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電動シャープナー修理(2018.11.11)


愛らしい形をした鉛筆削り器(機?)が届きました。犬をかたどっていることに正直しばらく
気付きませんでした。昭和中期の製品でしょうか、ノスタルジックな雰囲気が漂います。

 

オレンジ色カバーの部分は耳、削り屑ケースの
前部は鼻で、鼻の穴から鉛筆を差し入れます。

 

内田洋行製、製品名は「ワンワン」
です。これを見て犬だと分かりました

 

全体が鉛筆芯の黒鉛で汚れています。底面の
ゴム足がひとつ欠けており、ガタガタ安定しません。

 

ご依頼主から知らされていましたが、内部から
このピンのような部品が出てきたそうです。

 

一度動作確認を行ってみます。
鉛筆の代わりに割り箸を使います。

 

鼻の穴(?)から割り箸を差し入れると、電源が入り
両目に相当する部分が点灯し、モーターが回転します。

 

中でモーターが回転しブレードも勢いよく回転しているようですが、
割り箸は全く削れる様子がありません。ブレードに接触していないようです。

 

不具合の原因を探るため、
分解して内部を調べます。。

 

樹脂製部品の造形が非常に大雑把です。ネジ受けの
位置が遠く、異常に長いネジで固定されています。

 

頭部~両耳にあたる本体後部カバーを
外します。組み付けが実に単純です。

 

底部3本のネジを緩め、モーターおよびブレードユニットを
引き出します。点灯する両目はLEDではなく電球です。

 

ローターや配線が剥き出しの露出型電動機
です。技術が丸々見えていた頃の装置です。

 

ブレードを確認できる状態で回転させてみます。
特に問題ありません、何故削れないのでしょう。

 

鉛筆差し込み口のステーを外してみます。裏側に
電源を入れるスイッチが取り付けられています。

 

電源のON・OFFがかなり不安定です。
スイッチが接触不良を起こしているようです。

 

ブレードユニットを引き抜こうとしますが
何かに固定されているようです。

 

ユニットにロータリーブレードを固定
しているネジです。緩めてみます。

 

ブレードは外れるも、ユニット本体は固定
されたままです。まだ奥にネジがあります。

 

ドライバーを差し入れて2本のネジを
緩めますが、このネジでもありません。

 

モーターの取り付けフレーム側に入ったところで、ブレードユニットの回転シャフトに
大きな平ギヤが取り付けられています。モーター軸のピニオンに噛み合い減速します。

 

回転シャフトの先端に六角ネジが
ねじ込まれています。緩めます。

 

回転シャフト先端近くに溝が刻まれているようで、
ギヤが抜けないようにバネ状のピンが入っています。

 

ようやくブレードユニットが分離しました。
内部に長年の埃が蓄積しています。

 

削り屑の飛散防止カバーを兼ねた
アウターからブレード部を引き出します。

 

外観上、ロータリーブレードに特に問題は
ありません。歯の切れ味も悪くありません。

 

アウターおよびインターナルギヤは
切削に無関係なので、元に戻します。

 

先ほど六角ネジを外した回転シャフトの
先端です。ネジ穴は貫通穴になっています。

 

一緒に送られてきたピンのような部品が
径・長さとも合致します。差し込んでみます。

 

ロータリーブレードの先端部分です。脇から
延びる金属板が衝立のようにシャフトと接します。

 

金属板は鉛筆の先をブレードに押し当てる役割を果たし
ます。先ほどのピンは反対側から金属板を支えます。

 

分解していると全体的に固定ネジが緩んでいます。
組み付けにガタが生じ、ピンが脱落したのでしょう。

 

鉛筆が削れないのはピンの脱落が原因・・紛失しなくて
本当に良かったです。古いグリスを掃除し入れ替えます。

 

ブレードユニットを元通りに組み
付け、平ギヤを嵌め込みます。

 

六角ネジは歯車の固定用ではなく、中に入れた
ピンが抜けないようにするためのものです。

 

電源スイッチの接触不良を改善します。
隙間から潤滑剤を吹き込みます。

 

再度、動作確認を行います。スイッチが一発で
入り、割り箸が中に引き込まれて行きます。

 

周囲にこれだけの削り屑を飛散させ、割り箸が見事に削り上がりました。
芯の細さ調整機能、自動停止機能など何もない初期の頃の製品ですが、
ロータリーブレードが鉛筆を綺麗に削る機構には、ただ感心させられます。

 

「ワンワン」の外装カバーに戻ります。洗剤で
全体を水洗いし、黒っぽい汚れを落としました。

 

モーター部分を中に収めます。電源コードの
半田付けが切れかけているので修理します。

 

底部から3本のネジでモーターフレームを
固定します。緩まないよう十分トルクを加えます。

 

オレンジ色のカバーも取り付けます。汚れは
落ちたものの艶が失われくすんでいます。

 

底面のゴム足(吸盤)が1個脱落し、使用時にガタ付き
ます。有り合わせのゴム足で高さだけ合わせます。

 

取りあえずガタ付きは解消しました。残って
いる3個の吸盤で何とか固定出来そうです。

 

割り箸ではなく、鉛筆で動作確認を行い
ます。先が丸くなった鉛筆を用意します。

 

順調に削れています。両目が
点灯して動作中を示します。

 

綺麗に削れました。敢えて難を言えば、動作中の振動がやや大きく、
芯の先端が折れてしまわないか心配です。やはり年代物ですので、
回転機構全体に摩耗やガタが生じていることが原因かと思います。

 

削り屑ケースの中を見ると、鉛筆の
削り屑が懐かしい匂いを放っています。

 

ご依頼主にとって「思い出の品」だそうです。
コンパウンドをかけて少しでも輝きを取り戻します。

 

限られた時間では十分な光沢を復活させるまでは至りません。それでも
工房に届いた時点と比べると、見違えるほど綺麗になったと思います。
家電製品のデザイン系譜に残しておきたい、愛嬌と哀愁に満ちた製品です。

 
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