「羽根のない扇風機」で発売当時に周囲を驚かせたdyson製ファンです。
普通の扇風機のような回転する羽根(ファン)が見当たらす、どうして
風が出てくるのか、これまで真剣に考えたことなどありませんでした。
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しかし、本当に回転ファンなしで気流を発生させられるわけもなく、動作中の
本体からはしっかりモーター音が聞こえます。本体下部の円筒内にモーターが
組み込まれており、そこでファンが回っています。「羽根がない」のではなく
「羽根が見えない」扇風機です。ただし、設計には高度なエアロダイナミクスが
取り入れられており、ファンが発生する気流が直接吹き出しすのではなく、スリット
から吹き出す気流と周囲の大気との気圧差を利用して風量を増大させます。
*dyson社WEBより転載
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本体下部の円筒周囲に通気口があり、ここから
ファンが外気を吸い込みます。動作を確認します。
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プラグをコンセントに差し込みます。
電熱器具並みの電源コードです。
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リモコンをお持ちにならなかったので
本体下部のスイッチで操作します。
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スイッチを押すと取りあえず
「01」の表示が出ますが、
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間もなく「F2」の表示に切り替わり
モーターが動作する気配がありません。
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「F2」が表示された場合、本体をリセットする(電源を入れ
直す)とdyson社WEBにありますが、何も変わりません。
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上部の円形パーツ(空気吹き出し部)を
外します。持ち上げると簡単に外れます。
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円形パーツの底面に穴があり、
ここから気流が流れ込みます。
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モーターやファンが組み込まれた本体ユニットです。
円形パーツを回転させる首振り機構も内蔵されています。
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上面に気流の吹き出し口があります。
見えているのは整流用の固定羽根です。
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樹脂製のフレームが送風ユニットを覆って
おり、1本のトルクスネジで固定されています。
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ネジによる固定以外に、フレームの
周囲3か所に篏合部分があります。
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フレームを取り付ける際は、押し込むだけでフレーム側のツメが本体側の溝に勝手に
嵌まり込みます。しかし、取り外すには嵌まり込んだツメを起こさなければなりません。
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しかも3か所を同時に起こす必要が
あり、やや強引な方法をとります。
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樹脂フレームの可撓性を利用して
3か所のツメを同時に解除します。
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フレームが持ち上がってきます。
破損させてしまうので無理は禁物です。
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たかがフレーム・・にしては
複雑に成型されています。
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フレームを取り外すと、送風ユニットを
簡単に取り出すことが出来ます。
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送風ユニット自体は特に
本体に固定されていません。
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送風ユニットの底面にようやくファンの存在を
確認出来ます・・やはり羽根はあります。
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後進角が与えられた8枚のブレードで構成されています。
ターボファンエンジンのエアインテイクファンのようです。
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指先でファンに触れてみると・・、固着しています。ブレードの縁に粘着性の汚れが
付着していることから、モーター内にも同じ汚れが入り込んでいると思われます。
ファンに力を加えると、固着が解けて何とか回ります。最初は固かったものの、
しばらく回し続けると少しずつ軽くなってきます。これだけで応急修理になりそうです。
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送風ユニットは上側半分の黒色樹脂製カバーと
下半分の白色樹脂製カバーに覆われています。
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カバー同士を固定している
トルクスネジを緩めます。
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白色カバーに付いているこのツメは本体との
位置合わせ用らしく、外す必要はありません。
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黒色のカバーを外した内側に
整流用の固定羽根があります。
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白色カバーの内側にはもう一つダクトがあり、
回転ファンはダクトと一体成型されています。
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内側の固定羽根を取り外します。
周囲3本のトルクスネジを緩めます。
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固定羽根周囲の隙間から気流が吹き出し、上から
見て右回りにねじられたブレードに導かれる構造です。
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固定羽根の内側に、モーターを固定する
白色樹脂製インナーフレームがあります。
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ようやくモーターが出現しました。フレームには
配線を収めるステーが丁寧に作り込まれています。
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モーターシャフトが回転ファンの中心を
貫通し、ナットで固定されています。
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回転ファンとモーターを分離
するためナットを緩めます。
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ナットを外しただけではシャフトが抜けて
きません。シャフトの先端を軽く叩きます。
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回転ファンを分離すると、モーターの先端部が出て
きます。インナーフレームにネジ固定されています。
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あらためてモーターシャフトの回転を確認します。一部に
引っ掛かりがあります。整流子の損傷かも知れません。
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多分dysonオリジナルのモーターが組み
込まれているのでしょう。確かめてみます。
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モーターを取り出したところで通電してみます。
回転羽根のない単体では円滑に回転しません。
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モーターの型番を確認すると、「SHINANO KENSHI」製の
「LA034-040NN07」・・、dyson製ではありません。
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「SHINANO KENSHI」は長野県上田市にある
精密機械メーカーです。何と日本製のモーターです。
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「LA034-040NN07」を検索すると、海外の
WEBショップで400円くらいで購入できます。
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新しいモーターに交換したいところですが、取り寄せる
には時間もかかるので潤滑剤を吹き付けて様子を見ます。
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ダクトの内部や回転羽根の周囲に
埃や汚れが付着しています。
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クリーナーで丁寧に吸い取ります。
水洗いまでは必要ないようです。
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ダクトと回転羽根は一体成型されているので
つまり、ダクトも一緒に回転する構造です。
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ダクトを元に戻します。この状態ではダクトの慣性により
整流子の損傷が解消されるのか、正常に回転します。
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黒色カバーの内側に固定羽根の縁が嵌まるよう
溝加工されています。ここにも埃が付着しています。
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クリーナーで吸い取ります。カバーの
一部に切り欠きがありますが・・
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これはモーターへの配線を
収めるための成型です。
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先に固定羽根を嵌め込みます。コードを
成形部分に収め、トルクスネジで固定します。
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続いて上側カバーを取り付けます。
元の位置に正確に合わせます。
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トルクスネジで下側
カバーと合体させます。
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本体に戻すのは簡単です。位置を合わせて
押し込むとツメが勝手に噛み合います。
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元の状態に組み上がりました。
電源を入れてみます。
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「01」が表示されファンが順調に回転します。おそらく風量だと
思いますが、リモコンがないので切り替えることができません。
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「羽根のない扇風機」なのだから、「羽根が回らない故障」など有り得ないと
考えるのは早計で、この製品には軸流ファンと小型のモーターがしっかり内蔵
されています。一般的な扇風機には誘導型モーターが搭載されており、元々
モーター自体はほとんど故障しません。著名なdyson製ファンに、ありふれた
整流子モーターが搭載されている点は意外です。整流子の耐久性が特別に
高められているわけでもないようで、購入後に比較的短期間で故障することが
少なくないのではないでしょうか。もし製造元で修理してもらえないようでしたら、
是非守谷工房にお問い合わせ下さい。モーター交換も含めて対応致します。
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