「電気時計」、今では意味不明かも知れません。交流電源の50Hzまたは
60Hzがかなり精度が良いことを利用し、同期型電動機で時間を刻む時計です。
私も高校生時代(50年前)に愛用していました。時刻表示がデジタルですが、
表面に数字が印刷されたドラムが回転しているだけで、中身はアナログです。
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「Sankyo」を除き、型番シールの
印刷がほとんど読めません。
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モーターを中心にする単純な機械です。
機械修理の感覚で分解を始めます。
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背面カバーを外し、ユニットを内部に
固定している底面のネジを緩めます。
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時計ユニットを丸ごと取り出します。
数字が印刷されたドラムが見えます。
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ユニット背面に取り付けられている
この部品がムーブメントです。
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この中にモーターが内蔵され、減速
されて最終段のピニオンを駆動します。
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時計が動かないのはムーブメントが
動いていないからです。さらに分解します。
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金属製フレームの周囲に作り
込まれたツメを解除します。
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ドライバーの先を入れて
キャップをこじ開けます。
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アルミ薄板製のキャップを外します。
埃の侵入防止用なのでしょう。
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何となくおもちゃ修理のような雰囲気
です。製造技術が似ているからでしょうか。
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キャップの内部では、大きな平ギヤと
極小のピニオンギヤが噛み合っています。
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ピニオンギヤが駆動側で、モーターの軸に取り付けられています。正確には
軸が回転するのではなく、リングマグネットが回転し、台座に組み込まれた
マグネットが磁力により回転される仕組みです。さて、ピニオンギヤを見ると
平ギヤと噛み合う部分で山(歯)が無くなっています。長年の使用で削れて
しまったのでしょうか。電源を入れると台座部分は問題なく回転します。
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平ギヤを抜きます。裏側に
逆回転防止用のツメがあります。
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続いて台座ごとピニオンギヤを抜きます。
台座が回転することでピニオンギヤも回転します。
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ピニオンギヤは樹脂製のスリーブを介して台座に圧入されています。裏側から
押し出すことで抜き取ります。ピニオンギヤの色は変色によるものでしょうか。
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ピニオンギヤをあれこれ点検していると、突然全体が崩壊してしまい
ました。変色どころか材質が完全に変質し、強度も形状も保てない
状態です。スリーブには変質の兆候は全くなく、再利用が可能です。
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歯数12、外径6mmの極小ピニオンギヤが必要
です。工房にもネットショップにも見当たりません。
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かくなる上は自製するしかありません。しかし、工房の
レーザーではこの極小ピニオンはカットできる限界です。
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平ギヤを駆動できれば良いわけで、歯の形状や
ピッチ円などは置いて、とにかく切ってみます。
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ここまで小さいと、カットしている最中に切り出した
材料が動いてしまい、なかなか精度が出ません。
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いくつか切り出した中から、
精度の良さそうなものを選びます。
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ピニオンギヤ本体と、平ギヤに高さを
揃えるためのスペーサーを製作します。
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スペーサーは寸法違いに
気付き、作り直しました。
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スペーサーにスリーブを通します。
穴径の合うスペーサーを使います。
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12歯の極小ピニオンギヤです。何とか
12枚の歯が欠けることなく刻まれています。
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スペーサーに重ねてスリーブを通します。
アクリル接着剤で全体を固定します。
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スリーブを台座に差し込みます。念のため裏側から接着剤を入れて固定します。このギヤが
一発で切れるレーザーカッター、あるいは造形できる3Dプリンターが欲しいものです。
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台座をモーター側にセットします。中心の軸は
モーターシャフトではなく単なるピンです。
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次に平ギヤを入れます。ピニオンの外周が若干大きく
干渉します。ヤスリを当てて外周を微妙に調整します。
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プラグリスを入れると快調に回転します。2枚のギヤは問題なく
静かに噛み合っています。キャップを被せ本体を組み戻します。
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最後に時間を校正します。実はピニオンギヤの歯数が本当に12枚なのか、少々
自信がありません。崩壊したピニオンギヤから歯数を数えたので、11枚や13枚
だったかも知れません。数分間の校正では正確に時間を刻んでいます。12枚に
対して±1枚の違いは、1分間で±5秒の差を生ずるので簡単に分かりましょう。
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