全回路図との睨み合いが続いております。毎日のように他の製作や修理依頼を
いただくので、それらを片付けながら手が空くと回路図に戻ってくる繰り返しです。
お預かりしてから3か月近くが経つ頃、ご依頼主から連絡を頂戴しました。これ以上
お待たせしても修理を完了できる見込みがなく、さすがに気が咎めます。ありのまま
現状をお伝えすると、有難いことにもうしばらくお待ち下さるとのことです。ここは他の
仕事をやり繰りしてでも、それなりの結論(修理不能?)を出さなくてはなりません。
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作業台を占有されるので、切り貼りで作成した全回路図を壁面に張り出しました。
この方が回路図全体を俯瞰することができ、回路図の前に立ってあれやこれや
考えを巡らしやすいのではないかと思います(心構えで何とかなるわけない・・)。
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高周波に弱い守谷工房ですが、このところ基本を勉強し直して
います。最近はAMラジオの解説がめっきり少なくなりましたが、
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こちらの電子うさぎ.comがとても役に立ちました。1~9石
スーパーラジオが非常に分かりやすく解説されています。
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勉強したとは言えごく浅いものです。それでも局発、周波数
変換、検波など、何度も聞いていると抵抗感がなくなります。
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このほど新たに導入した周波数カウンターです。
局部発振回路の点検に使用してみます。
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これまで散々見てきているので、局発
回路の部品構成は頭に入っています。
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局発用IFコイル(赤コイル)の端子です。
この当たりを触れてもラジオが入ります。
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局部発振回路は完全に動作しています。周波数カウンターを
当てながらバリコンを回すと、発振周波数が正しく変化します。
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これまでの点検作業をまとめると・・、どこもおかしくない
ということです。ただし、RFの初段を除いて・・です。
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現状としては完全に「手詰まり」です。特定の個所に手を触れるとAM放送が受信できる
事実は、RF初段部分を除きどこもおかしくないことを示しています。示していることを
受け入れなければなりません。しかし、Q211は既に正常な2SC380に交換済みで、
不具合の原因から除外されている以上、受け入れるわけには・・行きません。いつもの
ように回路図の前で腕組みしていた時、あっけなく解決への途が開けました。Q211の
BC間に数十Ωの抵抗を入れて見ると、感度は低いものの安定してAMが受信できます。
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未使用の部品を使用しているので、2SC
380が損傷している可能性はありません。
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交換済み2SC380を取り外し、未使用のものに交換します。
確実に取り付けるため基板裏側(配線側)に半田付けします。
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お預かりしてから3か月以上が過ぎています。ようやくCRF-330Kが息を吹き返し
ました。12cm径2Wのダイナミックスピーカーから、AM放送が大迫力で聴こえて
きます。情けないことに原因は2SC380の端子(B・C・E)を取り違えたのだと思い
ます。2SC380は2SC710と端子の配置が異なり、E(エミッタ)とB(ベース)が逆
です。あるいは狭い部分に実装したため、端子同士または他の部品と接触していた
のかも知れません。本当のところは、取り外してしまった後なので確認できません。
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ご依頼主に良い報告ができます。一刻も早く
本体を組み上げお返ししたいところです・・が、
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AM・FMが受信できるようになったものの、SW(短波放送)
切替時に赤く点灯するはずの周波数表示が、消えたままです。
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ご依頼主は元々短波は受信できていたとおっしゃっていますし、確か工房到着時にも
周波数表示用の8セグメントLEDは点灯していました。修理作業中のどこかで新たに
不具合を加えてしまったようです。「直してくれ」と言われているのに「壊しました」では
話になりません。周波数表示回路は、既に壁面に張り出している全回路図に含まれ
ています。当時のTTL-ICを組み合わせた表示回路は、これまた複雑で頭痛がします。
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周波数表示回路がモジュールとして
どのように実装されているか調べます。
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ラジオ本体上面でコネクタ接続されたケーブルが、
側面の角を伝って底面へ延びていきます。
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底面近くにスリットがあり、ここから
本体内部へ引き込まれています。
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本体上部を前方に倒し、ケーブルが
引き込まれる先を確認します。
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本体上部を倒した時、残される下部
3分の1ほどは電源ユニットです。
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ケーブルの行き着く先は・・、コネクタです。
どこにも接続されず遊んでいます。
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コネクタは2個あります。実は以前から気付いていましたが、
何か予備のコネクタくらいにしか思っていませんでした。
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コネクタの奥をよく見ると、狭い隙間の
奥にソケットのピンが並んでいます。
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半信半疑でコネクタ(プラグ)を差し入れて
みます。先にピン数の多い左側を差します。
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ドライバーの先を使わないと最後まで差し込めません。
空中配線の極み・・製造組立時も大変だったのでは。
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ピン数の少ないもう一つのコネクタを
差し込みます。ピンセットで隙間を通します。
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最後はドライバーの先で押し込みます。逆方向差し込み
防止プラグではないので、間違えていないことを祈ります。
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差し込む向きはコネクターやケーブルのカール癖を見て判断します。問題は
コネクタが抜けていただけで、周波数表示のLEDが点灯するようになりました。
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カバーのない裸の状態でしばらくラジオを楽しみ
ます。今度こそ修理を完了したと言っていいでしょう。
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分解された本体を元通りに組み上げます。
スピーカーを前面パネル内側に取り付けます。
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本体から出ているスピーカーへの配線を接続します。
FMステレオ放送もモノラルでしか再生できません。
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受信放送の切り替えスイッチに化粧ボタンを
取り付けます。予め磨き上げてあります。
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4個の化粧ボタンが並びました。スイッチの接触不良
程度なら簡単だったのに・・、安直な考えは禁物です。
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前面パネルを取り付けた際に、隙間が見えないよう
押しボタンスイッチの周りに化粧グリルを嵌めます。
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左右両側のパネルを
元に戻します。
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アンテナに付随するアッテネーター基板を取り付け
ます。空中配線なりに丁寧に作り込まれています。
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前面側に回り、カセットデッキ収納部
周りの化粧パネルを取り付けます。
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前面パネルを取り付けます。何本ものシャフトが
通るので、穴の位置を慎重に確認します。
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周波数の表示窓なども問題なく一致します。
パネルはダイキャスト製で、重量があります。
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前面パネルの固定
ネジを締め込みます。
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修理に成功し本体を組み上げる際は、何とも嬉しく誇らし気な
気分です・・が、お待たせしたご依頼主には申し訳ありません。
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既に修理済みのカセットデッキ
ユニットを組み込みます。
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背面側に回り、アンテナ回路の一部から
出るアース線をシャシーに半田付けします。
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背面パネルには本体側と
接続される配線があります。
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一つは乾電池から電源を供給する
ケーブルです。端子に差し込みます。
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もう一つは、クォーツ時計を駆動する
乾電池からの電源ケーブルです。
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背面パネルを押し込み
固定ネジを締め込みます。
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ツマミ類を取り付けます。本格的BCLラジオらしく、
SW周波数調整ツマミは無線機のような仕様です。
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FM用・AM用ツマミを取り付けます。このツマミの回転を
修理するだけでしたが、大変な展開を辿ることになりました。
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レバー類を取り付けます。プロ用機材の
雰囲気を漂わせつつも扱いやすいデザインです。
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最後に、もう一度カセット
デッキの動作確認を行います。
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PLAY状態で録再ヘッドのアジマス
調整ネジがパネル面の穴に一致します。
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組み立て完了です。往時の圧倒的な存在感・重量感が蘇ります。向かうところ敵なし、
世界のSONYを物語るのに十分です。そのSONYが何故ここまで後退したのか・・
例えば、現在国内にあるSONYのサービス窓口(サービスステーション)は2014年
3月の時点で秋葉原・大阪日本橋・那覇の3か所と、名古屋の相談カウンターを
加えた4か所だけです。「窓口をご利用されるお客様が減少しており」と説明されて
いますが、「SONYを利用されるお客様が減少して」いるからではないでしょうか。
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プロ用無線機材のような精悍な姿は、眺めていて飽きません。製造から45年を経て
これだけの存在感を維持する製品を、かつてのSONYは世に送り出し続けたわけです。
今から45年後、同じように存在感を失わない製品を、SONYに限らず日本のメーカーは
これからも作り出して欲しいものです(スマートフォンがその一つになるとは思えません)。
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分解されたCRF-330Kは、工房の床を広範囲に占拠
していました。修理が終われば元通り広くなりますが・・
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3か月以上も同居していた仲間がいなくなるようで、
寂しい気もします。前面の保護カバーを取り付けました。
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緩衝材を十分に詰めて段ボール箱に梱包します。最後に、長い期間ご依頼主は
本当に辛抱強くお待ち下さいました。修理して差し上げられたことはどうでも良く、
高度なラジオ受信回路について深く勉強させていただいたこと、工房として大きな
実績を重ねることができたことに対して感謝申し上げます。厚かましいお願いにも
かかわらず、親切に助言を下さった「じんけい」様にも心よりお礼申し上げます。
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