BOSE製プレーヤーの修理と一緒に、付属するスピーカーも修理するようご依頼が
ありました。潜望鏡のような一風変わった形のスピーカーで、片方は音が出ません。
スピーカーユニットを外してみるとすぐに原因が判明し、配線の1本が切れています。
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実は配線以上に深刻な問題があります。振動板(コーン)の
中心に取り付けられているはずのコーンキャップがありません。
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到着した直後は、ズタズタに破れたコーンキャップが
残っていました。写真は破片を取り除いた後のものです。
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修復方法をあれこれ考えた末、近所の
100円ショップでピンポン玉を買ってきました。
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ピンポン玉の球面が、コーンキャップを
代替するのに丁度良さそうです。
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球面の一部を切り取ればコーンキャップになる
はずです。直径を計測すると39.5mmです。
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一方、コーンキャップがスピーカーに取り付けられて
いた位置の直径を計測します。30mmくらいです。
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ピンポン玉球面の一部を正確に切り出す方法を考えます。
2mm厚アクリル板に穴を開け、穴にピンポン玉を当てます。
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アクリル板の厚み分だけ後退した位置で
CADから開口部の直径を読み取ります。
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簡単な図形問題なので計算で求めることも出来ますが、
どのみちデータをレーザーカッターに送るのでCADに任せます。
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アクリル板をレーザー
カッターにセットします。
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ヘッドが動き瞬時に切断
加工が終わります。
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保護紙をはがします。ピンポン玉
切り出し用の治具のようなものです。
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ピンポン玉を嵌め込んでみます。突き出た
部分の底面直径が30mmになるはずです。
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突き出し部分のカットに先立ち、ピンポン玉が
動かないよう接着剤を入れて固定します。
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一部が突き出た状態で
固定されています。
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切り出しにはカッターナイフを使用します。
刃厚0.2mmの薄い替え刃を選びます。
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ホルダーから外してアクリル板表面に密着
させた状態で、突き出し部分をカットします。
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力を入れて切り出すと、切断面が荒れて綺麗な円になり
ません。また、ピンポン玉の接着が剥がれてしまいます。
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変形させることなく正確に切り出すには、ピンポン
玉がしっかり固定されている必要があります。
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ピンポン玉とアクリル板の接触部
全体に接着剤を流し込みます。
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ピンポン玉をアクリル板ごと回転させながら、
周囲を少しずつ均一に切り込んで行きます。
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カッター刃を徐々に喰い込ませ
周全体を均一に切り離します。
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今度は綺麗に切り
離れたようです。
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切断面が均一で正確な
平面を成しています。
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残った側の切断面も綺麗なものです。
接着し直してもう1個切り出します。
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右上の1枚が最初に切り出した失敗作です。2枚目と3枚目は
切断面が整っており、コーンキャップとして利用出来そうです。
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スピーカーコーンに合わせ
艶消し黒で塗装します。
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接着剤の喰い付きを良くしようと軽くペーパー
がけしたので、その傷が少し残っています。
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3・4回吹き付けを繰り返し
傷を目立たなくします。
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とてもピンポン玉から出来て
いるようには見えないでしょう。
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スピーカーコーンへの接着には、乾燥後も
柔軟性を残すため「スーパーX」を使います。
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接着時にこの部品をどのように
保持するか、工夫が必要です。
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マスキングテープを貼り付けて
手で持てるようにします。
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切断面全体に最小限の
接着剤を塗り付けます。
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瞬間接着剤ではないので時間を
かけて落ち着いて作業できます。
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コーンの中心部を狙って慎重に
位置を合わせます。1発勝負です。
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うまく収まりました。コーンキャップを失ったことで何とも間の抜けた感じ
でしたが、無事に修復されてみるとスピーカーらしい引き締まった印象です。
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2台とも修復完了です。艶消しの
黒は全く違和感がありません。
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配線を半田付けし直し、
潜望鏡内に戻します。
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周囲の金属製フレームを
本体にネジ固定します。
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潜望鏡(?)の完成です。実に
面白いデザインをしているものです。
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念のためアンプに接続して音声出力を確認します。キャビネットの形状や容積
からして中高音域に重点のある、すなわち低音域が控えめのユニットのよう
です。もっとも、低音域をイコライザ補正して出力するBOSEレシーバーを前提
としているので、実際にはそれなりの音響を楽しむことが出来るのでしょう。
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