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ヤマト家財宅急便の杜撰対応(2019.10.15)


はるばる大阪から電子レンジが送られて来ました。ご依頼主には梱包や発送が
難しかったそうで、料金の高い家財宅急便(ヤマトホームコンビニエンス)で送られて
来ました。自宅まで荷物を引き取りに来て、ヤマト側で梱包をして届けてくれる
サービスです。以前に工房でも利用して、厳重すぎる梱包に驚いたことがあります。

 

開梱してみると本体外側に異変があり
ます。右側側面全体に凹みがあります。

 

右側側面の後方、上側の酷く目立つ凹みです。程度は
大きくありませんが、よほど強い外力が加わっています。

 

上側手前にも軽い凹みがあります。前面ドアに
連続する部分なのでやはり目立ちます。

 

左右下部に成形された大きなディンプル周りも
変形し、下端縁の直線性が損なわれています。

 

電子レンジが梱包されていた段ボール箱です。荷物に対して大き過ぎることが
一目で分かります。ヤマト専用の梱包箱などではなく、どこか関係のない会社の
使い回し段ボール箱です。配達時にはテープが剥がれて蓋が開いていました。

 


修理の依頼内容は「あたためスタートボタンが押せない」だけです。
側面に凹みがあるなど伺っておりません。ご依頼主に確認したところ、
やはり「元々凹みなどなかった」とのことです。凹み部分の写真を
送り、
ヤマトに抗議されるようお伝えしました。工房としても責任の
所在を明確にするため、非常に重要な措置であります。

 

 


ご依頼主から返答がありました。ヤマトに連絡を取られたそうで
近日中に担当者が荷物の状態を確認しに工房へ来るそうです。
間もなくつくば支店から副支店長がやって来ました。工房がご依頼主に
対してできることとして、電子レンジの状態を十分確認してもらい、梱包の
状態や輸送について不適切と思われる点を強く申し入れました。補償内容や
了承の如何はご依頼主の問題ですので、それ以上の干渉はできません。
 

 


結論が出るまで修理作業を見合わせ、ご依頼主からの連絡を待っておりました。
つくば支店とやりとりをされたそうで数日後に以下のような連絡を頂戴しました。

(ヤマトホームコンビニエンスの説明と回答)
6年以上経過した電化製品は新品の10分の1の値段の価値になるのが相場である。
ネットのオークションで同じような型式のものを調べたところ9000円くらいで出回っている。
以上のことから1万円(賠償)と料金の3456円を払うことで承諾して欲しい。
梱包の仕方、梱包資材について大阪のスタッフに不備はない。原因は積み替え時に
向きがわかりにくい箱だったため、凹んだ部分が底になるように積んでしまったのでは。

ヤマトホームコンビニエンスのあまりに身勝手で不誠実な対応に怒りがこみ
上げ、ご依頼主がお気の毒で仕方ありません。しかし、ご依頼主が了承されて
いる以上、工房が口を挟むことは出来ません。ご依頼主からあらためてスイッチ
修理のご依頼を頂戴し、最大限丁寧な作業を心がけることにしました。それに
しても、ヤマトは工房で常時利用していることもあり、腹立たしさが残ります。

  

 

あらためてご依頼主のご希望に沿う
べく、修理作業に取り掛かります。

 

電源プラグをコンセントに差し込み、ドアを
一度開け閉めすると電源がスタンバイします。

 

「あたためスタート」ボタンを押して
みます。確かに反応がありません。

 

ほとんどの場合、スタートボタン内部の
タクトスイッチ劣化が原因です。

 

外側カバーを外します。凹んだ
跡が痛々しく感じられます。

 

操作スイッチや基板は、前面
ドアの内部に収められています。

 

ドアの構成はほとんどの製品で
3重構造が採られています。

 

最初にドア内側の周囲に嵌め込まれた
樹脂製の化粧グリルを外します。

 

長期間高熱に晒され、樹脂が硬化し脆くなって
いることがあるので、注意深く慎重に外します。

 

樹脂製グリルの内側に、電磁シールドとなる
強度の高い金属製グリルがネジ固定されています。

 

金属製シールドが外れると、ガラス板を
含む最前面の樹脂製カバーが残ります。

 

この樹脂製カバーの内側に
スイッチ類が組み込まれています。

 

ガラス板を固定している金属ステーを外し
ます。ガラスを落下させないよう注意します。

 

開閉用のハンドルから固定用の
ツメが伸び、カバー内側に噛んでいます。

 

ツメを解除するとハンドルと
ともにガラス板が外れます。

 

ガラス板が外れていないと、操作
パネル部を取り外すことが出来ません。
 

ガラス板の入っていた下端からドライバーの
先を入れて操作パネルを持ち上げます。

 

操作パネル自体の下端からも
ドライバーを入れて持ち上げます。

 

やはりツメによる篏合で固定されているので
ツメを折らないよう少しずつ分離させます。

 

操作パネルの裏側にスイッチ基板が
取り付けられています。ネジとツメを外します。

  

操作パネル表面の機能に応じたタクトスイッチが並びます。
この状態でようやくスイッチ類の修理等が可能になります。

 

「あたためスタート」に対応するのは、この
タクトスイッチです。最も酷使されるスイッチです。

 

基板裏側の配線側からスイッチの
導通を確認します。劣化しています。

  

先日、タクトスイッチをまとめて買い込みました。
仕様の異なる10種類ほどが揃っています。

 

元のタクトスイッチを取り外します。吸引パイプを
メンテナンスした半田吸い取り器が快調です。

  

部品のリード線を
垂直に整えると、

 

部品が勝手に落下してくれます。
ランドの損傷も少なくて済みます。

  

トップ部分も含めて、元のスイッチとほぼ同じ高さのものを選びます。元の2ピンに
対して4ピンのスイッチになるので、リードのない表面実装用のものを使用します。

 

タクトスイッチの取り付けには
U字型に曲げたリード線を使います。

 

基板裏側から差し込む点が
以前の作業手順と異なります。

  

ここで基板裏側(配線側)で
いったん半田付けしておきます。

 

スイッチ取り付け側に
リード線が出ています。

  

タクトスイッチ自体は瞬間
接着剤で基板に固定します。

 

スイッチ端子の位置が適合しないので
補助的にリード線を伸ばします。

  

リード線を上下どちらかの
スイッチ端子側に折り曲げます。

 

リード線とスイッチ
端子を半田付けします。

  

余分なリード線を
切り落としておきます。

 

忘れていけないのは、裏側の
U字部分を切り離しておくことです。

  

タクトスイッチの交換作業完了です。この手順では
補助リード線が安定した状態で配線することが出来ます。

 

金属シールドを確実に嵌め込み
交換したスイッチの動作を確認します。

 

「あたためスタート」ボタンを押すと加熱が
始まり、タイマーが刻まれて行きます。

  

庫内ランプが点灯し冷却ファンが
回り、問題なく動作しています。

 

ドア内側のグリル等を元に戻します。ついでに
分解時でないと手の届かない部分を清掃します。

  

ガラス板も含めてドアが
元の状態に戻ります。

 

ここで再度操作ボタンの動作を
確認します。問題ありません。

  

さて、この凹みをどうしましょうか。工房の責任ではありませんし、ご依頼主から
特に修理するようにも言われておりませんが・・、やはりそのままお返しするには
忍びません。鈑金塗装とまでは行かなくとも、最小限のリペアを試みます。

 

木槌・玄能を使い分けながら、裏側から凹みを叩き
出していきます。ウレタンシートで衝撃を吸収させます。

 

玄能は衝撃が集中しやすく、折れ目が
残りがちなので丁寧に叩きます。

  

いくらか変形が戻ってきたようです。
とにかく無理は禁物です。

 

後方上側の大きな凹みもかなり修正出来ました。
残念ながら折れ目が少し残っています。

  

元の状態よりも見栄えを悪くしては
いけないので、気長に叩き続けます。

 

ディンプルの周囲の範囲の
広い凹みを叩き出します。

  

こんなところでいかがでしょうか。画像をクリックすると
叩き出し前の写真にジャンプします。較べてみて下さい。

 

返送するために梱包します。元の段ボール箱は
梱包用の箱としては非常に堅牢なものです。

 

しかし、荷物に対して箱のサイズが
あまりにミスマッチ(大き過ぎ)です。

  

発泡シートで丁寧に包み、底面と
上面に緩衝材を十分に入れます。

 

箱の4隅に切り込みを入れ、緩衝材に
接触する位置で4片を折り曲げます。

  

これで内部で荷物が暴れるような事態は完全に防止できます。しかも普通の
宅急便で十分安全に配送できます。料金も家財宅急便の半額程度です。
国内トップ輸送のプロ、ヤマトがこんなヘマをやらかしたことが信じられません。

 
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