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目覚まし時計のベル(2018.11.26)


先週のおもちゃ病院の外来です。見るからに元気の良さそうな目覚まし時計です。
上部に立派な金属製鐘が2個取り付けられ、同じく金属製のハンマーで打ち鳴らす
仕掛けがひと目で分かります。こいつに叩き起こされる朝は・・、想像したくありません。

 

カルテに目を通します。「上のジリジリがならない」、
その方が平和でいいのではないかと思いますが。

 

取りあえず動作確認を行います。目安針
12時にセットして、長針を進めていきます。
 

時刻が12時に合うと、かすかに
スイッチが入ったような音がして、

 

ハンマーが勢いよく左右に振れています・・が、確かに
ベル音がしません。ハンマーが鐘に当たっていません。

 

ハンマーの駆動機構に何か問題が
あるのでしょう。分解してみます。

 

裏側カバーを固定しているネジを緩めます。
乾電池ボックス内にも固定ネジがあります。

 

時刻合わせ用のツマミを引き抜きます。目覚ましの
鐘はレトリックですが、内部はクオーツムーブメントです。

 

裏側カバーを外すと、内側にモーターが取り付け
られています。本体から配線が延びています。

 

時刻が目覚まし時刻に合うと、モーターはしっかり回転します。モーター軸には
偏心スリーブが取り付けられており、ハンマーを左右に高速で振動させます。

 

ハンマーの腕が変形したのでしょうか。あれこれ曲げて
調整しますが、どうしても片方の鐘にしか当たりません。

 

ハンマーが左右に振れるストロークが足りません。偏心
スリーブの回転を振動に変換する従動軸を点検します。

 

従動軸は特に問題ありません。偏心スリーブを
再度調べると、摩耗により溝が刻まれています。

 

溝によりストロークが小さくなったのでしょうか?スリーブの
位置を変更して、溝が従動軸に当たらないようにします。

 

結果は変わらず、まだベルは鳴りません。小さな溝の影響などたかが知れている
ようです。2個の鐘は本体内から出るネジ付きシャフトに、上部の取っ手とともに
袋ナットで固定されています。良く見ると、袋ナットの締め付けが緩みかけています。

 

軽やかなベル音を響かせるため、丸棒から折り
曲げと叩き出しで作られた堅牢な取っ手です。

 

ネジ付きシャフトを通す取っ手の穴は、
この通り余裕のある大きな穴です。

 

2本のシャフトを互いに引き寄せると、穴の
中でシャフトの位置がここまでずれます。

 

シャフトの位置すなわち鐘の取り付け位置を、
内側に寄せ合わせて袋ナットを締め付けます。

 

内部を分解する必要など全くありませんでした。袋ナットが緩んだことで鐘の位置が
互いに外側へずれてしまい、鐘の間隔が広がったためハンマーのストロークが追い
つかなくなっただけです。取っ手の湾曲を大きくすることで鐘を引き寄せる方法も考え
ましたが、堅牢に作られた取っ手はペンチ程度ではとても変形させられませんでした。

 

修理を終えたものの、やはりこの大きさの鐘をハンマーが勢い良く叩く音は
半端ではありません。電子音が優しく囁くクオーツ式時計・・など蹴散らして
しまいそうです。 *今回はおもちゃでないものを修理してしまいました。

 
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