美容室から業務用ヘアドライヤー修理のご依頼です。工房で動作確認してみると、スライド
スイッチを操作しても電源が入りません。スイッチの動きがぎこちなく、時おり電源が入るも
間もなく切れてしまいます。内部で電気がスパークする「パチッパチッ」という音がします。
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スライドスイッチに問題があることは明らかです。
本体を分解し、スイッチを含む基板を取り出します。
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4Pのスライドスイッチを3P(停止・弱風・強風)で使用して
います。停止と弱風の間でクリック感に違和感があります。
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4本の接続端子が、ガラスエポキシ
基板に直接半田付けされています。
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大電力を扱う割には繊細な印象のプリント配線です。
もちろん必要な電流容量は確保されています。
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電熱線へ電力を供給する
2本の配線を取り外します。
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接続端子4か所の半田を溶かします。
スルーホール基板なので十分熱を加えます。
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半田吸い取り器で、溶けた半田を吸い取り除去
します。丁寧に作業しないとパターンを傷めます。
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スルーホール基板はホール内に半田が
残りやすく、なかなか部品が解放されません。
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ホール内の半田には熱が伝わりにくいためです。
逆に、半田を多めに残しておく方法もあります。
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このヘアドライヤー専用に設計されたOEM品
でしょう。汎用品には存在しない部品です。
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高さを調整するためマウントが取り付けられて
います。接続端子(電極)を抜きながら外します。
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スライドスイッチは本体と上側のカバーから
構成されています。カバーを外します。
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左右側面に3か所ずつツメによる篏合が
あります。かなりきつい嵌め合わせです。
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カバーを外すと内部に組み込まれて
いるスイッチ切片が見えてきます。
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3枚、2.5回路分の銅製切片です。途中に押し込み用の
曲げ突起があり、先端にON・OFF接点が付いています。
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受け側の接点は金具ごと取り外すことができます。
手前側1回路分の接点を取り出してみます。
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接点およびその周囲にスパークの跡があり、表面が
カーボンで汚れています。接触不良がありそうです。
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残りの接点も外します。入力側2回路分が1本にまとめられ
全体として2.5回路です。こちらにもスパーク跡があります。
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ワイヤーブラシでカーボンや腐食を取り除きます。
またヤスリをかけて接点表面を平らに整えます。
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こちらの接点は、分岐した片方が使用されて
いなかったため、全く劣化がありません。
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切片の先端にある接点にも、当然カーボンが付着しているはず
です。サンドペーパーを挟み込み下側から丁寧に研磨します。
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受け側接点の金具を元に戻します。新品同様とは
なりませんが、接触は十分復活しているはずです。
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お断りするまでもなく、このような状態に陥ったスイッチ
(部品)は間違いなく新品に交換です(手に入ればですが)。
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スライドスイッチの上側カバーです。内側にスライドプレートが組み込まれており、プレート
表面の突起がスライド位置に合わせて3枚の切片を押し込みます。停止と弱風の間で
違和感がある原因が分かりました。写真中矢印の部分が摩耗によりえぐれています。
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ツマミをスライドさせると、突起が切片を
押し下げて電源を入れるはずですが・・
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突起の一部がえぐれているため、切片を押し下げ切れず電源が
確実に入りません。クリック感も得られずスパークが飛びます。
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えぐれている部分に接着剤を盛り修正します。もうひとつ、
これまで使われていなかった中間の切片を利用します。
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3回路分の端子が出ている側で、2枚の切片を短絡します。
これで損傷のない接点をON・OFFに加えることができます。
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スイッチの修復を終え、
上側カバーを被せます。
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停止・弱風・強風でのクリック感は多少損なわれて
いますが、スイッチとしての機能は問題ありません。
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マウントを取り付け、元通り基板に半田付けし本体を組み上げて作業完了です(本体の
分解・組み立て作業は以前にもアップしているので略します)。スライドスイッチは最も
酷使される可動部品で、今回のような不具合は不可避でありほぼ時間の問題です。
製造メーカーは、特に業務用製品に関してサポート体制を充実させて欲しいものです。
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