以前に大変お世話になった方から達てのご依頼です。愛車のホンダステップワゴンに
ナビゲーションを取り付けて欲しいとのことです。車両型番はDBA-RG1、平成21年車
です。購入時にナビを取り付け済みですが、メーカーオプションによる高級モデルが
逆に仇となり、新機能を謳う最近の汎用ナビ(社外ナビ)が取り付けられない事態に。
既に近所のカー用品店に相談されたそうで、ホンダの営業所以外では対応できない
とのことです。しかも、ホンダが販売する現行機種に買い替えるしかないそうです。
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状況が良く理解できないままに、取り
あえず現状を確認させてもらいます。
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ナビが収められているのは通常の2DIN
コンソールです。周囲のカバーを外します。
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4か所のボルトを緩め
ナビ本体を引き出します。
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途中まで引き出したところで
背面の様子を確認します。
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一見しただけで、カプラ(コネクタ)および
ケーブルがやけに多いことが分かります。
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ナビ型番は「39540-SLJ-J21 NH167L」、
「NR-260JH07STP0」でも検索されます。
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ホンダは製品名「インターナビ」で、現在も販売を継続して
います。インテリジェント通信機能を装備した高性能機種です。
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ナビの換装を希望される理由はこれです。製品の発売後
5~6年で最新地図への更新が受けられなくなります。
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ナビゲーションの性能や機能を向上させるため、ハードウェアおよびシステムソフトウェアは
刻々と進化していきます。旧式のハードウェア上で新しいソフトウェアが動作しないことは
十分に分かります。しかし、単なるデータに過ぎない地図の更新が出来ないとは、いったい
どういうことでしょう。最新のハードやシステムでないと読み込めない、新しいフォーマットに
移行でもしたのでしょうか。それならば旧フォーマットのバージョンも提供すれば済むことです。
既存のユーザを、どうしてこのように見限るのでしょう。利益を追求するだけの企業体質が
見え隠れします。ユーザを軽視するような体質だから、コロナ禍ごときに対抗できないのです。
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ディーラーに持ち込むと、車両本体の査定価格を上回る
とんでもない金額になります。手頃な市販ナビを探します。
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パナソニック製SDナビゲーション、CN-RA06Dです。
国産GPS衛星「みちびき」に対応した最新型です。
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汎用の7インチナビなので問題ないと思い
ますが。念のためグリルの寸法を確認します。
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開口部で190mm(横)×110mm(縦)ほど
あります。ナビ画面とのフィッティングが心配です。
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元のナビを取り外したところに仮に取り付けてみます。2DIN規格に守られて、
空間にぴたりと収まります。車両本体に固定するための左右ステーもそのまま
使用できます。ただし、コンソールカバーと画面の間に10mm以下の隙間が
生じています。周囲を塞ぐグリルプレートを用意すれば何とかなりそうです。
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ナビ本体が無事収まっても、全てのケーブルを
適切に接続できないと意味がありません。
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最初に確認したように、標準的なナビに比べて
はるかに多くのケーブルおよびカプラを備えます。
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各カプラはそれぞれのピンを全て使い切っている
わけではありません。例えばこのAカプラでは、
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19ピンのうち13ピンに配線されています。
各コードは色やパターンで区別されています。
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32ピン仕様のBカプラです。上下で
16本の信号線が接続されています。
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車両側から全9個のカプラが出ています。
カプラに関する詳細データが不可欠です。
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検索した範囲内では、3例のWEBページでカプラおよびケーブル(信号)に関する
情報を見つけました。ネットから入手出来なければホンダディーラーに問い合わせる
ところですが、何とか取り付け作業に間に合うだけの内容です。この写真は取り外した
ナビの背面の様子です。使用されていないものも含め13個のカプラーが確認できます。
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各カプラの接続ピン番号です。ナビ背面を正面として見た場合の並びです。カプラに向かって
見た場合ではないので、参照される際は十分ご留意下さい。斜線のあるピンは使用されて
いません。カーナビのメーカーやカー用品のメーカーから、車種別の変換ケーブルが発売
されています。カーナビメーカー側のカプラと、車両メーカー側のカプラを簡単に変換・接続
できる製品で、調べてみるとパナソニックからもホンダ用の変換ケーブルが販売されています。
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主に電源、照明、スピーカー関係の信号を含むAカプラ、およびアンテナ、ビデオ、マイク
関係の信号を含むBカプラの全ケーブル(信号)の説明です。恐ろしいほどに複雑で、
市販の標準的なナビにはとても含まれない様々な信号がやり取りされています。なお、
接続コードの色は実装されているコードと全く一致しません。端子番号で対応させます。
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パーキング、リバース関係の信号を含むCカプラ、リアカメラ関係の信号を含むDカプラ、
ルーフアンテナの信号を含むEカプラ、GPSの信号を含むFカプラ、ガラスアンテナ、FM多重の
信号を含むGカプラ、アンテナセレクタの信号を含むHカプラの全ケーブル(信号)の説明です。
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システム通信関係の信号を含むJカプラの全ケーブル(信号)の説明です。Jカプラが扱う信号は、
完全にホンダ製インターナビ(メーカーオプション)独自の仕様で、専用に設計されたナビ搭載用の
インターフェースが車両側に用意されています。何と、ディーラーオプションのナビを搭載する車両と
仕様が異なります。この専用に設計されたインターフェースにより、高度にインテリジェント化された
ナビシステムが動作するわけです・・が、それが仇となります。別途販売されている変換ケーブルは
利用出来ません。利用出来るのは、ディーラーオプションの標準的ナビを搭載していた場合です。
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変換ケーブルを利用出来ない、ということは変換ケーブル無しでステップワゴンに
CN-RA06Dを接続するしかありません。双方でケーブル(信号の内容)を1本
ずつ全て照合し結線しなければなりません。カー用品店がどうしても引き受けない
理由はそういうことです。何とか結線作業を終えても、何らかの仕様の相違により
機能の一部が動作しない、悪くするとナビ自体が動作しない事態も起こり得ます。
幸い一部のWEBに、CN-RA06Dとステップワゴン(RG1)接続の成功例があり
ます(利益保持のためか手順の説明一切無し)。この例を信じて作業を進めます。
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次にCN-RA06D側のカプラ・ケーブルを確認します。取付説明書にある本体背面の説明です。
主なカプラは「電源コネクター」と「車両・AVインターフェース接続端子」の2つだけです。ドライブ
レコーダー接続端子もありますが、レコーダーは別途搭載済みなので配線は必要ありません。
*http://car.panasonic.jp/support/manual/navi/data_t/re06d_wd_ra06d_wd_t/re06d_wd_ra06d_wd_t.pdfからの転載
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同じく取付説明書にある「配線のしかた」のページです。まず、「電源コネクター」と
「車両・AVインターフェース接続端子」の各信号内容を詳しく照合して行きます。
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「電源コネクター」と車両側カプラとの接続状態です。ステップワゴンは前後左右に4個の
スピーカーが配置されており、CN-RA06Dのスピーカー出力仕様に一致します。Aカプラの
2、3、7、8、11、12、15、16に間違いなく接続します。アクセサリはAカプラ14へ、
バッテリーは17へ、イルミネーションを10に接続します。アースはステー近くの金属部に
ネジ固定します。取りあえずこれだけでナビの基本動作を確認することが出来ます。
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「車両・AVインターフェース接続端子」を2段階に分けて照合・接続します。
サイドブレーキをCカプラ2または3へ(どちらでも良い)、リバースすなわち
車両のバック信号をCカプラ4へ、車速信号(パルス)はAカプラ13になります。
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必要な車両側配線をカプラから切り離し、カー
用品店で購入したギボシを使って接続します。
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カプラから切り離した瞬間、コードの区別が付か
なくなるので、テープを貼り内容を書き留めます。
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ナビに付属するカプラ(車両・AVインターフェース接続
端子)です。ケーブル長にはかなり余裕があります。
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全てのケーブルに予めギボシが取り付けられており、
信号内容が記入されたスリーブを通してあります。
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「車両・AVインターフェース接続端子」後半の照合・接続作業です。元々バックカメラが搭載
されており、ご依頼主も不可欠だとおっしゃっています。カメラ映像はDカプラ3と4(アース)に
接続します。NTSC 1.0Vp-p(75ΩRCAピンジャック)の仕様なので、元のカメラがそのまま
使用できるはずです。カメラを作動させる電源が必要で、Dカプラ1と2(アース)に8Vを印加
します。2回路分のステアリングスイッチは、Bカプラの12、13へ接続します。車両側の
スイッチを操作すると12、13の抵抗値が段階的に変化します。CN-RA06Dにはスイッチ
操作ごとの抵抗値の変化を学習し、様々なファンクションに割り当てる機能があります。
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元のナビはカプラ経由で映像を入力していたので、
切り離してRCAピンジャックにつなぎ変えます。
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カメラの電源はACCからレギュレータを介して作ります。
データシートにあるようなまともな回路は必要ありません。
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テレビ、ラジオ(AM/FM)、GPSの各アンテナを接続します。地上デジタル放送用
アンテナとGPSアンテナは、車両に取り付けられている元のアンテナは利用せず、
CN-RA06Dに付属しているものを新たに取り付けます。ラジオ用アンテナは
車両に取り付けられているルーフアンテナを、カプラを変更して再利用します。
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フルセグ対応の地上デジタル放送を受信するため
4か所にダイバーシティアンテナを貼り付けます。
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フロントウィンドウ左右の隅にフィルムを
貼ります。配線はピラー内に隠蔽します。
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付属のGPSアンテナを取り付けます。
こちらも配線をトリム内に隠蔽します。
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左側ピラーから配線される地上デジタル放送
アンテナとGPSアンテナのカプラです。
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右側ピラーから配線される地上デジタル
放送用、残り2本のアンテナです。
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ルーフアンテナからのケーブルに
車載ラジオ用のジャックを接続します。
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照合に基づく結線作業は以上で終了です。
配線間違いがないことを祈るばかりです。
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電源コネクター、車両・AVインターフェース接続端子、
テレビアンテナ、ラジオアンテナ、GPSアンテナが揃います。
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全てのカプラを本体に差し込みます。
インターナビに比べると実に簡素です。
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しかし、パナソニックが誇る最新ナビの
実力は、カプラやケーブルの多さと無縁です。
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かなり余裕のあるケーブルを2DINの奥に
仕舞い込み、ナビ本体を車両内に収めます。
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完全にボルト固定する前に動作確認を
行います。緊張の瞬間を迎えます。
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電源投入直後、画面に「Strada」のロゴが
表示されます。無事に通電した瞬間です。
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続いて「安全上のご注意」が表示されます。
起動シーケンスが順調に進んでいます。
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地図が現れました。おぉ!「守谷工房」が表示されています。最新地図データに
工房が掲載されているとは、何と光栄なことでありましょう。そして、その工房の
前に現在位置がポジショニングされています・・、当たり前ですがGPSが正常に
機能していることが確認出来ます。続いてバックカメラの動作確認に進みます。
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カメラの映像が鮮明に映し出されています。元の
カメラなので、画角などの調整は必要ありません。
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2mm厚アクリル材をレザーカットして、隙間を
塞ぐグリルプレートを製作します。データはこちら。
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市販の変換ケーブルに専用のグリルプレートがセットされて
いるものがありますが、それだけで購入するのは躊躇います。
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詳しい機能や操作性まで確認しませんが、
ざっと見た範囲でも高性能ぶりが分かります。
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最後の段階で、ステアリングスイッチへの結線に接続不良に気付き、1度だけ
ナビを取り出して作業しました。ステアリングスイッチは、ナビの設定画面から
チャンネルや音量の調整、オーディオソース変更、地図表示縮尺の変更、
メニュー表示など自在に機能を割り当てることが出来ます。実に柔軟に設計
されているものです。唯一、電話の発信機能についてはマイクの接続も含めて
手を付けていません。ご依頼主がハンズフリーを利用なさらないとのことで・・。
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