初めて手にする(私にとって)妙なものが工房に届きました。既に高齢者(65歳以上)と
なった自分には訳が分からないものが沢山あります。ワイヤレススピーカーと呼ばれる
製品だそうで、WiFiやBluetoothで接続しスマートフォンなどの音楽を再生することが
出来ます。TechnicsやPioneer時代のおっさんには、これをスピーカーだと認めるのは
困難です。充電が出来なくなり、修理不能であれば捨ててもよいとおっしゃっています。
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beatspillなる製品で、手にした瞬間に
その品質の高さが伝わってきます。
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Apple社の製品、ということも知りませんでした。お預かり
したのはbeatspill2.0で、既に新モデルが出ています。
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その充電用端子はといえば・・、悪名高い
micro USB Type-Bが付いています。
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内側の端子板を点検すると、内部で
破損しているようでぐらぐらします。
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タブレットPCでUSB端子を修理したことが
ありますが、非常に難度の高い作業です。
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その時は、USB端子は修理できたのに
PCの電源が入らない残念な結果に。
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本体の分解を進めます。最初は分解のきっかけすら
分かりませんでしたが、ネット上に手順があります。
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ゴム製カバーを引き剥がし、
隠れていた固定ネジを緩めます。
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最初の2本を外すと、本体中央に巻き
付けられているベルトを起こせます。
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無理をせず本体に沿わせ
ながら引き抜きます。
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音量を増減する押しボタン
スイッチのカバーを外します。
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ソースとの優先接続用のUSBtype-A端子です。
その両側に化粧バンド固定用のネジがあります。
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ネジを緩めると2本の化粧
バンドを外すことが出来ます。
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引き剥がしたゴム製カバーの下に本体を
組み付けている4本のネジがあります。
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ネジ穴の位置、その形状にも
成型品質の高さが感じられます。
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ようやく本体が上下に分離します。精密な
勘合により両者は隙間なく合体します。
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途中まで本体を分離したところで
2本のケーブル接続に気付きます。
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フラットケーブル、コネクタ
とも慎重に引き抜きます。
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片側に4個構成のスピーカーユニット、反対側に回路基板と
2個のバッテリーが組み込まれています。実に精巧な作りです。
スピーカーは口径に対して大型で磁力の強そうなマグネットを
備え、見た目以上に本体を重くしているのはこのためです。
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破損したUSB端子はこの基板の
裏側にあります。基板を取り外します。
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USBtype-A端子は回路基板上に含めることが出来ず
別の小型基板を用意してケーブル接続されています。
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小型基板は差し込んであるだけです。
回路基板を固定しているネジを緩めます。
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基板を固定する本体内面の傾斜に合わせ、
ネジを固定する角度をセットするワッシャです。
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回路基板を引き出します。コネクタを介して
バッテリーとケーブルで接続されています。
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コネクタを引き抜くと、回路基板が
本体から完全に分離します。
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Apple社が作る(作らせる?)製品らしく
高密度で高品質な回路基板です。
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タブレットPCやスマートフォン並みの
SMD(表面実装部品)が多用された基板です。
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基板の裏側(実装時の下側)です。左側に赤色樹脂製のアナログ入出力端子、
そして右側にプロセッサチップと問題のmicro USBtype-B端子が見えます。
壊れているとはいえUSB端子には樹脂製の補強カバーが取り付けられています。
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充電プラグの抜き差しに対し、補強カバーはあまり
役立たなかっということでしょうか、取り外します。
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micro USBtype-B端子が露わになりました。取り
付け方向を変えるため補助基板が使われています。
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USB端子は小型の補助基板に固定し、あらためて補助基板を
回路基板に取り付けることで方向を変えています。みるからに
強度がなさそうな実装です。本当に壊れているのでしょうか?
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USB端子の端に指をかけてみると、奥側が浮き上がります。5本の信号用端子と
その両側にあるフレームの足、全てが基板から剥がれています。半田付けがこのように
簡単に剥がれるものでしょうか・・、USB端子とはいえ組み立て工場の自動ソルダーで
精密に半田付けされます。使用される半田量が厳密に(最小限に)管理されているので
手作業による半田付けよりも層厚が極端に薄く、強度が出ないのではないでしょうか。
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さて、補助基板が介在するためUSBの信号端子部分に
手が届きません。いったん取り外す必要があります。
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回路基板との半田接続部分は何か粘着性の
コーティング樹脂でがっちり覆われています。
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このコーティング樹脂が予想外に強力です。引き剥がすことも
削ることも出来ず、半田ごての熱で溶かしながら取り除きます。
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ようやく接続端子の半田付け部分が出て来ました。
盛られている半田を出来るだけ吸い取ります。
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補助基板の両面に端子があり、半田付けを
徐々に解除しながら補助基板を引き抜きます。
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補助基板が差し込まれているスリット
です。上下に接続端子が並んでいます。
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回路基板から分離した補助基板です。信号用端子が完全に離れている
ことが分かります。この方向からであれば何とか半田ごてを入れられそう
です。しかし、並みの半田ごてではとても作業できそうにない狭さです。
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実は工房ではこの年明けから新しい半田ごてを使用しています。セラミック
ヒーターと自動温度調節機能を備えた、しかも格安の製品です。自動温度
調節は、こて先の温度が上がり過ぎないようにすることよりも、作業による
温度低下を食い止める働きが重要です。熱が奪われかけるとヒータ電流が
瞬間的に増加するので、こて先の温度変化がかなり小さくて済みます。
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狭い隙間で作業するため先端の細いこて先を使用します。
熱容量が小さいので自動温度調節機能が効果を発揮します。
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少量のフラックスを塗りつけてから、5本の信号用端子に
一息で熱を加えます。油断すると隣同士を短絡させます。
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上手く・・・行ったようです! ルーペを使って確認すると、信号用
端子に5本とも半田がまとわりついています。すぐ手前に表面実装
されているチップ部品(TR)も、こて先が触れた痕もなく無事のようです。
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信号用端子はそれ自体にほとんど強度があり
ません。両側を支える金属フレームも固定します。
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左右とも半田を盛り付けて
しっかり補強します。
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実際に修復できているのか、USB
プラグを差し込んで確認します。
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補助基板側に電圧が出ています。
信号用端子の接続は修復できたようです。
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基板を元通りに組み上げ、本体に取り
付けた状態で動作確認してみます。
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さすがにApple社の製品です。充電が開始
されるとプラグの根元が赤く点灯します。
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この小さなプラグの内部にLEDが組み込まれています。どこまで高品質に
こだわるのでしょうか・・・USB端子が簡単に壊れなければの話ですが。
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本体を組み上げたところで、本来の機能を動作確認します。スマートフォンとBluetoothで接続し
実際に音楽を送り込んでみます。Bluetooth接続が完了すると、充電ソケット隣の白色LEDが
点灯します。相互のリンクはほとんど瞬時で、どこか(ト〇タ)のカーナビとは格段の違いです。
音楽再生が始まった瞬間、その音量、音場(音の広がり)、艶やかな中高音域と迫力のある
低音域に度肝を抜かれます。手の平に乗るでかい風邪薬のカプセル(だからPill?)の印象が
目に焼き付いているので、卓袱台をひっくり返されるほどの驚きです。世の中にはいつの間にか
こんな凄いものが広まっていたとは・・。しかし、故障でお困りの際は守谷工房へご用命下さい。
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