懐かしい平成初期のビデオカメラがやって来ました。当時、向かうところ敵無しの
SONYが、矢継ぎ早に投入し続けたハンディカムシリーズの1台です。Hi8規格の
テープが登場し、映像画質が目に見えて向上して行った頃を思い出します。
|
そうは言いましても、まだアナログ信号を磁気テープに記録する方式です。
極薄のテープを駆動し小型の回転ヘッドが信号を記録するには、恐ろしく
細密で複雑なメカニズムを伴います。修理にはそれなりの覚悟が必要です。
|
型番はCCD-TRV80、ヤフオク、メルカリ、ジモティ
あたりでしか中古品も入手できなくなっています。
|
CCD-TRV80PKの取扱説明書が
SONYのWEBサイトに残っています。
|
再生・録画とも出来なくなっている
そうです。まず録再ヘッドを疑います。
|
テープ収納部のカバー取り付けネジを緩め
ます。が、1本が錆びて固着しています。
|
潤滑剤を差し、溝を舐めないように
ドライバーを交換しながら緩めます。
|
SONYハンディカムの精密
世界に足を踏み入れます。
|
アナログ式ビデオのHi8は、それまでのビデオデッキ(VHS・Beta)と基本は
変わりませんが、一挙にヘッドを含めたテープ駆動機構の小型化が図られました。
超小型の回転ヘッドは、円周面に3個の録再ヘッド(ギャップ)を装備しています。
|
ギャップ部は円周表面から僅かに凹んでいるため、
クリーニングテープでは汚れを除去し切れません。
|
アルコールを染み込ませた綿棒で
ギャップ部を繰り返し掃除します。
|
カバーが外れたままテープをセットしてます。
精巧なリンク動作により引き込まれて行きます。
|
本体上部の再生ボタンを操作します。
付属リモコンによる操作も可能です。
|
あっさり映像が出て来ました。ヘッドギャップの汚れによる映像再生不良です。
あまり頻繁にヘッドクリーニングをなさってこなかったのか、もしそうだとすれば
逆にヘッドの摩耗はさほど進んでいない可能性があり、まだ利用可能です。
|
もう一つの不具合は、カメラ撮影時に電源が入りません。
おそらくスイッチの機械的な故障かと思いますが・・。
|
電源切り替えスイッチは撮影レンズ部カバーの
外側にあり、カバーを分解しなければなりません。
|
精密ドライバーを使い、本体カバーを
固定している小ネジを緩めて行きます。
|
バッテリー装着部の内側にも
数本の固定ネジがあります。
|
撮影レンズ部カバーを固定
している小ネジを緩めます。
|
ビデオ信号入出力端子の
樹脂製カバーを外しておきます。
|
先に撮影レンズ部上側の
化粧カバーが外れてきます。
|
化粧カバーが外れた内側に
さらに固定ネジがあります。
|
バッテリー装着部の脇に
もう1本小ネジがあります。
|
これでようやく本体が
左右に分離します。
|
本体左側半分にLCDディスプレイとファインダースコープ。撮影レンズ、テープ収納部、
テープ駆動部、信号処理基板、バッテリー部など主要な機能が右半分に組み込まれ
ています。左右はフラットケーブル1枚と数本のビニルコード束で接続されています。
|
CCD-TRV80PKの発売が2000年3月、末尾にPKの付かないCCD-TRV80は
前年1999年の発売ではないかと思います。家電品の中で20年前に既に到達していた
この細密な実装技術に驚きます。メイン基板右上は信号処理用のカスタムLSIでしょう。
|
最後に撮影レンズ部を覆うカバーを外さないと
電源切り替えスイッチにアクセス出来ません。
|
ようやくカバーが外れました。電源切り替え
スイッチはこのカバーの内側にあるはずです。
|
カバーの内側にも小型基板が取り付けられています。
基板の縁2か所に実装用リミットスイッチがあります。
|
電源スイッチをスライドさせるとレンズ部内側にある
リングが回転し、突起がリミットスイッチをONにします。
|
電源スイッチをビデオ撮影
(カメラ)側に切り替えてみます。
|
リングが回転し突起がカメラ側の
スイッチに当たり押し込みます。
|
正常であればこれで電源が
入らなければなりません。
|
ドライバーの先でスイッチを
もう少し押し込んでみると・・
|
・・電源が入ります。接点の接触劣化によるスイッチの動作不良、
リング突起によるスイッチの押し込み量不足が考えられます。
|
接点の接触劣化を改善する
ため潤滑剤を入れてみます。
|
直接吹きかけると内部を汚すので
ピンセットの先に取り隙間に入れます。
|
スイッチの押し込み量不足も改善を図ります。
瞬間接着剤をピンの先に少量取り分け、
|
リング突起の頂上部に盛り付けます。
突起の高さ=押し込み量を増やします。
|
硬化促進剤を吹き付けます。瞬間接着剤が
必要のない部分に流れると面倒です。
|
機械的にスイッチを押し込んでいるので
長年の間に摩耗が生じたのかも知れません。
|
スイッチの修復を終えた時点で
本体はここまでバラバラです。
|
分解作業時以上に注意を払い、
慎重に組み立てて行きます。
|
バラバラの段階で一度動作確認済みですが、組み立てを終えてあらためて念入りに確認
します。電源切り替えスイッチのみならず再生・撮影に関する基本機能を一通り確認します。
|
ディスプレイパネル部外側の液晶表示も正常です。強いて言えば、付属の
リチウムイオンバッテリーが既に寿命で、充電しても復活しません。最後に、
レンズ表面がひどく汚れているのでクリーニングを施して作業を終了します。
|
|
|