SONY製のAM・FM・TVの3バンドを受信できる小さなラジオです。TVはアナログ
放送当時の音声受信機能で、現在の地デジ放送には対応しません。不具合は、
何故かAM放送が受信できず、加えて内蔵イヤホンの片側が聞こえないそうです。
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製品名は、2002年発売のSRF-R633V。
SONYのWEBサイトに取扱説明書があります。
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手のひらに収まるコンパクトサイズ。しかも
背面にステレオイヤホンが内蔵されています。
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乾電池(単3・1本)をセットし電源を入れてみます。
内蔵スピーカーからFM放送が聞こえてきます。
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TV放送に切り替えます。受信
チャンネルが表示されるだけです。
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AM放送に切り替えます。確かに受信しま
せん。スピーカーから何も聞こえません。
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受信周波数を色々変えても、AM帯
特有の雑音すら聞こえてきません。
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内部にアプローチする
ため本体を分解します。
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本体は表・裏カバーの2ピース構造
です。「⇒」印のあるネジを緩めます。
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ネジ固定は2か所のみです。割と
簡単な構造をしているようです。
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乾電池を抜かないと
カバーが外れません。
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ツメによる巧妙な篏合を解除します。隙間を
探りながらドライバーの先を差し込みます。
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一度解除された篏合が元に戻らない
よう、左右に隙間を広げていきます。
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篏合のある個所がほぼ分かりました。
ツメを折らないよう丁寧に開きます。
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篏合部の設計が不十分ですと、本体
カバー組み付け時の外観を損ないます。
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カバーを分離させます。内部を相互に
接続しているケーブルに注意します。
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内部のケーブルはイヤホンに信号を
送るフレキシブルケーブルのみです。
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回路基板の全体です。デジタル回路用の高密度配線に、バーアンテナ、
イヤホンジャック、可変抵抗器といったアナログ部品が混在しています。
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この枯れた粘着テープはバーアンテナの
配線保護用に貼られていたようです。
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AM放送のみ受信できないことから、
先にバーアンテナ周りを点検します。
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間もなく問題が見つかりました。バーアンテナから出る細い配線のうち2本の
中間線と基板の半田付けが切れています。よほど大きな力や衝撃が加わら
ない限り、半田付けされている接続がなぜ切れてしまうのか不可解です。
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乾電池をセットして電源を入れ、ピンセットで
配線を押さえ付けると、スピーカーが鳴り出します。
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配線を半田付けし直します。元々
半田付け不良だったのでしょうか。
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AM放送受信の問題は解決です。内蔵スピーカーが正常に機能して
いるので、ここまでの作業は順調かつ簡単に進めることができました。
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もう一つの不具合、イヤホンの片側が聞こえない問題に
かかります。この細い配線なので内部断線だと思います。
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内蔵イヤホンは背面側のカバー内部に、
巻き取り機構とともに格納されています。
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回路基板から音声信号を取り出す
ケーブルです。コネクタ部を抜きます。
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イヤホンコードの巻き
取り機構を外します。
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コードが引き出された後、ゼンマイが戻る力に
よりリールが回転してコードを巻き取ります。
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ベースプレートのシャフトにリールを
固定しているロックプレートを外します。
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ベースプレートからリールを外します。内側にR・L2チャンネル分の
音声信号を伝える、ロータリー式電極とブラシの付いた円盤が組み
込まれています。この機構によりリールの回転に自在に対応します。
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円盤の端子部分でイヤホンコードの導通を確認します。
片方は正常で、イヤホンからガリガリ音がします。
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もう片方のコードは導通がありません。イヤホンも
無音です。コードの内部断線に間違いありません。
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コードごとイヤホンを新品に
交換するのが簡単です。
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円盤の溝に組み込まれた
コードを取り外します。
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マイナス側はL・Rチャンネルを
1本にまとめて接続されています。
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本体カバーからコードを抜きます。面倒な機構が
限られた空間に見事に実装されているものです。
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コードの巻き取り機構を
構成する部品です。
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新しいイヤホンを用意します。残念なことに元の
イヤホンのような極薄型の製品は見つかりません。
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どの製品もハウジング部が大きく、本体内に収納でき
そうにありません。さらにLRでコード長が異なります。
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収納できない点はご依頼主に了解いただきましたが、
LRでの長さの違いは解決しなければなりません。
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コードの分岐部を補強している
モールドを切り離し取り除きます。
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モールドによる余分なビニル樹脂を
カッターナイフで削り落とします。
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LRで同じ長さになるよう
コードを切り詰めます。
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コードの先端を処理します。極細の2芯はアラミド
繊維を挟み、表面に絶縁コーティングがされています。
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撚り合わせた先端部分だけ半田付けします。
絶縁コーティングは半田の熱で除去されます。
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接続部分を瞬間接着剤で補強し、
熱収縮チューブを被せて保護します。
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コードの反対側は、不要な
ミニプラグを切り落とします。
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LR2本分の先端を処理します。
マイナス側は1本にまとめます。
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共通のマイナス側を
端子に半田付けします。
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L側コードを引き回して
端子に半田付けします。
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R側コードも半田付けします(L・Rの区別は
確認のしようがないため正確ではありません)。
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円盤面の溝内に各コードを収め、
瞬間接着剤で軽く固定します。
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円盤をリール内に収めたところで・・、大問題に気付きます。まず、コードの太さが
原因で円盤が完全に収まらず、少し持ち上がっています。リールにコードを巻き付けて
みると、やはり太さのせいでリール内に収まりません。一般市販品には、低価格で
一定の強度を保つためかなり太さのあるコードが使用されています。逆に元のイヤホン
コードには、特殊な極細品が使用されています。同等品質のイヤホンあるいはコードを
入手することは・・、残念ながら不可能です。かくなる上は、元のコードを再利用します。
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内部で断線していることが分かって
いますが、問題はその場所です。
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イヤホンを耳に掛ける時のしぐさからして、
イヤホンの根元で断線しやすいと仮定します。
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イヤホンの根元近くでコードを
切断し、先端を処理します。
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やはりアラミド繊維を挟み込んだ
超極細の2芯コードです。
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再利用する部分の導通を調べます。仮定
した通り2本とも途中に断線はありません。
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円盤上の端子に
接続し直します。
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円盤をリール内に収めます。すんなり
入ります、元の設計通りということです。
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ベースプレートと合体させる前に、ロータリー式
端子の表面に接点復活剤を吹いておきます。
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シャフトにリールを差し込み、シャフトの
切り込みにゼンマイ端をかけます。
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ロックプレートを嵌め込みます。脱落を防止する
ため、数か所に瞬間接着剤を差しておきます。
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コードが細くしなやかで、取り回しや
リールへの巻き付けが容易です。
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コードの引き込み口から
コードを外へ出します。
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ゼンマイを余分に巻き上げ、コード巻き取りに余裕を持たせます。ベース
プレートをネジ固定し、コードの引き出し、巻き取り具合を確認します。
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イヤホン本体は新品を利用します。本体の
付け根に近い部分でコードを切り落とします。
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コード端を処理します。撚り合わせた
芯線の先端部だけ半田を乗せておきます。
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忘れないうちに熱収縮
チューブを通しておきます。
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予め半田を乗せた先端部どうしを
半田付けにより接続します。
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取りあえずイヤホンの接続作業を終えたので、
実際に音声が聞こえるかここでテストします。
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ベースプレートから出るフレキシブルケーブルを回路基板
上のコネクタに差し込みます。ケーブル長がぎりぎりです。
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左右チャンネルとも問題
なく音声が聞こえます。
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コードの接続部を仕上げます。
瞬間接着剤を充填し補強します。
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熱収縮チューブを被せ
接続部を保護します。
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イヤホン本体が大きくラジオに収納できない点が残念ですが、
左右とも信号伝達が復活し、AM放送も受信できるようになりました。
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今後もし薄型のイヤホンが入手できたら、引き込みコードの先端で
切り離して新しいイヤホンに付け替えることもできましょう。その際、
ラジオ本体や巻き取り機構を分解する必要はありません。最後に
再度動作確認し、本体全体を軽くクリーニングして作業終了です。
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