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三菱ラジオFX-905レストア(2019.12.2)


新潟より届いた2台のラジオの1台です。ご依頼主のお爺様が購入された
ものだそうで、長い間倉庫に眠っていたようです。乾電池の液漏れ跡があり、
外観も劣化が進んでいます。何とか動作するようにして欲しいとのご要望です。

 

左右に回転ツマミが付いており、左側が電源スイッチ付き音量調整用、右側は
受信周波数調整(選局)用です。選局用はバリコンに連動するシャフトのみで、
ツマミは脱落・紛失しています。シャフト周りに何か修理したような跡があります。

 

三菱製FX-905、詳しい仕様は見当たり
ません。昭和中期のSONY後発製品でしょうか。

 

銘板の右横に受信バンド(FM・SW・MW)の
切り替えスイッチがあります。が、固着しています。

 

固着したスライドスイッチから想像するに、
内部は大変なことになっているかも知れません。

 

2本の止めネジを緩めると本体カバーが前後に
分離します。最近の製品のような篏合もなく簡単です。

 

錆びや汚れが広がっているものの、中は
想像ほど大したことにはなっていません。

 

バンド切り替えのスライドスイッチ周り
だけは酷い錆に纏わりつかれています。

 

成長した酸化物をドライバーの先でこそぎ落とします。何か腐食性の液体に
浸食されたようにも見えます。スイッチツマミ周りの構造が分かってきました。

 

スライドスイッチとは別に、ツマミと連動する
何やら金具のような部品が取り付けられています。

 

湿地に連動するレバーのような形状で
基板の反対側に延びています。

 

スライドスイッチの復活を試みます。底面側の
金属接点が生き残っていることを祈ります。

 

接点復活剤よりも錆取効果のある潤滑剤を
使います。高圧エアと交互に吹き付けます。

 

固着が解放されツマミがスライドするようになりました。気になるような
引っ掛かりはないので、電気的接触も復活しているかも知れません。

 

スライドスイッチだけではまだ動作しません。乾電池
からの電力が電源回路に供給されていないようです。

 

乾電池ホルダーとなる金属プレートを
取り外します。すぐ横は出力回路です。

 

金属カンのトランジスタ(自分が小学生の頃の
パーツ)がプッシュプルを構成しています。

 

変圧トランスを内蔵しており、AC100V電源も
使用できます。ACと乾電池を切り替える切片です。

 

切片にクセが付いてしまい、乾電池側に接触
していません。しかも接点が酷く汚れています。

 

切片の形状を修正し、細長く切った
耐水ペーパーで接点を研磨します。

  

乾電池を使用して電源が入るようになりました。
放送を受信できない深刻な問題はなさそうです。

 

FM・SW・MWも問題なく切り替わります。音量
調整用ツマミを回すと、大きな雑音(ガリ)が出ます。

 

可変抵抗器の摺動面が汚れています。接点復活剤で回復
させます。カーボンがすり減っているほどではないようです。

 

本体カバーの一部が欠けています。
ゴム系の接着剤で修理されたようです。

 

ぶら下がっている破片を引き離し、
古い接着剤を綺麗に取り除きます。

 

樹脂専用接着剤で接合し直します。樹脂材料同士が
強力に融合し合い、多分二度と取れないと思います。

 

バーアンテナのメッキ表面も
酸化膜と汚れで曇っています。

 

金属用研磨剤で磨き上げます。
メッキ面は比較的復活が容易です。

 

選局用ツマミのシャフトに付着している
何かの固まりのようなものを取り除きます。

 

やはり固化したゴム系接着剤と、元々付いていたツマミの
根元の一部でしょう。割れかけたツマミを修理したようです。

 

ラジオの動作が確認出来たので
いったん本体を組み上げます。

 

アンテナ回路からの配線をバーアンテナ
基部のネジに接続し、一緒に固定します。

 

劣化した外観を復活させます。樹脂用
コンパウンドでメッキ部を研磨します。

 

50年近い年月を経てもメッキ部はかなり光沢が
蘇るものです。メッキ層を突き破る傷は諦めます。

 

問題は脱落した選局用ツマミの用意です。同じものは
入手できないので、音量調整用ツマミから復元します。

 

音量調整用ツマミも表面の劣化が進んで
います。各部の寸法を正確に計測します。

 

実測データを元にCAD上に
ツマミの形状を再現します。

 

スライサーでstlファイルを
G-Codeに変換します。

 

工房の3Dプリンターは未だにこのデルタ型が主力です。FDMを見限り光造形に
移行したいのですが、マシンの調整が終わりません(作業時間が取れません)。

 

テストプリント無し、1発で
まぁまぁの出力が得られます。

 

ツマミ周囲の窪みも再現しました。内部はインフィル
80%で充填しています。外側からは見えません。

 

プラサフを2・3回吹いた上から、シルバーメッキ調仕上げの
カラースプレーを吹きます。本物のメッキには及びません。

 

残っていたツマミも汚れが酷いので再塗装します。
いつの間にか左右のツマミが逆になっています。

 

全く同じ形状のツマミなので、左右が入れ替わっても特に問題ありません。
選局表示窓の透明樹脂版も表裏両面から研磨し、本体の黒色部分で塗装が
剥げた箇所には艶消し黒のタッチアップを施しました。全体的にドレスアップ
され、かつての輝かしさをいくらかでも取り戻せたのではないでしょうか。

 
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