シュレッダー(書類細断機)の詰まりを修理します。モーターは微動だにせず
正転も逆転も全くできない詰まり方です。扱い方を間違えると深刻な事故に
つながる機械ですが、まして修理時はよほどの注意を払わねばなりません。
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製品型番に「Microcut Shredder」とあります。
秘匿性保持のためとりわけ小さく細断します。
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シュレッダー部を引き上げ
逆さにして内部を確認します。
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内部に溜まっていた細断屑が散乱します。
固定ネジを緩め上部カバーを外します。
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通常の紙製書類細断と、CD・DVDの
樹脂製円盤も細断もできる構造です。
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ブレードの隙間に大量の細断屑が噛み込んでいます。ネット上の修理事例では
ドライバーの先やペンチで少しずつ取り出す方法が採られていますが、それでは
まるで歯が立たない詰まり方です。ブレードの奥まで完全に詰まっています。
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カバーを外しシュレッダー
機構部を取り出します。
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詰まり以上に深刻な問題が見つかりました。モーターの
動力を伝達する金属製ギヤの1枚が脱落しかけています。
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シャフトへの固定が緩み、ギヤが
シャフト内で大きく遊んでいます。
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動力伝達部の外側
フレームを分解します。
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左右両面から各々2本の
ネジで固定されています。
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伝達トルクが大きくない初段部分は
樹脂製のギヤが使用されています。
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伝達トルクが大きくなる3枚目以降に
金属製ギヤが使用されています。
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ぐらついているギヤを通るシャフトです。
周囲がかなり変形・摩耗しています。
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ギヤが空回りしないようシャフト周に切り欠きがあります。先端近くにはスナップリングを入れる
溝が加工されています。ギヤ側の軸穴も、シャフトの切り欠きに合わせた形状に加工されて
います。しかし、長時間過大な負荷が加わり続けたせいか、シャフトも軸穴も変形しています。
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ギヤとシャフトを強く固定する必要があります。溶接したい
ところですが、スパークによる電気部品の破損が心配です。
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シャフトの周囲全体に半田が流れ込めば、
かなりの強度に達すると思われます。
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ブタンバーナーによる半田付けで固定します。先に
ギヤの軸穴周りに半田を溶かし付けておきます。
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続いてシャフトの周囲にも少量の
半田を溶かし付けておきます。
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ギヤをシャフトには嵌め込み
垂直の位置に保ちます。
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シャフト周りを加熱しながら半田を追加し、
軸穴との隙間に半田を行き渡らせます。
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狭い隙間が半田で充填された状態でギヤとシャフトが固定されています。遊びが大きい
とはいえ切り欠きによる空転防止も効いているので、十分な強度が期待できます。
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元に戻り、ブレード部の強固な
詰まりを解消しなければなりません。
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モーターのトルクでも全く回転させられ
ない以上、少々乱暴な方法を用います。
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最終段の金属製ギヤの歯にマイナスドライバーの
先を掛け、ドライバーの柄尻をハンマーで叩きます。
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強く叩いてもギヤは回転しません(回転したように
見えません)。しかし、これだけの屑が落ちてきます。
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落ちた屑をいったん
掃除機で吸い取ります。
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反対側の歯にドライバーを当て、ギヤが
逆方向に回転するようハンマーで叩きます。
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これだけの屑が落ちてきます。
吸取ってから再び逆方向に叩きます。
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繰り返すこと数十回、1時間ほど同じ作業を
続けると落ちる屑の量が少なくなってきます。
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ギヤもほぼ360度回転します。ブレード表面に
紙の繊維が付着しているのか、回転は重いままです。
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摩擦低減用のシリコンスプレーを吹き付け
ます。CRCはオイル分が残るのでダメです。
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4段のギヤによる減速比を考えれば、モーターが発生
するトルクで十分回転し、強力に細断できるはずです。
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モーターに通電してみます。減速ギヤ、ブレードともに非常に滑らかに
回転しています。回転しながらブレードの隙間からさらに屑が落ちてきます。
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残っていた屑や繊維を完全に取り除き、
その後、元通りに本体を組み上げます。
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実際に書類を細断してみます。
広告用のやや厚めのコート紙です。
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滑らかに吸い込まれていきます。
心地良いマイルドな細断音です。
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細断速度は決して速くはありませんが、モーター音は
細断中一定で、負荷によるトルク変動もないようです。
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細断速度を抑えているのは、微細断(マイクロカット)用
だからでしょう。見事に微細断された屑が溜まっています。
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作業中に付着したグリス、元からの
汚れなどを丁寧に掃除します。
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試運転は何の問題もありません、快調そのものです。ギヤとシャフトを固定した
半田付けがどこまで耐えられるか、やや気になりますが・・。シュレッダーを製作
する各メーカーとも、購入者による分解や整備は推奨していません。危険が伴う
ことから禁止しているメーカーもあります。くれぐれもご留意下さいますよう。
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