愛らしい形をした鉛筆削り器(機?)が届きました。犬をかたどっていることに正直しばらく
気付きませんでした。昭和中期の製品でしょうか、ノスタルジックな雰囲気が漂います。
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オレンジ色カバーの部分は耳、削り屑ケースの
前部は鼻で、鼻の穴から鉛筆を差し入れます。
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内田洋行製、製品名は「ワンワン」
です。これを見て犬だと分かりました
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全体が鉛筆芯の黒鉛で汚れています。底面の
ゴム足がひとつ欠けており、ガタガタ安定しません。
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ご依頼主から知らされていましたが、内部から
このピンのような部品が出てきたそうです。
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一度動作確認を行ってみます。
鉛筆の代わりに割り箸を使います。
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鼻の穴(?)から割り箸を差し入れると、電源が入り
両目に相当する部分が点灯し、モーターが回転します。
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中でモーターが回転しブレードも勢いよく回転しているようですが、
割り箸は全く削れる様子がありません。ブレードに接触していないようです。
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不具合の原因を探るため、
分解して内部を調べます。。
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樹脂製部品の造形が非常に大雑把です。ネジ受けの
位置が遠く、異常に長いネジで固定されています。
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頭部~両耳にあたる本体後部カバーを
外します。組み付けが実に単純です。
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底部3本のネジを緩め、モーターおよびブレードユニットを
引き出します。点灯する両目はLEDではなく電球です。
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ローターや配線が剥き出しの露出型電動機
です。技術が丸々見えていた頃の装置です。
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ブレードを確認できる状態で回転させてみます。
特に問題ありません、何故削れないのでしょう。
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鉛筆差し込み口のステーを外してみます。裏側に
電源を入れるスイッチが取り付けられています。
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電源のON・OFFがかなり不安定です。
スイッチが接触不良を起こしているようです。
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ブレードユニットを引き抜こうとしますが
何かに固定されているようです。
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ユニットにロータリーブレードを固定
しているネジです。緩めてみます。
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ブレードは外れるも、ユニット本体は固定
されたままです。まだ奥にネジがあります。
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ドライバーを差し入れて2本のネジを
緩めますが、このネジでもありません。
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モーターの取り付けフレーム側に入ったところで、ブレードユニットの回転シャフトに
大きな平ギヤが取り付けられています。モーター軸のピニオンに噛み合い減速します。
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回転シャフトの先端に六角ネジが
ねじ込まれています。緩めます。
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回転シャフト先端近くに溝が刻まれているようで、
ギヤが抜けないようにバネ状のピンが入っています。
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ようやくブレードユニットが分離しました。
内部に長年の埃が蓄積しています。
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削り屑の飛散防止カバーを兼ねた
アウターからブレード部を引き出します。
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外観上、ロータリーブレードに特に問題は
ありません。歯の切れ味も悪くありません。
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アウターおよびインターナルギヤは
切削に無関係なので、元に戻します。
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先ほど六角ネジを外した回転シャフトの
先端です。ネジ穴は貫通穴になっています。
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一緒に送られてきたピンのような部品が
径・長さとも合致します。差し込んでみます。
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ロータリーブレードの先端部分です。脇から
延びる金属板が衝立のようにシャフトと接します。
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金属板は鉛筆の先をブレードに押し当てる役割を果たし
ます。先ほどのピンは反対側から金属板を支えます。
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分解していると全体的に固定ネジが緩んでいます。
組み付けにガタが生じ、ピンが脱落したのでしょう。
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鉛筆が削れないのはピンの脱落が原因・・紛失しなくて
本当に良かったです。古いグリスを掃除し入れ替えます。
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ブレードユニットを元通りに組み
付け、平ギヤを嵌め込みます。
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六角ネジは歯車の固定用ではなく、中に入れた
ピンが抜けないようにするためのものです。
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電源スイッチの接触不良を改善します。
隙間から潤滑剤を吹き込みます。
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再度、動作確認を行います。スイッチが一発で
入り、割り箸が中に引き込まれて行きます。
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周囲にこれだけの削り屑を飛散させ、割り箸が見事に削り上がりました。
芯の細さ調整機能、自動停止機能など何もない初期の頃の製品ですが、
ロータリーブレードが鉛筆を綺麗に削る機構には、ただ感心させられます。
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「ワンワン」の外装カバーに戻ります。洗剤で
全体を水洗いし、黒っぽい汚れを落としました。
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モーター部分を中に収めます。電源コードの
半田付けが切れかけているので修理します。
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底部から3本のネジでモーターフレームを
固定します。緩まないよう十分トルクを加えます。
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オレンジ色のカバーも取り付けます。汚れは
落ちたものの艶が失われくすんでいます。
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底面のゴム足(吸盤)が1個脱落し、使用時にガタ付き
ます。有り合わせのゴム足で高さだけ合わせます。
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取りあえずガタ付きは解消しました。残って
いる3個の吸盤で何とか固定出来そうです。
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割り箸ではなく、鉛筆で動作確認を行い
ます。先が丸くなった鉛筆を用意します。
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順調に削れています。両目が
点灯して動作中を示します。
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綺麗に削れました。敢えて難を言えば、動作中の振動がやや大きく、
芯の先端が折れてしまわないか心配です。やはり年代物ですので、
回転機構全体に摩耗やガタが生じていることが原因かと思います。
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削り屑ケースの中を見ると、鉛筆の
削り屑が懐かしい匂いを放っています。
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ご依頼主にとって「思い出の品」だそうです。
コンパウンドをかけて少しでも輝きを取り戻します。
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限られた時間では十分な光沢を復活させるまでは至りません。それでも
工房に届いた時点と比べると、見違えるほど綺麗になったと思います。
家電製品のデザイン系譜に残しておきたい、愛嬌と哀愁に満ちた製品です。
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