以前にも同型のスチームアイロンを修理させていただいたことがあります。確か
デロンギ社製でしたが、今回はAriete(アリエテ)製です。その後アリエテ社は
デロンギ社に吸収されたそうです。両者ともイタリアにある電機メーカーです。
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縫製や仕立ての業務用途に耐える仕様で、仕事に
支障が出るので何とか修理して欲しいとのご依頼です。
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一定の重量があり、一般家庭用には大きいでしょう。
しかし、布地上を滑らせた時の安定性が抜群です。
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アリエテのWEBページは、デロンギ社と
別に現在も運用されています。
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その中に同機の後継機種が掲載されています。製品名
「Vapor Plus」で若干デザインを変更しています。
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電源が付いたり付かなかったりする不具合は
ほぼ電源コードの内部断線が原因です。
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スチームが止まらない不具合は、開閉弁の
分解を伴うので無理な修理は見合わせます。
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さらに背中側にある温度調整ダイヤルが、
非常に固くて回転させることができません。
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背中側カバーはこのスター型特殊ネジで
固定されています。専用ビットを当てます。
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欧米の製品には、日本製のようにツメによる
入り組んだ篏合はほとんど見られません。
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僅かなネジを緩めるだけで外れてきます。
それでも底部の左右でツメが噛んでいます。
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ドライバーの先を入れると
簡単に解除できます。
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バイメタルによるサーモスタットを
中心に配線がまとめられています。
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先にアイロンヒーターの導通を確認します。ヒーター内部の電熱線の断線は即、修理
不能を意味します。12オーム程度を示しているので、容量750Wにほぼ合致します。
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本体上部カバーを外します。スチームボタンと
給水口の中間に固定ネジがあります。
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ネジ頭にカルキが集積しサビが
出始めています。緩めます。
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カバーを引き上げてみますが
背中側が外れてきません。
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背面内部にも固定ネジがあります。先に
電源コードホルダーの固定ネジを緩めます。
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ホルダーを引き出すと、上部カバーを
固定しているネジがもう1本あります。
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このネジは温度調整ダイヤルの
固定も兼ねています。緩めます。
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長年活躍してきたアイロンは、内部にカルキ粉や埃が集積しています。
掃除機でひと通り清掃します。この状態で温度調整ダイヤルは軽く回ります。
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上部カバーを開けた時、内部から
樹脂製部品の破片が出てきました。
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給水口の内側円筒部分が一部
欠けています。接着剤で補修します
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押し下げることで内部のスチーム弁を
開放するピンです。動きが鈍くなっています。
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ピン周囲の表面が腐食しカルキが付着しています。
スチーム漏れは元の位置に戻り切らないためでしょう。
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腐食部分を研磨し潤滑剤を付けて
馴染みを取ります。軽く上下します。
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スチーム量調整ダイヤルや
押しボタンの動きも整えます。
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背面の温度調整ダイヤルが固いのは、固定金具の
位置がずれて強く押さえ付けているためです。
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上部カバーを元に戻し、ダイヤルが
軽く回転する位置で固定します。
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電源コードのホルダーを
元の位置に固定します。
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電源コードの本体付け根部分がかなり
疲労しています。取り付けし直します。
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コード端の固定ネジを緩め、さらに
ホルダー手前の固定具を外します。
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ゴム被覆の上から強力に固定しています。
被覆に固定痕がくっきり残っています。
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仕舞い込まれている電源コードを引き出し
ます。コード端に金具を巻いています。
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ホルダーのチューブ内を引き抜きます。チューブの
適度な可撓性がコードの根元を保護します。
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引き抜いてみると、被覆の一部に擦れた跡があり
ます。内部断線している可能性を否定できません。
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繰り返しストレスが加わった部分を
余裕を見込んで切り落とします。
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再び保護チューブに通し
内部に引き込みます。
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コード先端を6・7mmほど処理します。
金具を巻き付ける代わりに半田上げします。
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接続端子に差し込みネジを締め込みます。半田上げしているので
十分に固定できます。直下にあるサーモスタットの設定に手を加え
ないよう注意します。製造元で厳密に調整され安全が保たれています。
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限られた空間にコードを丁寧に収め、
固定具をしっかり取り付けます。
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本体付け根部分の電源コードが新しく
なりました。断線の心配はありません。
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よく見ると差し込みプラグ側の根元にも
疲労があります。こちらも修理します。
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内部断線のありそうな部分を切り捨て、
コード端を処理して圧着端子を取り付けます。
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交換用の差し込みプラグを用意します。
コードと同色の黒を選びます。
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プラグを分解し圧着端子を
ネジで接続・固定します。
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プラグの根元近くでコードにチューブを被せると
より耐久性が向上します・・が、忘れました。
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電源コードをコンセントに接続するとパイロットランプが
点灯します。付いたり付かなかったりする気配は皆無です。
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温度調整ダイヤルも軽く
回転し、操作が楽です。
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最高温度(スチーム域)に設定すると多少のスチームが
漏れ出てきます。ボイラーを一定圧以下に保つためです。
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スチーム吹き出しボタンを押してみます。
外側のダイヤルで吹き出し量を調整できます。
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さすがに業務にも耐える仕様です。スチームの吹き出し量が
半端ではありません。手放せない理由が分かります。
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本体各部が手垢やカルキで
うっすらと汚れています。
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耐熱性の高品質樹脂製で汚れが付きにくいの
ですが、逆にいったん汚れるとなかなか落ちません。
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アイロン面はテフロンなんざでなく、アイアン(鉄)です。
付着した汚れと一部傷に沿って生じたサビを落とします。
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金属用研磨剤を使うと
一挙に光沢が戻ります。
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完全ではありませんがかなり綺麗になりました。清潔感のある白、
メイド・イン・イタリーを彷彿とさせる機能的かつ優れたデザインです。
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ボイラー容器の損傷やスチーム弁の摩耗など、使用者に直接危険が及ぶ可能性がある
故障の場合、不用意に修理をお引き受けするわけにはいきません。製造元が厳重な
安全検査の上販売しているからです。無理に修理にこだわらず、廃棄して新しく安全な
製品に買い換え下さるようお伝えすることも工房の役割ではないかと考えております。
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