年配の方から、かつて若者の必携品カセットプレーヤーが3台まとめて送られて
きました。長い年月、大切にお使いになってきたのだろうと推察申し上げます。
2台はSONY製ウォークマン、こちらはお聞きしていた不具合状況が再現されず、
修理の必要性は高くないと判断し、ご依頼主に了解いただいてお返ししました。
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1台はCASIO製カセットプレーヤーで、ウォークマンのような
華麗なデザイン性で劣るものの、堅実な印象の製品です。
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G-SHOCKのCASIO製AS-140、既にネット上に製品
情報は見当たりません。オートリバース、重低音再生搭載。
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ご依頼主は、全く動作しないとおっしゃって
います。動作確認のため乾電池を入れます。
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ミュージックテープを入れて再生してみます。確かに音が
出てきません。テープが回っている様子もありません。
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分解して内部を調べることにします。
裏側カバーに固定ネジがあります。
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固定ネジなど不要かと思うほどタイトな
篏合です。ドライバーの先を慎重に入れます。
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ツメの位置が判明したところで、樹脂製
ピックツールで隙間を一挙に開けます。
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内部が現れます。部品の配置にかなり余裕があり
ます。ウォークマンの精緻さとは趣きが異なります。
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裏カバーを取り除き内部を観察できる
状態で、再度動作を確認してみます。
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全く作動する気配もありませんが、電源インジケーターの
LEDが点灯しています。回路に通電はしているようです。
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モーターの端子に回路形を当ててみます。2.3Vほどの電圧が加わっており、
モーターに電力が供給されていることが分かります。モーターの故障が疑われます。
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モーター回転軸に取り付けられている小プーリです。
固着しているようで、回転させることが出来ません。
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モーターを取り出して点検する必要があります。
ゴムベルトを外し、小プーリを抜き取ります。
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ウォークマンのように極端に込み入っているわけでは
ありませんが、構造を見極めながら分解を進めます。
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モーター周辺の小ネジを1本ずつ緩めていき
ます。モーターの固定方法が分かりません。
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回路基板が上に被さっています。予め
取り外しておかなければなりません。
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構成部品の中でモーターのケースが最も大きな金属
部品になります。ノイズ対策のアース接続を外します。
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回路基板と一体化している乾電池
ホルダーのスプリング金具を引き抜きます。
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基板を持ち上げると、実装されている電子部品を
確認できます。何とも簡素で最小限の回路構成です。
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モーターを挟んでいるフレームも浮かせる必要が
あります。テープ駆動ユニット全体を持ち上げます。
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駆動ユニットは、この左右2本のツメで
本体に固定されています。解除します。
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ようやくモーターを取り外すことが出来ました。普通のDCモーターです。
回転しなくなっているので、出来れば新品に交換したいところですが、
補修用部品が手に入るわけがありません。電圧、回転数、本体サイズ、
シャフト径、シャフト長が全て一致する汎用品を探し出すのも大変です。
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モーターの修復を試みます。金属ケースを分解して
修理ところですが、ケースが歪む可能性があります。
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シートを剥すと僅かに開口部があり
ます。ここから潤滑剤を吹き込みます。
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シャフトが固着している原因には、内部で錆の発生、油脂分が経年や熱で変質・固化、
金属ケースの変形(可能性低)などが考えられます。ラジオペンチでシャフトを掴み、
様子を見ながら力をl加えていきます。固着が解消した範囲内を往復させ、吹き込んだ
潤滑剤を馴染ませます。解消範囲を徐々に広げ、やがて全周回転するようにします。
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印象として油脂の固着のようです。潤滑剤と
エアを交互に吹き込み、内部を洗浄します。
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電圧を加えるとプーリが滑らかに回転します。
モーターを元の取り付け位置に戻します。
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モーターを含むテープ駆動
ユニットを本体に嵌め込みます。
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数か所の固定ネジを締め込みます。テープ駆動
ユニットの動作を確認した後で完全に固定します。
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この段階で再度モーターの回転を
確認します。問題ないようです。
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回路基板を元の位置に取り付けます。
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ゴムベルトをかけテープを再生してみます。モーター調速用の
半固定抵抗はあるものの、サーボ回路ではないようです。
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そのためでしょうか、モーターの性能劣化も
加わり長周期で微妙に再生音が揺れます。
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精密に組み立てられているDCモーターなので、間接的な洗浄では新品時の
性能を復活させることは難しいようです。新品の補修部品(同規格のモーター)に
交換すれば、さらに安定した再生音が得られるはずです。しかし、入手はほぼ
不可能でしょう。ご依頼主に事情を説明し、ご了解をいただいてお返しします。
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