサインについてもSF-DA23と互換性を持たせて
いたようです(ピンアサインは確認していません)。製造中にSF-DA23の
供給不足があったのか、SF-DA23自体に何か設計変更があったのか。
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フレキシブルケーブルの形状にこだわり、見たことのない特殊なピックアップ
だと思い込んでしまうと、「補修部品が無いので修理不能」としてご依頼主に
お返しするところでした。何とも間抜けなことに、「AWMSⅡ用のピックアップは
SF-DA23」を説明しているWEB記事がどこにあったのか、その後分からなく
なってしまいました。写真入りの解説を、数日前に確かに見たのですが・・。
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