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ヘアアイロン温度コントローラ(2018.11.13)


米国ニュージャージー州より、国際郵便でヘアアイロンが送られてきました。
ご依頼主は現地在住の日本人の方です。海外でも工房WEBをご覧いただいて
いるとは大変光栄です。へアアイロンは日本国内で購入された日本製品です。

 

いつも修理している製品に比べ、
コテの面積が非常に大きいです。

 

ACアダプターのような形をした
温度コントローラが付属しています。

 

製造元はDAIKO CORP、販売元は
Milbon Co.Ltd、初めて聞くブランドです。

 

全く機能(発熱)しません。本体・コントロ-ラーのどちら
にも不具合がありそうです。コントローラから点検します。

 

裏側カバーを開けると、内部になかなか
凝った回路が組み込まれています。

 

温度調整ダイヤルを外したいのですが、
どのように固定されているのか分かりません。

 

温度調整用可変抵抗器の
半田付けを外してみます。

 

可変抵抗器を接続している
半田を吸い取りました。

 

回路基板は外れてきたものの
可変抵抗器がそのままです。

 

温度調整ダイヤルの目盛り板は
後から接着されたものです。

 

注意しながら目盛り板を少しずつ引き
剥がします。何とか剥がせそうです。

 

中に固定ネジがありました。
早く気が付けば良かった・・。

 

可変抵抗器の回転軸に届いている
ので、緩めると可変抵抗器が外れます。

 

取り出した回路基板を点検します。
配線パターン側は特に問題ないようです。

 

部品取り付け側を点検します。一瞬で損傷が分かります。
いくつかの電子部品やその周辺が焼け焦げています。

 

まずこの抵抗器です。完全に焼けただれており、おそらく
火を吹いて燃えたのでしょう。周囲に煤が広がっています。

 

焼損した部品は即刻交換します。配線側に
戻り、絶縁保護用のワックスを削ります。

 

半田吸い取り器で半田を
綺麗に除去します。

 

部品が火を吹くほど電流が流れるとはどういう状況で
しょうか。電熱器具として安全性に疑問が湧きます。

 

隣接する高耐圧コンデンサはかなり加熱されたはず
です。手前のトランジスタは多分破損しているでしょう。

 

出力コネクタ近くにも焦げた抵抗器が2本並んで
います。ここまで焼けると抵抗値が分かりません。

 

2本とも抵抗器を取り外しました。基板上の印刷は
部品番号のみで、部品定数は略されています。

 

周辺の回路構成から適当に
部品を選ぶしかありません。

 

火災現場隣のトランジスタを交換します。
適当なNPN汎用TRで代用します。

 

発熱体への電源供給はこのトライアックでON・
OFFしています。A-K間が完全に導通状態です。

 

温度コントローラの部品交換をひと通り終えたところで、へアイロン本体の
不具合を調べます。電源コードの本体付け根部分は点検必須箇所です。

 

ちゃんと(?)損傷しています。このくびれ痕
からして間違いなく内部断線があるでしょう。

 

電源コードを本体付け根の手前で切断し、保護
カバーから引き抜きます。やはり断線しています。

 

残っていた断線部分の被覆を取り出し、元の保護カバーを
再利用します。新たに電源コードを通さなければなりません。

 

電源コードの先を斜めにカットし、必要に
より洗剤を塗り付けて押し込みます。

 

割とすんなり通りました。本体側に残る
コネクター(プラグ)に接続し直します。

 

電源コード側、コネクタ側ともに
ビニル線の末端を処理します。

 

半田付けした後、熱収縮チューブを
被せて完全に保護・絶縁します。

 

緑と黄の2本はコネクタを経由せず、
直接基板に半田付けされています。

 

電源コード側のビニル線を短く切り詰め、
基板に半田付けしてすっきりさせます。

 

コネクタ(プラグ)を本体側コネクタ(ソケット)に
差し込み、電源コードの配線は終了です。

 

保護カバーの嵌め込み溝が緩いので
瞬間接着剤を入れて仮止めします。

 

電源コード(信号線を含む)を
本体グリップ内に収めます。

 

通電中はこのLEDが点灯するはず
ですが、既に切れていて点灯しません。

 

新しいLEDに交換します。ただし、小型
サイズは白色しか在庫がありません。

 

電源コードに電圧100Vを加えると発熱し
ます。へアイロン本体側の修理完了です。

 

温度コントローラ経由で電源に接続してみます・・ダメです。
全く発熱しません。まだコントローラが直っていません。

  

温度コントローラの回路基板にはLSIチップが搭載されており、本体側に内蔵されている
温度センサーからの信号を基に、何らかの方式(PID?)で高度な温度管理を行っている
ようです。LSIチップが損傷している可能性もあるので、これ以上不具合の原因究明を行う
ことは現実的ではありません。温度コントローラを復活させることは諦め、SSR(アクリル
折り曲げ機のサーモコントローラ
)を使った簡便な温度制御方式に変更することにします。

 

SSR-25VAは国内に在庫がなく中国から
取り寄せます。放熱器が必要なので製作します。

 

フィン付きのアルミ板をSSRのサイズに合わせて
切り出し、ネジで放熱器をSSRに密着させます。

 

温度センサーからの信号を3・4番端子にフィードバック
入力すれば、自動温度制御にすることが可能です。

 

しかし、動作特性を安定させることは簡単ではありません。
3・4番端子に単に可変抵抗器を接続するだけにします。

 

SSRを収納する適当なケースが見当たり
ません。アクリル材を加工して製作します。

 

コードの取り出し口等を含め、
上下2ピースの部品を用意します。

 

温度コントローラ側のコネクタは使用しま
せん。配線を引き抜いて個別に接続します。

 

可変抵抗器、SSRを組み込みます。
前後の穴から電源コードを引き込みます。

 

本体のLEDを点灯させるため、分圧・電流制限抵抗
および整流ダイオードを介して必要な電圧を作ります。

 

可変抵抗器は容量2Wが指定ですが、10オーム
程度の抵抗器を直列に入れ、小型のもので代用します。

 

可変抵抗器の回転角度と発熱体
表面温度の関係を確認します。

 

可変抵抗器のシャフトを回し切った位置で、出力
電圧100V弱、表面温度160℃を超えます。

 

シャフトを絞り、出力電圧を
30V程度に落とすと、

 

表面温度は70℃ほどに下がります。
静的な特性としては元の性能が出ています。

 

ただし実際にヘアケアに使用した場合、外的要因により
温度が変動しても速やかに追随する機能はありません。

 

万一フィードバック制御が暴走した場合、使用者に深刻な
危険を及ぼしかねないので、無難な設計に留めます。

 

ケースの上側カバーを内側から黒で塗装します。
カバー固定用のネジを受ける穴を開けておきます。

 

ケース内でSSRは特に固定しません。簡単に
カバーとの間にウレタンを挟み動かないようにします。

 

上側カバー側面からネジを締め込んで固定します。
可変抵抗器シャフトにはアルミ製ツマミを付けます。

 

温度目盛り板は省略します。「右へ回すほど
温度が高くなる」だけで十分かと思います。

 

電源コードを接続した時点で発熱体への通電が開始されます。元から
電源スイッチは付属していません。交換した高輝度LEDが点灯します。
 

温度センサーからの信号線を温度コントローラ内に引き込んであるので、実際に
使用して著しく不便があるようでしたら、改めて変更が可能です。フィードバック
制御とて、数個の電子部品を追加するだけです。作業が完了する頃、幸いなことに
ご依頼主が米国から日本に帰国されることになりました。帰国先にお送りすることで、
作業結果を確認していただくことができ、送料を大幅に節約することもできます。

 
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