
2台のPanasonic製レシーバーをお預かりしたままです。1台(写真左)は知人から依頼された
SA-PM930DVD、CDラベル(粘着シール)が剥がれ、トレイ内に挟まれて開閉できなくなって
いました。CDは簡単に取り出せたもののCDチェンジャー部を元通り復元できず、状況は変わり
ません。元々トレイ部分の不具合なので、それをいいことに半年近くも放っていました。もう1台は
その後ご依頼のあったPanasonic製SA-PM57MDです(写真右)。不具合はCD読み取り不良
なので、ピックアップユニットの交換だけで済むはずでした。迂闊にもCDチェンジャー部の設定を
狂わせてしまい、半年放置の1台と同じ状況を招いてしまいました。CDチェンジャー部の恐ろしく
複雑でタイミングの難しいメカニズムは、サービスデータ(マニュアル)なしでは復元不可能です。
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SA-PM57MDはお預かりした後で工房が問題を広げてしまったので、ただでは済みません。
サービスデータを求めて連日連夜ネット検索を続けたところ、Youtubeに組立て手順を説明した
動画を見つけました・・が、何とスペイン語です。スペイン語が分からなくても映像を見るだけで十分
手順を理解できます。動画によるチュートリアルのようなものです。気を取り直し作業を再開します。
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動画に加えてPDFファイル版のマニュアルも見つけました。
CDチェンジャー部の詳細なアセンブル図も掲載されています。
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こちらはピックアップユニットを含むCDトレイ周りの
アセンブル図です。機構が手に取るように分かります。
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マニュアルに沿って分解からやり直します。トップカバーに
付いているこのピニオンギヤの使途がようやく分かりました。
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ドライバーの先にピニオンを差し込み、
CDチェンジャー底部の穴に通します。
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制御基板・底部フレームを通った先のUD
ラック(UpDownラックギヤ)に噛み合います。
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ピニオンを回転させるとUDラックがスライドし、同時に
側面の溝付きプレート(セレクトラック)もスライドします。
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セレクトラックが左端の
初期位置にあります。
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この時点でピックアップユニットは最も下がった
状態にあり、1段目のトレイが選択されます。
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ドライバーを回しピニオンギヤでUDラックをスライド
させます。セレクトラックが右へ移動してきます。
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UDラックのスライドでピックアップユニットが
昇降します。途中まで昇ってきました。
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さらにピニオンを回転し、セレクト
ラックを右端まで移動させます。
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ピックアップユニットは最上段に来ました。
5段目のトレイが選択されています。
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マニュアルはここでトレイブロックを取り外す
よう指示しています。正しい手順があります。
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トレイ中央の開口部から、ギヤをロックしている
レバーのような部品(スピードアップロック)を外します。
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トレイブロック脇のツメの並んだ樹脂製
部品(オープンスイッチレバー)を外します。
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マニュアル無しでは機能も理解せず
手順も無視して分解してしまいます。
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トレイガイド(左右でトレイをまとめている部品)の
ロックツメを解除しトレイブロックを引き抜きます。
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ピックアップユニット最上段の位置にあるUDラックは、
ストッパーを解除することによりもう少し移動します。
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ドライバーの先で押しているのがストッパーです。
右側UDラックの端にあり、これ以上スライドさせません。
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ストッパーを解除することで右側UDラックがさらに
押し込まれ、ピックアップユニットの固定を解除します。
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ピックアップユニット最上段の位置にあるだけでは、
昇降支持シャフトはまだハウジング内にあります。
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UDラックがさらに奥へ移動すると、昇降
支持シャフトがハウジングから出てきます。
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マニュアル通りの手順に従えば、フレームを無理に
変形させる必要もなく簡単に取り外すことが出来ます。
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ピックアップユニットを引き上げます。最初からこのような
手際のよい作業手順を紹介できると良かったのですが・・。
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それにしても何故スペイン語版マニュアルが存在して、英語版がないのでしょうか。
日本語版に至っては製造元が頑なに提供を拒み、ネット等への公開を強力に阻止
しているのが現状です。Panasonic社の製品は世界中に行き渡っていますが、
販売先(国・地域)の事情により現地法人の対応が異なるのでしょう。マニュアルの
ニーズが高ければ、いつか誰かに公開されることになります。Panasonic本社の
姿勢以前に、日本国内ではサービスデータなど必要とされないのが現状です。
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ピックアップユニットを外した後のフレーム側面です。
UDラックがピックアップユニット固定解除の位置にあります。
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ピックアップユニットには、もう一つ
昇降機構が組み込まれています。
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底面側に突き出たこの爪は、
スライドするバーの一部です。
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反対側にも同様のバーおよび突き出たツメがあり、
2本のバーは互いにシーソーのように往復します。
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バーが一方に寄った状態です。
ツメがスリット内に収まっています。
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バーが他方に寄った状態です。
ツメがスリットから出た位置にあります。
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2本のバーはユニット後方のレバーに連結されており、
レバーを介して互いにシーソーのようにスライドします。
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レバーが一方に傾くと、別の昇降機構により
ピックアップが持ち上がりディスクを挟みます。
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レバーが他方に傾くと、
ピックアップが下がります。
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ディスクを開放して
出し入れ可能にします。
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ピックアップユニットの外装を分解します。外装には先ほどの昇降機構が
組み込まれています。篏合を解除すると上下のピースに分離します。
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ピックアップユニット本体は、下側の外装に
スプリングを介して樹脂製ピンで固定されています。
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4本の樹脂製ピンを
全て引き抜きます。
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側面から回路基板に接続されている
フラットケーブルを抜き取ります。
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ピックアップユニット
本体を取り出します。
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発注しておいた交換用の
ピックアップユニットが届きました。
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専門業者に写真を送り
探し出してもらったものです。
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レンズ部だけではなく、ユニット全体の補修
部品です。インシュレーターが付属していません。
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元のユニットからゴム製
インシュレーターを外します。
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新しいユニットに付け替えます。
押し込むだけですが上下があります。
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下側外装に収めます。固定用ピンや
フラットケーブルを元に戻します。
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ピックアップユニットの交換終了です。本来はこれだけの作業を行えば修理は
完了だったのですが、迂闊にも設定を狂わせてしまったCDチェンジャー部の
修復が残っています。手に入れたマニュアルを参考に、逆転に挑みます。
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CDチェンジャー部を覆うカバー(ピッチプレート)を外し
ます。3本のネジと4か所のツメで固定されています。
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左右UDラックの突起をコネクションレバーから
抜きながら、ピッチプレートを取り外します。
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セレクトラック(再生するCDを指定する)が左端にあれば、
上下のフレームを軽く広げるだけで簡単に外れてきます。
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セレクトラックに隠れていたセレクトドライブギヤです。
ラックギヤに噛み合いセレクトラックをスライドさせます。
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マニュアルによると、セレクトドライブギヤに刻まれているこの
三角形マークが組み付け時に正面(手前側)を向いている必要が
あります。セレクトラック動作時にタイミングの基本になります。
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セレクトドライブギヤの隣に、UDラックを駆動するUDドライブ
ギヤがあります。1枚だけ刃先の欠けた歯を正面に向けます。
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この段階でセレクトラックを嵌め込みます。左端にセットし
軽く押さえ付けながら右へスライドさせると嵌まります。
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そのままセレクトラックをスライドさせるとセレクト
ガイドが上昇し、関連するギヤが連動して回転します。
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セレクトラックの右端が本体の前面端に
達した位置でいったん止めます。
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セレクトラックが右端に移動した時、
ピックアップユニットは最上段に来ます。
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予め外しておいたチェンジギヤを取り付けます。
下のピニオンギヤをチェンジレバーの間に入れます。
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タイミングの初期設定が続きます。チェンジギヤのどちらか一方の突起位置を、本体の刻印に
一致させます。左隣にあるジェネバギヤは、溝の方向がUDラックに直角または並行になるよう
調整します。これだけ複雑なタイミング設定が、マニュアル無しで出来るはずがありません。
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設定はまだ続きます。メインギヤの中ほどに
マーク(小穴)が付けられています。
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メインギヤを回転させ、マークが本体
シャフトの方向を向く位置に調整します。
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スピードアップギヤを取り付けます。マーク位置を
メインギヤのマークと同じ方向に合わせます。
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構成部品の設定位置が狂わないよう
ピッチプレートを慎重に被せます。
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正確にツメを嵌め込み、3本のネジを締めます。左右
UDラックの突起をコネクションレバーにつなぎます。
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この段階でピックアップ
ユニットを組み込みます。
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右側のUDラックが、ピックアップユニットの
固定解除位置にあることが必要です。
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UDラックが固定解除位置にあるため、ピックアップの
支持シャフトがハウジングのり欠きから見えています。
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右側UDラックを手前に引き戻し、ピックアップ
ユニットがハウジングから出ないようにします。
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UDラックが右方向へ移動し、ピックアップ支持
シャフトがハウジングの中に隠れています。
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トレイブロックを取り付けます。オープンスイッチレバーや
スピードアップロックがないので簡単に移動できます。
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トレイの前縁を本体前縁に揃え
スピードアップロックを取り付けます。
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ロックの先端がスピードアップギヤに噛み合い、他端が
メインギヤのカム溝に入っていることを確認します。
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オープンスイッチレバーを取り付けて
CDチェンジャー部の復元完了です。
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最低限のケーブルを配線し、
恐る恐る動作確認を行います。
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最上部5段目のトレイが吸い込まれます。続いて
ピックアップが持ち上がりCDを読み出します。
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CDがセットされていないことが検知
され、間もなくトレイが排出されます。
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つかえることもなくスムーズに動作する
ようです。トレイを変更してみます。
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ピックアップユニット全体が最下段まで
下降し、1段目のトレイが引き込まれます。
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5枚のトレイを全て排出し、CDのセット状態を確認
するスイッチがあります。最も複雑な動作をします。
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CDを確認しやすいように1段ずつずらしてトレイが排出され
ます。まるで生き物のように巧妙にかつ精巧に動作します。
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トレイの開閉動作に目を奪われている場合では
ありません。実際にCDが再生されるか確認します。
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一時はCDがセットされても、回転し始めない
深刻な事態に陥っていましたが、大丈夫です。
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交換済みのピックアップにより問題なく
再生されます。CDの変更動作も完璧です。
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ここで舞い上がらず、慎重に
本体を組み上げます。
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組み上がったところで再び
動作確認を行います。
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トレイの確認機能も
完全に動作します。
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実際にはマニュアルが見つかった後も、数回にわたり分解・再組立てを繰り返して
きました。サービスデータ通りに組み立てても、構成部品の初期位置が僅かにずれ
たり、組立て手順を間違えるだけで動作不良を起こします。SA-PM930DVDの
修理経験をそのままSA-PM57MDの修理へ反映し、結果2台とも修理に成功
しました。それどころか、間もなくもう1台、3台目の修理が舞い込んできました。
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