この1年間で何本のヘアアイロンを修理させていただいたでしょう。そのほとんど
全てに共通するのが、電源が付いたり切れたりする不具合です。電源コードが
本体付け根部分で内部断線しています。今回もまたいつもの修理かと思いつつ・・
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電源コードの本体付け根部分を真っ先に点検します。
コードが絡まないよう、自在に回転するコネクタです。
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自在コネクタがコードのストレスを解消するので、付け根
部分に傷みが見られません。内部断線はないようです。
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それでも電源が付いたり切れたりするのは、
内部に何か別の不具合があるからです。
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自在コネクタ外周の樹脂バンドを外し、左右
外側カバーを合体させるネジを緩めます。
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カバー円筒部が左右に分離し、中から自在コネクタを
取り出します。ソケット内でプラグが回転する構造です。
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ソケットの内側に金属の小片が落ちています。金属
部品の一部のようで、破断して脱落したようです。
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ソケットの内部を観察すると、すぐに破断元の部品が分かりました。プラグ外周部と
先端部に取り付けられた電極に、ソケット内部に組み込まれた電極切片がそれぞれ
接触することで、AC電源を内部回路に供給する構造です。プラグ先端部を左右から
挟む2枚の金属製切片のうち、片側1枚が脱落しています。小片はその残骸です。
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元より電気的接触が十分ではなかったようです。
繰り返し火花が飛び、内部が汚れています。
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このソケット部分を修理しなければなりません。
先に配線の保護チューブを取り除きます。
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配線の接続部にフェライトコアが入れられて
います。スパークが飛ぶことは前提のようです。
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ソケット下部に突き出ている金属
切片の端子から配線を外します。
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金属切片の一部が、ソケット下部のスリットから
突き出て端子の役を果たしています。押し戻します。
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ソケット外部に引き出します。左右2枚の
切片のうち片側1枚が失われています。
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プラグが回転しても、先端の電極を2枚の切片で
挟み込んでいるので、電気的接触が維持されます。
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薄く可撓性に富む銅合金製なので、回転や振れに
追随できますが、片側1枚では厳しいでしょう。
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また、金属疲労により弾性が低下すると追随性も
損なわれます。折り曲げ部分を補強してみます。
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折り曲げ内側に半田を盛り、部分的に剛性を
与えることで全体の弾性を改善します。
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切片が無い側にプラグ先端が振れても、片側の切片が
電極に追随して接触を維持できれば良いわけです。
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念のため折り曲げ部分の外側にも
半田を回して補強します。
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先ほどまで今にも折れて落ちそうだった切片が、
半田による補強で剛性+弾性を取り戻しました。
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修理した切片をソケット内部に戻します。
交換のできない部品なので慎重に作業します。
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相変わらず金属製切片は1枚のままですが、切片の位置がプラグ先端の中心に
かかっているので、(取りあえず)電極と接触できるはずです。実際の使用時に、
回転に加えプラグ軸が振れた場合、切片が上手く撓んで追随出来るか心配です。
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フェライトコアスリーブを入れて
配線を半田付けします。
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電熱器具なのでコードの接続には十分
信頼性を持たせなければなりません。
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フェライトコアの上から熱収縮
チューブを被せ、熱処理します。
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本体外側カバーの円筒部にソケットを収め
ながら、狭い内部空間に配線を入れ込みます。
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本体を組み上げて修理の成果を確認します。
電源が入りました、(取りあえず)通電しています。
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・・が、電源コードを回転、揺らしてみると、
簡単に電源が落ちてしまいます。ダメです。
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やはり片側1枚だけの切片では、電気接触が維持でき
ないようです。一瞬の切断で回路がOFFになります。
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もっと信頼性のある修理方法でなければいけません。
外装保護シートの一部を剥がし、配線もやり直します。
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片側1枚だけ残っていたはずの
切片が、既に無くなっています。
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残っていた1枚も、金属疲労が進行し破断寸前だった
ようです。半田による補強はさして意味がありませんでした。
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やはり切片をしっかり修復しなければいけません。
修復用材料として0.1mm厚の真鍮版を用意します。
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切片用に幅2mmの板を切り出します。歪みが生じない
ように、カッターナイフ・アクリルカッターでカットします。
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どうしてもある程度のカールが残ります。
平滑な面の上でしごいて平板にします。
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プラグ先端の電極を上手く挟み込むよう、
長さと角度を調整しながら折り曲げます。
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脱落した元の切片を参考にしながら形状を整えます。プラグ先端部を捉えやすいように
切片の先を折り曲げて僅かに開きます。この修復作業に失敗すると、端子部分も含めて
切片の全体を展開図から製作することになります。難度が上がるので避けたいものです。
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電極を挟み込む切片部分を、
端子を含む基部に取り付けます。
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両部品とも接合面に半田を引いておき、
フラックスを付けて加熱のみで接合します。
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ソケットに押し込みます。スリット幅が金属板の
厚みぎりぎりなので、半田が残っていると通りません。
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何とか行けるのではないでしょうか。左右両側から挟み込む
ことで、電気的接触・追随性が格段に向上するはずです。
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配線に使用するコードは全て新しい
ものに交換します。接続を確実にします。
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端子にコードを半田付けし、フェライトコア
スリーブを接続部根元に引き寄せます。
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熱収縮チューブを被せて接続部を保護
します。フェライトコアの固定も兼ねます。
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電気的接触不良は、丁寧に作業すれば
必ず解消できるトラブル(のはず)です。
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回路基板の電源接続部です。ランドの周囲を
整え、新しいコードを確実に半田付けします。
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本体先端部を覆う保護シートが妨げになり、外側カバーに
隙間を開けて作業してきました。元通りに組み上げます。
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コネクタ内切片の修復は、板金加工のような様相です。コネクタが本体円筒部に
収まると、切片やプラグの様子を外部から観察することは不可能です。あくまでも
実装状態で修理の結果を確認するしかありません。不具合があれば再度分解です。
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電源スイッチを押すと、通電して現在の
アイロン面温度が表示されます。
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温度設定を高温側に変更します。表示のバックライトが
赤色に変化し昇温します。ここで電源コードを動かします。
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かなり激しくコードを揺らしても電源が切れません。
切片が電極に追随し、接触が維持されています。
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コードを回転させたり、上下左右に激しく揺さぶったり、
何度もテストしますが・・、切れません、今度はOKです。
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実は最初の修理の後、ご依頼主に一度修理品をお返ししました。「まだ電源が切れる」
とのご指摘をいただき、後半の再修理となりました。納品前の動作確認が甘かったことを
反省しております。2往復分の配送時間も含め大変長くお待たせするなど、ご依頼主には
ご迷惑をおかけしました、お詫び申し上げます。「取りあえず」修理を終えてはいけません。
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