パイオニア製CDチェンジャーの修理が入りました。ピックアップの交換が
必要と判断し、予め該当部品を調べておきました。すんなり判明したので
安直にお引き受けしたのですが、作業を始めてみると厄介なことに・・・。
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送られてきたのはパイオニア製PD-F25A。
CDを25枚セットできる連装チェンジャーです。
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収納枚数の違いによりいくつかモデルがある
ようです。中古品でも根強い人気があります。
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昔のレコードジュークボックスのCD版
です。そのメカ構成に興味津々です。
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本体前面の透明フードを跳ね上げて
25枚のCDを横方向に並べて入れます。
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カバーが外れると、CDを収納する
ラックを内側から確認できます。
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CDラックの奥にデッキが控えています。
底部のレールに沿って左右方向に移動します。
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任意のCD位置まで正確に移動し、上下2本の
アームが働いてCDをデッキ内に取り込みます。
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隣り合ったCDの間隔は約6mmで、巧妙に工夫
された機構により高精度で位置を合わせます。
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CDデッキの左右移動は全く正常です。デッキ
内に組み込まれたピックアップを目指します。
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底部のレールに並行するラックギヤに、デッキ側の
平ギヤが噛み合い移動させます。レールを取り外します。
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レールは太いスチールシャフト製です。高い
剛性でデッキをスムーズに移動させます。
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シャフトを両端で固定して
いるホルダーを外します。
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シャフトごとデッキが外れてきます。
CDを跳ね上げる下側アームが見えます。
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左右に移動するCDデッキを支えるシャフト
です。これだけ太いと撓む心配がありません。
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本体側の制御回路と接続する
FFC(フラットケーブル)です。
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ロックを解除してケーブルを抜きます。解除しなくても
抜き差しできるので、あまりタイトなロックではありません。
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取り出したCDデッキです。CDドライブ部分は一般的な機構ですが、
レールに沿ってデッキ全体が左右に移動し、ラック内に6mm間隔で
並ぶCDいずれか1枚の位置で正確に停止します。底部に組み込まれた
モーターと平ギヤにより駆動されます。上下2本のアームが取り付けられて
おり、下側アームがCDを押し上げてドライブ内に取り込みます。演奏後は
上側アームがCDを押し出しマガジンに戻します。複雑極まりない装置です。
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CDを出し入れする際にカバーが開閉します。そこに
マグネット式のスピンドルキャップが取り付けられています。
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反対側は、ピックアップ、スピンドルモーター、
トラバース等を含むドライブユニットです。
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ドライブユニット側を脱着する必要があります。
しかし、固定箇所や方法が皆目分かりません。
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破壊寸前まで力を加えて、突起の
入り込みやツメの噛み込みを解除します。
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サービスマニュアルがあれば
危ない橋を渡らずに済むのですが。
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この奥にも突起と軸受けがあります。
何とか壊さずに解除できそうです。
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この基板の表側にはアーム位置検出用の
タクトスイッチが2個取り付けられています。
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基板から延びるフラットケーブルが
邪魔なので、基板ごと外します。
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タクトスイッチを押し込む突起が見えます。
不必要に触らない方が身のためです。
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電源スイッチを出た他方1本との間で、電圧を
確認します。ヒューズ入り口は100Vです。
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ピックアップ基板に接続されるFFCです。
先にコネクタから抜いておきます。
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いい加減に外れてきて欲しいのですが、
まだ何かが干渉しているようです。
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部品同士の当たりを探っていくと、この金属
プレートがスピンドルと干渉しています。
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プレートの役割は・・分かりませんが、
取りあえず外して先に進みます。
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ようやくドライブユニットが持ち上がってきます。
他にケーブル接続が残っていないか確認して、
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ドライブユニットを完全に分離します。
試行錯誤を繰り返す長い道のりです。
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ユニットを表側に返すとピックアップが出現します。パイオニア独自の
設計による、明らかにひと味異なる部品構成です。トラバースを含む
金属製シャシーと、外側の樹脂製ホルダーの2重構造で、両者は
4か所の軟質ゴム製インシュレータでつなぎ留められています。
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金属製シャシーからインシュレータを
外します。溝に差し込まれているだけです。
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シャシーに取り付けられたジュラコン製部品により、
トラバースやスピンドルモーターが保持されています。
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ジュラコンのロックを解除し
トラバースのシャフトを抜きます。
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シャフトが抜けるとピックアップは
保持を失って落ちてきます。
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目標のピックアップに辿り着きました。
修理と言ってもこれを交換するだけです。
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これまで様々なピックアップを交換して
きましたが、まだ見たことのない型です。
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レンズ部分を点検すると、表面がやや曇っていることが
分かります。クリーニングで復活するかも知れません。
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レザー出力調整用のトリマーもあります。が、
経年劣化しているはずなので交換します。
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ピックアップ型番を確認すると「CMK-54XT」とあります。検索すると
数多くヒットし、そのほとんどが販売サイトです。製造メーカーを調べるも
パイオニア製と説明しているサイトは皆無で、「for PIONEER」つまり
パイオニア用としか説明されていないか、「unbranded」ノーブランドです。
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PD-F25Aの修理は京とんび様が
事例として取り上げておられます。
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記事中で「CD光ピックアップCMK-54XT(違う
ことが判明。型番不詳)」と説明されています。
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ピックアップに刻印されている型番が間違いなくCMK-54XTであるのに、
「違うことが判明」とは不可解です。さらに詳しく読ませていただくと、別の
記事で同じくパイオニア製PD-F51の修理が取り上げられています。CD
51枚を収納できるこの製品にもCMK-54XTが使用されており、ここでは
「違うことが判明→PEA1319」と説明されています。そうならば、何故
現状としてそのPEA1319が実装されていないのか・・、分かりません。
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B級オーディオファンというこちらも秀逸なWEBサイトが
あり、各メーカーCDピックアップを解説されています。
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パイオニア製ピックアップの中に辛うじてPEA-1179の
紹介があります。おそらく同じシリーズで外観がそっくりです。
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しかし、PEAのシリーズなどどこにも見当たりません。
元がCMK-54XTなので、素直に同型番を入手します。
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CMK-54XTはAmazonで扱いがあり
あっさり手に入ります。驚くほど高額ですが。
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元のピックアップと並べてみると全くの
同型で、何ら相違が見つけられません。
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京とんび様の説明は何かの間違いではないか、
と思いつつ新しいピックアップに交換します。
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金属製シャシーをホルダー内に収め、
4個のインシュレータを嵌め込みます。
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分解作業の逆手順・・とは言え、
組み立てもまた長い道のりです。
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CDデッキを本体内に戻します。全面カバーが開いた
状態・・ラックが跳ね上がった状態でセットします。
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太いスチールシャフトを通し、両端を
ホルダー金具で固定します。
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CDデッキの初期位置を、1枚目の
CDを取り込むよう左端に寄せます。
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FFCの接続を忘れていました。ロックが
緩いので直接差し込んでしまいます。
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CDチェンジ操作が正常に機能することは
確認済みです。左端に1枚だけセットします。
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全面フードを下げるとCD
デッキがスタンバイします。
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電源を入れ再生ボタンを押してみると・・、1枚目CDが取り込まれるも
回転し始めることなく間もなくラックに戻され、2枚目CDを取り込もうと
します。以後、1枚目は読み出し不能と記憶されるらしく電源を切らない
限り1枚目は選択できなくなります。さて、入手したCMK-54XTは
不良品だったのか、いや京とんび様の指摘通りPEA1319とやらを
入手するしか方法がないのでしょうか。PEA1319の検索結果は、
怪しい海外サイトで25000円もしたり、パイオニア製のピックアップ
Assy(アセンブリ)製品名であってピックアップ単体の型番ではない
情報もあります。修理不能とするにはまだ早い気がしてなりません。
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気を奮い立たせ、ピックアップを取り外して
もう一度新旧2個を並べ、違いを探します。
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やはり外観は全く同等でした・・が、CMK-54XTに
続く製品型番の詳細が同じではありません。
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元のピックアップは、CMK-54XTに続いて「PNP1344-A」、さらに
「PWX1294-」とあります。Amazonで入手した新品は「PNP1245-F」
さらに「PWX1190-」です。製造ロットの違いか他メーカーによる互換品
くらいにしか思わないところですが、両者間で唯一異なる点に違いありません。
CMK-54XTを隣国Chinaの通販サイトで調べると、何と50件近い商品が
ヒットします。よく見ると、CMK-54XTに続く型番が商品によって異なって
いることが分かります。そこで、それらを1件ずつ丹念に開いて調べていった
ところ、「PNP1344-A」と「PWX1294-」がいずれも一致する商品を
ひとつだけ見つけました。1か月近くもかかり、ようやく配送されてきました。
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長い道のりなんざぁ言っておれません。
届いたピックアップに交換します。
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これでうまく行かなければ、折れた心が修理
不能です。電源を入れ再生ボタンを押します。
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パイオニア製CDチェンジャーPD-F25A復活です。CDの読み出しは
快調そのもので安定しています。CDを複数枚入れておくと、再生が
終わるたびにCDを自動的に出し入れし、その動作の巧妙さは眺めて
いて飽きません。それにしてもピックアップの型番特定には参りました。
最初から寿命があることが分かっていて、(予定通りに)経年劣化した
部品を交換できれば、問題なくもうひとサイクル使用できるわけです。
電熱器具や電動機械のように危険が増すはずもなく、そのような製品の
消耗品的な部品を、製造元は何故長期間供給し製品をサポートしない
のでしょうか。最低限の義務+責任として、補修用部品の型番くらいは
分かりやすく開示しておいて欲しいものです。で、CMK-54XTに続く
「PNP1245-F」や「PWX1190-」が何なのか、興味が尽きません。
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