守谷工房のリペア3へ                守谷工房Topへ

遠赤外線パネルヒーター 電源スイッチ交換(2018.10.4)


工房に持ち込まれた遠赤外線パネルヒーターです。オイルヒーターと異なり
非常に軽量でスタイリッシュです。電源スイッチの具合が悪いそうです。

 

Electrolux製EPH812、出力1200Wで
マンションの8畳程度まで対応します。

 

熱をいったんマイカ材に吸収させ、波長6~8μmの
吸収されやすい遠赤外線に変換して放出するそうです。

 

お聞きしていたスイッチの不具合を確認します。
固くて600Wから1200Wに切り替わりません。
 

経年によるスイッチ摺動部分の固着
あるいは部品の摩耗だろうと思います。

 

本体右側のサイドパネルを外し、
電源スイッチ取り付け部を確認します。

 

温度調整用サーモスタットの両側に
通電表示用のLED基板があります。

 

2枚とも取り外します。こちらの出力表示用LED基板は、
中ほどで割れています。後でパターンを修復します。

 

LED基板の下に透明フィルムが
挿入されています。絶縁用でしょう。

 

ヒーターパネル手前の金網状ガードも取り
外す必要があります。固定ネジを緩めます。

 

LED基板の奥にも固定ネジがあります。またサーモスタット
~電源スイッチ全体を覆うカバーも取り付けられています。

 

ガード左側の固定ネジも緩めます。背面パネル、
ヒーターパネル、ガードの3枚で強度を保つ構造です。

 

金網状ガードが外れてきます。これで
電源スイッチにアクセスできるでしょうか。

 

サーモスタットを囲むカバーが、配線を束ねながら
部品の一部にタイラップでつながっています。

 

サーモスタットの固定ネジを緩めないとカバーが
外れてきません。電源スイッチはその下です。

 

さらにヒーターパネルの固定ネジを
1本だけ緩める必要があります。

 

ヒーターパネルは丁寧にセラミック製
ブッシュ(碍子)を介して固定されています。

 

ようやくカバーが外れました。
下に電源スイッチが見えています。

 

電源スイッチは金属製ステーを介し
本体にネジ固定されています。

 

ようやくここまで辿り着きました。
ステーを固定しているネジを緩めます。

 

金属製ステーごと電源スイッチが外れてきます。
外側のツマミ操作で、ツメを介してスライドします。

 

ステーはさらに電源スイッチの金属
プレートにネジ固定されています。

 

電源スイッチツマミのスライドが固くなって
いるので、潤滑剤を吹き付けてみます。

 

OFF・ON・ONの3Pスライドスイッチです。2か所のON位置は600Wと1200Wの
切り替えに使われています。潤滑剤により取りあえず3か所とも切り替わるように
なりましたが、スライドはかなり固いままです。とても修理できたとは言えません。

 

スイッチの内部に摩耗あるいは部品の破損がある
ようです。スイッチ自体を修復できないか試みます。

 

折り曲げ固定されたツメを戻し、
上面金属プレートを外します。

 

樹脂製スライドツマミが外れてきます。内部に極小の
スプリングなどがあるので、注意を払いながら分解します。

 

取り外したスライドツマミの内側です。熱変形に
よると思われるかなり大きな損傷があります。

 

ここまで変形すると、まともにスライドする訳がありません。
飛び出している部分を、ヤスリで削り落としてみます。

 

溝の内側にも変形が及び、側面のおそらくスライド時に
クリック感を持たせるであろう凹凸形状も崩れています。

 

円滑にスライドさせるため摺動部分に
シリコングリスを塗り付けます。

 

この段階で元に戻ってくれれば、
僅かな修理費用で済むのですが・・

 

以前に比べると軽く切り替わるようになりましたが、中間のON位置でクリック感が
ほとんどありません。これでは600Wと1200Wの切り替えや、悪くすると600Wと
OFFの切り替わりが分からなくなります。このままでは安全上の問題が残ります。

 

もはや新品の補修用部品による交換
以外に復活させる方法はありません。

 

製造元のElectroluxに直接問い合わせてみます。
サポートページに「パーツすべてに対応」とあります。

 
市川様

   お問い合わせいただきありがとうございます。 エレクトロラックス・ジャパン お客様サポートでございます。
   このたびは、ご不便おかけしておりますのに回答が遅れ大変申し訳ございません。

   大変心苦しいのですがEPH812は製造終了から年月が経過しているため、 既にサービス期間が終了しております。内部の部品が無く何か不具合が発生した場合 には、修理の対応がいたしかねます。 また、販売部品の在庫があればご提供もしておりましたが、確認いたしましたが 販売でき切る部品もなくなってしまい、販売できません。なお今後の入荷もございません。

   せっかくお問合せいただきましたのに、ご期待に沿えず誠に申し訳ございません。 どうか、ご容赦くださいませ。

取り外したスイッチを調べると「MIYAMA DS-150Y」と
刻印があります。「ミヤマ」は聞いたことがあります。

 
サポートから返ってきた回答(原文まま)です。致し方ありません。
製品組み込み部品の多くはOEM品です、見通しが暗くなります。

 

ミヤマ電器株式会社です。同社のWEBサイトで製品検索すると、販売こそされて
いませんが、「DS-150Y」が製品登録されています。問い合わせてみると、
メーカーに在庫が5個あるとの回答が返ってきました。一挙に展望が開けます。

 

不具合のあるスライドスイッチを取り外します。
保護用の熱収縮tチューブを除去します。

 

半田ごてを当て、赤・黄・青
3本の配線を外します。

 

新しいDS-150Yを取り付けます。当たり前
ですが、寸分違わぬ同一の部品です。

 

赤色の配線を半田付けします。電流容量が
大きいので半田を多めに溶かし付けます。

 

黄色の配線はコードの根元がほつれかけて
いるので、熱収縮チューブで保護します。

 

隣の端子に、同様に多めの
半田を溶かし付けて接続します。

 

最後に青色の配線を接続します。熱容量の
大きい120W半田ごてを使用しています。

 

3本の配線を取り付け終わりました。剥き出し
状態は危険なので、動作確認は後で行います。

 

スライドスイッチに金属ステーを取り付けます。
DS-150Y用に設計された部品です。

 

さらにステーごとスライドスイッチを
本体に取り付け・固定します。

 

カバーを被せ、外しておいたヒーター
パネルの固定ネジを元に戻します。

 

ガードを取り付け、サーモスタットをネジ固定し
2枚のLED基板も元の位置に取り付けます。

 

ここまで組み上げた段階で動作確認を行います。電源スイッチを操作してみます。
新品のスライドスイッチは快調そのもの、実に小気味良く動作します。600Wです。

 

600W動作中を示すLEDが点灯しています。
本体サイドパネルを通してほんのり見えるはずです。

 

サーモスタットのツマミを回転させ設定温度を
上げると、ヒーターの通電表示が点灯します。

 

電源スイッチを1200Wに切り替えてみます。明瞭な
クリック感があり、600W・1200Wの位置が分かります。

 

もう1つのLEDも点灯し、1200W動作中を表示
します。基板が割れたままでは点灯しませんでした。

 

ヒーターパネルがぐんぐん放熱しています、温かい♡です。たかが単純な
電気部品であるスライドスイッチの不具合ですが、仕様の異なる別部品の
流用は実装が非常に難しくなります。在庫が残っていて助かりました。

 

本体を元通り組み立てます。電熱線が赤熱するタイプでは
ないので、ヒーターパネルの寿命はかなり先になるでしょう。

 

照明を落とすと、右側サイドパネル上にLED表示が
ほんのりと浮かび上がります。素敵なデザインです。

 
守谷工房のリペア3へ                守谷工房Topへ