引き出しの付いた木製チェストを修理します。高級感の漂う落ち着いた印象の
デザインです。外見的には特に問題があるように見えませんが、重量のある
本などを入れると、出し入れの際に引き出しが外れる(落ちる)そうです。
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引き出しを全て抜いてみます。箱組みは
桐製で非常に精度良く作られています。
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引き出しの一つを
出し入れしてみます。
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特に問題はないようですが・・。多少左右にガタが
ありますが、普通この程度の余裕を持たせてあります。
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右側の引き出し側レールと本体側樹脂タイヤです。
タイヤの上にレールがしっかり乗っています。
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左側のレールとタイヤです。こちらも
しっかり乗っているように見えます。
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引き出しを右方向に寄せると、レールからタイヤが
少し脱落します。しかし、まだ十分に乗っています。
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タイヤが完全に脱落すれば引き出しが外れて
落ちるでしょうが、それほどではありません。
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チェストの左右側板を押さえてさらに力を加えて
みます・・、タイヤがレールの外に出てしまいます。
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引き出しに入れた本の重みが、側板を広げる方向に
作用すると、引き出しが外れることが起こり得ます。
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しかし、チェストの側板はこの仕切り板に
より左右とも固定されているはずです。
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接合部分にドライバーの先を差し込んでみると、
簡単に中に入っていきます。固定されていません。
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ダボ固定されているはずが、接着剤の
効きが失われてしまったようです。
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接合面に新たに接着剤を入れます。
造形ヘラを使い接合面全体に行き渡らせます。
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仕切り板を側板に押し付けると、接合面
から接着剤が一様にはみ出してきます。
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反対側の接合面も同様に接着が効いていま
せん。隙間を空けて接着剤を入れ込みます。
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接合面の補修は、本来ならば部材を完全に分解して
組み直したいところですが、損傷が大きくなりそうです。
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側板の前後に播金をかけて固定します。引き出しが外れる原因は、本の
重みが側板を左右外側に押し広げ、タイヤがレールから脱落するからです。
側板が広がらないようにしたので、おそらくこれで問題は解決するでしょう。
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接着剤が固化するまで
十分に時間をおきます。
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乾燥を待っている間に、底板にも
同じ問題があることを見つけました。
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底板もまた側板との接着が完全に失われて
います。軽く叩くとダボが抜けてきます。
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中仕切り板と同様に
接合を補修します。
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造形ナイフを使い、広げた隙間に
接着剤を十分入れます。
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引き出しの各段に大量の本を収納した状態でチェストを移動
したのではないでしょうか。大きな破壊応力が加わります
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箱組みの剛性はたかが知れているので、移動の度に
接合部に応力が集中し破壊が進んだのでしょう。
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クランプ固定した後で、はみ出た
接着剤を綺麗に拭き取ります。
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引き出しを入れてみます。これで外れることは
ないと思いますが、まだガタが残っています。
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引き出し側のレールです。正確に取り付け
られていますが、やや内側に傾いています。
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もうひと工夫することにします。レールの取り付け位置を
調整(拡大)するため、固定ネジをいったん緩めます。
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レールの内側にスペーサーを挟む
ことにします。厚紙を用意します。
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レールと同じ高さに切断します。片側
2枚ずつ挟むと丁度良いと思います。
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レール高さに合わせ15mm幅に
切ります。切断位置を印します。
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ひたすら切断します。引き出し6段の左右分で24枚必要です。
スペーサーを入れることで、レールの傾きも矯正できるはずです。
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固定ネジを取り去ったところで、隙間に
スペーサー(厚紙2枚分)を挟み込みます。
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再びレールをネジで固定します。左右で
厚紙4枚分、レールの間隔が拡大します。
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ついでに樹脂車輪の車軸に
潤滑剤を吹いておきます。
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引き出し側レールの他に、側板
内側のレールにも車輪があります。
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チェストを移動させる際に、何故接合部に応力が
集中するのでしょうか? 理由が分かりました。
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底板に取り付けられている移動用の
キャスターが、油切れで固着しています。
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キャスターが回らないので、大きな力を加えないとチェストを移動できません。
チェストを引きずるほどの大きな力が、接合部に破壊をもたらしたのでしょう。
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2段目引き出しのツマミの横に、塗装の剥がれた
箇所があります。折角お預かりしているので補修します。
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フローリング補修用のタッチ
アップペンから色を選びます。
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塗装の剥がれだけではなく、少し深い傷に
なっています。タッチアップを当てます。
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ツマミの固定が所々緩んで
いるので締め直しておきます。
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補修作業終了です。これで引き出しが外れる心配はありません。「不具合の
大元原因はキャスターの油切れ」、仮説ではありますが面白いものです。
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