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PanasonicレシーバーCDチェンジャー部の復元1(2019.7.2)


昨年暮れに知人が持ち込んできたPanasonic製のレシーバーです。CDを5枚まで
収納することが可能で、リモコン操作によりCDを入れ替える機構(CDチェンジャー)を
装備しています。内部でCDが引っ掛かり取り出せなくなっているそうです。その場で
修理可能と踏んで即作業にかかるも、実は半年以上も続く難題と化して行きます。

 

Panasonicレシーバー、SA-PM930DVD。2006年
4月発売でDVDも再生可能、SDカードにも対応します。

 

背面に並ぶ各種端子です。映像出力には
コンポジット端子とD端子が使われています。

 

電源を入れてみます。取りあえず
電気回路系は動作するようです。

 

トレイの開閉ボタンを押してみます。内部
から何か作動音がしますが開閉しません。

 

右端のチェックボタンはCD5枚分の
トレイを、同時に全て開閉します。

 

一部のトレイが何とか出てきます。
奥にCDが1枚挟まれたままです。

 

依頼者が見ている目の前で、苦もなくここまで分解を進めました。引っ掛かって
いたCDも取り出し済みです。CD表面のラベル(シール)の一部が剥がれ、
内部のフレームに貼り付いていました。ここで問題に気付きます。いったん
5枚とも引き出したトレイが、全く動作しません。何かに干渉するようで内部に
押し戻すこともできません。CDの再生どころではなくなってしまいました。

 

トレイが自在に開閉できるように復旧させ
なければなりません。機構をさらに分解します。

 

側面に嵌め込まれている溝付きのプレートが再生するCD
(トレイ)を指定するようです。乱暴ですが力尽くで外します。

 

トレイを1枚ずつロックするのでしょうか。
ツメの並ぶ樹脂製部品を外します。

 

トレイブロックは左右で固定されています。
ロックを解除してトレイを持ち上げます。

 

何とかトレイブロックが外れました。特定のトレイを
選択する段階で、かなり面倒な機構が組まれています。

 

トレイブロックが除かれたので、下部の
メカニズムにアクセス可能になります。

 

しかし、手前のピックアップユニットが干渉するため
先に取り外しておく必要があります、面倒です。

 

本体の幅一杯に横たわるレバーが回転すると
ピックアップユニット全体が上下する仕組みです。

 

最上部に移動したところで力を加えて本体を
変形させ、僅かな隙間を作りユニットを外します。
 

乱暴な作業が続きます。下部メカニズム
全体を覆うカバーの固定ネジを緩めます。
 

2本のレバーを伴いカバーが外れます。整備マニュアル
無しの分解は、写真による途中経過記録が頼りです。

 

カバーが外れた内部を確認・・息が詰まります。複雑に
溝が刻まれた大ギヤ、タイミングを取るカムが並びます。

 

取りあえずゴムベルトあたりから外して
みます。その働きは見当も付きません。

 

もう1本細めのゴムベルトが
掛けられています。

 

このスプロケットのような部品は、底部の
シーソー機構により上下するようです。

 

左隣のカムに連動するようで、何か
厳密なタイミングを取るようです。

 

これは降参です。途中まで分解した部品をいったん元に戻し頭を冷やしますが、その頭が
冷えるほど、事態の深刻さが濃厚になってきます。いくつもの特殊ギヤやカム機構が、設計
通りの位置関係に置かれて厳密なタイミングで連動する必要があるようです。プロセッサ
制御により相互位置関係が自動的に調整されるわけではありません。サービスデータ
含まれるメーカーのマニュアル無しでは、正しい組み立てとタイミング調整は不可能です。
知人からの依頼であることをいいことに、このレシーバーの修理は当分棚上げにします。

 

約半年が過ぎたこの5月、市内にお住いの方から同じくPanasonic製レシーバーの
修理依頼をいただきました。お預かりしてみると、またもや5連奏CDチェンジャー付き
です。腰が引ける中、不具合はピックアップの読み取り不良とのことで、ピックアップは
チェンジャー機構に触らず交換修理できそうなのでお引き受けすることにしました。

 

SA-PM57MDは4年早い2002年4月の発売、まだ
SDスロットはなく、カセットとMDが装備されています。

 

お客様からのご依頼なので、それなりに慎重に分解
します・・知り合いがどうでもいいわけではありませんが。
 

背面および側面の固定ネジを緩め、
本体両側面のパネルを外します。
 

上部パネルを外します。ここにカセット
テープユニットが組み込まれています。

 

ユニットの底部に録音・再生回路基板が取り付けられて
います。フラットケーブルで本体側と接続されています。

 

本体前面パネルを外します。直接
固定しているネジはありません。

 

本体右側面に主回路基板が取り付けられています。
底部のCDユニットとの接続ケーブルを抜きます。

 

フラットケーブルは脱着の繰り返しに弱く、端子の金属
箔が簡単に剥がれてきます。同等新品に交換します。

  

底部のCDユニットを分離します。回路
基板側の下部に固定ネジがあります。

 

反対側の固定はネジの
向きが異なります。

 

知人のSA-PM930DVD(まだそのまま)では勢いに任せて分解し、あげく降参と
なりましたが、今回は記録を撮りながら慎重に進めて行きます。CDユニットが姿を
現しましたが・・、これはSA-PM930DVDと全く同型です。一瞬不安がよぎります。

 

ユニット下部の金属製パネルを外します。ユニット
本体にドライバーの通り道が確保されています。
 

強度のあるスチール製パネルが
本体の全重量を支えます。

 

フラットケーブルは1本がピックアップユニットへ、
もう1本がCDチェンジャーに配線されています。

 

CDユニットを元の向きに戻します。
上面はスリットのある樹脂製カバーです。

 

ツメを押してスライドさせると
簡単に外れてきます。

 

SA-PM930DVDで、お手上げ状態へと転落して
いく岐路に辿り着きました。同じ転落はこりごりです。

 

トレイが干渉するので少し移動させてから、ピック
アップユニットを昇降させるレバーを端に寄せます。

 

前回同様、フレームに隙間を空けて
ピックアップユニットを取り出します。

 

CDチェンジャー部を分解することなくピック
アップユニットを取り出すことが出来ました。

 

CDの読み取り不良は、ほとんど
ピックアップの経年劣化が原因です。

 

レンズの曇りやレーザーの出力
不足が原因であることもあります。

 

洗浄液を使いレンズをクリーニングします。また、
レーザー出力を調整して様子をみることにします。

 

それでも一定の経年劣化は避けようがないので
新品交換用のピックアップを入手します。

 

ピックアップユニットの刻印「L815?」
では該当する製品が見つかりません。

 

型番不明のピックアップは、写真を数枚添えて専門業者に探してもらうことにします。さて、
レンズクリーニングや出力調整の結果を見るため、CDユニットをいったん組み戻し動作確認
します。・・と、ここで再び悲劇に見舞われます、CDチェンジャー部が正常に機能しません。
当然CDは全く再生不能状態です。ピックアップユニットを取り出すため、干渉するトレイ
僅かに移動させたことが原因のようで、トレイの位置を元に戻すだけではダメです。事態を
冷静に理解しようとするも、間もなくその深刻さを自覚します。つまり、SA-PM930DVDを
サービスデータ無しでは復元できず、匙を投げたのと同じ状況に陥ったということです。
修理を依頼されたのはピックアップ部であり、元々他に問題は無かったわけですから、CD
チェンジャーに不具合を加えてしまったのは工房の責任です。これは棚上げにできる事態
ではありません。Panasonic社を始め国内WEBサイトにサービスマニュアルや修理事例が
存在しないことは既に分かっています。以後、ひたすら(夜な夜な)情報を探す日々が続きます。

 

夕食を終えてから就寝前までの数時間、Panasonic製レシーバーCDチェンジャーの
サービスデータ(マニュアル)を探す日々を10日間ほど過ごしたでしょうか。ようやく
見つけることが出来ました、Youtubeに投稿された動画です。ご覧の通りその言語は
何とスペイン語です。さすがに強力なGoogle翻訳も、動画の音声には対応しません。

 

ひとつ動画を閲覧すると、類似する動画をYoutube
次々と探し出してくれます。芋づる式に動画が見つかります。

 

画像を見るだけで作業手順は理解できますが、
サブタイトルが英語版の動画も見つけました。

 

こちらは印刷物(PDF版)のサービスマニュアルです。動画は一時停止しないと先に
進んでしまいますが、静止画であれば作業に合わせて参照出来るのでそれなりに
便利です。動画とPDF両方が揃ったことで、中断したまま絶望感に浸っていた修理
作業に一挙に展望が開けます。もちろん知人の分も修理できるかも知れません。

 
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