VICTOR製1977年発売の「ナマロク用」カセットデッキ、KD-2です。
SONYの「デンスケ」に対抗するも、KD-3、KD-4と3代展開するに
とどまりました。このレトロなKD-2、実は私個人の所有物であります。
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学生時代に死に物狂いでアルバイトをして(その分学業を切り詰め)、秋葉原の電気店で
ようやく手に入れたことを覚えています。当時、定価で69,800円は高い買い物でした。
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DOLBYノイズリダクションシステムに、これまた
対抗して独自のSuperANRSを搭載しています。
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乾電池を含めて3.85kg、それでも
製品名にPORTABLEが付いています。
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仕舞い込んでいたわけではありませんが、
何年も電源を入れないままにしていました。
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PLAYボタン(レバー)を操作すると本体に電源が
入り、テープが再生されます。再生音も正常です。
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FFを操作してみます。巻き取り側リールが
快調に回転してテープが送られて行きます。
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REWを操作すると、送り側リールの回転がかなり
もたつきます。巻き終わり近くで停止してしまいます。
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40年以上前のメカニズムがまともに動作
する方が不思議です。メンテにかかります。
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乾電池カバーを外し、底面カバーを
固定しているネジ(6本)を緩めます。
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購入した当時は、必要もないのに内部見たさ、
興味本位で何回かカバーを開けたことがあります。
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電子回路基板の上を、このシールド板
(アルミ蒸着された厚紙)が覆っています。
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本体底面側に組み込まれた
電子回路基板が見えます。
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本体上面側カバーは、底面側から
入れられたネジにより固定されています。
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電源トランス近くの固定ネジを緩めます。造作が
大き目で、デンスケの精緻さには及びません。
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回路基板に開けられた穴を通して
本体筐体にネジが打たれています。
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穴の奥にドライバーを
入れてネジを緩めます。
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計5本の固定ネジを緩めると
本体上面側カバーが外れます。
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ただし、1か所だけ金属製のツメが本体にかかって
おり、ドライバーの先で解除する必要があります。
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跳ね上げ式のアクリルカバーとともに、
上面側カバー全体を引き離します。
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内部が露出した途端、配線が切れていることに気付きました。ヘッドブロック
からテープセレクター基板に接続されているシールド線です。テープの再生に
問題がないことから、消去ヘッドの配線のようです。コネクタ端子への半田
付けが切れています。いつ頃、どのようにして切れたのか全く分かりません。
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カセットテープホルダーを取り外します。
テープを左右で保持する突起部です。
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突起部はベースプレートにネジ止めされている
だけで、ホルダーの固定には関係しません。
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ベースプレートを固定している
のは左右にあるこのネジです。
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ベースプレートが外れると、ようやく
デッキメカ部分が見えてきます。
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テープデッキメカニズムの全貌です。その後爆発的に普及するウォークマン系の製品に
比べると、その設計はほとんど据え置き型テープデッキのスケールです。造作が大きく
構成部品の1点1点に十分な強度が与えられています。40年程度で劣化するわけが
ありません。ディスクリート部品で構成された回路基板は、さすがに年代を感じますが。
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ゴムベルト類は例外です。確実に
経年劣化し、伸び切ってしまいます。
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キャプスタン軸の回転を、巻き取り側リールに伝達する
ゴム製アイドラープーリです。摩耗と固化が進んでいます。
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送り出し側リールに伝達するアイドラープーリも
表面が劣化しています。清掃・研磨が必要です。
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ゴムベルトやアイドラープーリをメンテ
するためリールベースを外してみます。
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幾分作業はしやすくなりますが、
外さなくても問題ありません。
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カウンターを駆動するゴムベルトに、
テープセレクター基板が干渉します。
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2・3本のネジを緩めるだけで
簡単に外れてきます。
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ただし、基板から本体右側面にかけてフィルム配線が
延び、底部の回路基板にコネクタで接続されています。
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フィルム配線内のパターンが信じられないほど
極太です。基板の下にもシールド板があります。
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シールド板も取り外すと、テープカウンターを
駆動するゴムベルトの経路が良く分かります。
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ここまで分解すればベルトもプーリもメンテ
可能ですが、本体前面カバーも外してみます。
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肩掛けベルトを固定する金属バックルです。
バックルの固定ネジがカバーも固定しています。
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本体前面カバーを手前に引き出します。
カセットデッキの操作レバー部も露出します。
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操作レバーの隙間に固定ネジがあります。
かつてここまで分解した記憶はありません。
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テープデッキメカ部を引き起こします。回路基板
への配線はシンプルにまとめられているようです。
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右側に半回転させながら引き起こすと、
フライホイール周りにアクセスできます。
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キャプスタン駆動ベルトを点検します。それ
なりに伸びているので、この際交換します。
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モーター周りを覆う金属製
保護カバーを外します。
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6V駆動の直流コアレスモーターから、アイドラー(黒い
プーリ)を介してキャプスタンにベルトが延びます。
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キャプスタン・フライホイールの軸受カバーも
外します。カバーの下をベルトが通ります。
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操作レバー部の下に、カバーを
固定するもう1本のネジがあります。
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ベルトの通路に干渉する
カバー類を全て取り除きます。
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キャプスタン駆動用ゴムベルトです。電源を入れない期間が長かったので
形状にクセが付いています。ベルトテンションが低下しているので、ある
程度伸びていることは確かで、全体的に材質が硬化しています。しかし、
数十年も経過すると変質して溶け出すことも多い中、状態は良好です。
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ベルトテンションの低下は、FF・REW時に
トルク不足をもたらします。当然、交換します。
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新しいベルトにかけ替えたところで
テンションを確認します。程良い張りです。
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テープカウンター駆動ベルトも交換します。アイドラープーリは
アルコールで洗浄し、摺動面をペーパーで研磨します。
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ここでパーツを戻して動作確認を行い
ます。レバーをひと通り操作してみます。
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REW(巻き戻し)時のリール回転が蘇りました。リールベースを押さえてみると
かなりのトルクが発生しています。ウォークマン系に採用される超小型ブラシレス
モーターによる駆動など比較にならない堅牢さです。耐久性に富んだ頑固親父の
ようなモーターのおかげでしょう。電力(バッテリー)は大食いしますけれど・・・。
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長年の放置で、本体カバー表面は
訳の分からない汚れ方をしています。
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洗剤をかけて丸ごと水洗いします。
入り組んだ部分はブラシをかけます。
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高圧エアで細部の水分を
飛ばして乾燥させます。
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コンパウンドで磨き上げたいところですが
自分用の機材にそこまでは面倒です。
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切れていた消去ヘッドの配線を修復します。
ここで、実際にテープを視聴してみます。
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ヘッドアジマスを僅かに調整して修理完了です。
ヘッドホンでモニターした音質もまぁまぁです。
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70年代当時のテープデッキですから、音揺れ(ワウフラッター)もこんなものでしょう。
実スペック的には中期のウォークマンに完全に負けると思います。しかし、40数年を
経て深刻な劣化がほとんど見られない点には驚きます。 さて、このレトロなデッキを
引っ張り出してきて、これだけのメンテを加えたことには理由があります。テープの再生
速度を校正するテストテープを作成するためです。カセットプレーヤーの修理依頼を
受けるたび、これまでは再生速度を正確に調整しないままお返ししておりました。
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440Hz正弦波が録音されたテープを作りたいのですが、
問題は再生(録音)速度が正確なデッキをどうするかです。
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上手い方法があるものです。カセットテープの再生速度
47.6mm/sから、10秒当たりの走行距離を実測します。
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テープを1本犠牲にして、先頭のリーダー部からテープを外に
引き出します。テープがカールするので適当に押さえます。
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10秒分の走行距離、47.6mm/s×10sで
476mmをスケールで取ります。
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引き出したテープのリーダー部から
476mmの位置を割り出します。
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476mmすなわち再生速度が正確ならば
10秒後に通過する位置をマスクします。
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このテープに適当な音声信号を録音します。音が途切れる
までの時間を計測することで、再生速度がわかります。
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PCのアプリで信号の長さを計測すれば正確
ですが、ストップウォッチでも何とかなります。
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何も調整しない状態で、KD-2は10.3秒以内でした。
操作によるタイムラグを考慮すると十分かと思います。
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ジェネレータを接続し、新しいテープに
440Hzの音声信号を録音します。
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作業中に、ヘッドホン音量調整や録音レベル調整
(マスター・左右とも)にガリがあることに気付きました。
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ガリは後で再度本体を分解し接点復活剤を入れます。
・・そこそこに使えるテストテープの完成です。
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再生速度を調整したいプレーヤーでこのテープを再生し、出力を周波数カウンターで
計測します。駆動モーターの制御回路で、回転速度調整用の半固定抵抗器を回して
周波数表示を440Hzに近付けます。ほとんどのプレーヤーで、テープのセット状態、
プレーヤーの置き方、テープの先頭と最後、乾電池の電圧などにより再生速度が
±10%程度は変化するようです。実際、周囲にある数台のプレーヤーを調べると、
音程がかなり違って聴こえてきます。アバウトに作成したテストテープですが、聴き
慣れた音楽テープで勘に頼って調整するよりも、はるかにましな調整ができます。
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