小型の冷蔵庫が冷えないので修理を依頼されました。
45Lほどの容量で、手の届くところに置くことができ
便利です。直らなければ廃棄してよろしいそうです。
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以前に点検に伺った際は問題なく動作していたの
ですが、その後再び調子が悪くなったとのことです。
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工房に運び込み点検し直します。
電源コードをコンセントに接続します。
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簡単なもので操作スイッチはこれだけです。
電源ON・OFFと温度調整を兼ねています。
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「切」の位置から目盛り2あたりまでツマミを回すと電源が
入ります。コンプレッサーが作動する振動で分かります。
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しばらくすると放熱器(吸熱器?)が冷えてきます。
コンプレッサーや冷媒の循環は正常です。
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しかし、ツマミをもう少し回していくとコンプレッサーが
停止します。サーモスタット内蔵スイッチの不具合です。
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サーモスタット内の電極に接触不良が
あることが容易に想像できます。
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サーモスタット内蔵スイッチを
取り出して修復することにします。
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ドアを開けた状態でも作業は可能ですが
面倒なのでヒンジごと外すことにします。
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上側のヒンジを外す
だけ、簡単です。
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サーモスタットの修理もさることながら、長年使われてきて
纏わりついた汚れが半端ではありません。掃除のことを
考えると、先にドアを外しておいた方が何かと楽です。
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ドアに邪魔されることがないので
サーモスタットへのアクセスが楽です。
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サーモスタットを内蔵するケースが
右側壁面にネジで固定されています。
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上下2か所のネジを緩めます。奥まって
いるので柄の短いドライバーを使用します。
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樹脂製のケースごと
外れてきます。
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中にサーモスタットが組み込まれ、そこから配線と
細長い金属管(キャピラリーチューブ)が出ています。
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温度調整シャフトに差し込まれて
いるツマミを引き抜きます。
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サーモスタットの手前に金属製
プレートがネジ止めされています。
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ケース内に保持させるための補助
部品です。取りあえず外します。
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大元のON・OFFに加え、設定温度によりコンプレッサーの
電源を断続するだけの部品です。あらためて回路計を当てて
内部接点の導通・非導通を調べます。やはり、最初はいったん
ONになるものの、ツマミを回していくと途中で突然切れます。
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完全に取り外して点検するには、奥に延びる
キャピラリーチューブを解除しなければなりません。
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吸熱器の一部が突起状に加工され、
そこにチューブの先が固定されています。
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突起を少し広げると
チューブが外れます。
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サーモスイッチの端子から
2本の配線を引き抜きます。
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液体膨張式のサーモスタットです。キャピラリーチューブ内に
封入された液体が、熱膨張・収縮することで設定温度に
従って電気接点を断続します。熱膨張係数の高い液体が
封入されているそうで、工業用には水銀やNaK(ナトリウム
カリウム)液が使用されますが、もちろん家庭用冷蔵庫には
そのような物騒な材料は採用されていないでしょう。
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シャフトの対面にあるツメを解除すると、キャピラリー
チューブが接続されるベローズ部が外れてきます。
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ベローズの伸縮が簡単なリンクを経由
して、上部の電気接点を動作させます。
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ベローズ部と一緒に電気接点部も外れます。
スナップアクション用の可動バネが見えます。
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可動バネに開いた四角穴にリンクの先が
入り込み、可動バネを上下させます。
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可動バネの対極となる接点を、
固定金具と共に引き抜きます。
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可動バネ側の接点表面を
綺麗に研磨します。
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固定金具側の接点表面も同じように綺麗にします。
カーボン蓄積などによる接点の汚れが、おそらく
不具合の原因であると(現時点では)思われます。
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しかし可動バネや電気接点は、設定温度に対する
動作が精密に調整されているので、下手に触ると・・
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まるで動作が狂ってしまう可能性があります。
それは組み上げてから確認するしかありません。
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さて、意を決して汚れ放題の
本体内外を掃除することにします。
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依頼されているのは冷蔵庫の修理なので
お掃除は作業の範囲外ではありますが。
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汚れの中でも深刻なのはカビの付着・集積
です。健康に害をもたらす可能性があります。
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黒い筋のような汚れは長年カビが蓄積した跡です。
洗剤に加えアルコールを併用して完全に落とします。
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背面に回るとコンプレッサーを
設置する開口部が見えます。
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コンプレッサーが吐き出す熱のせいで、
カビこそないものの埃がすごいことに。
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掃除機で埃を吸い取ります。キッチンの雰囲気に
含まれる油分のため、簡単には落ちません。
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延々と吸い取り続け
何とかこの状態に。
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冷蔵庫内部をもう一度清掃します。右上の
吸熱器表面がまだ黄色く変色したままです。
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その表面も真っ白で清潔な状態に。冷蔵庫は
雑菌の培地になりかねず注意が必要です。
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取り外しておいたドアを掃除します。ドア
下部の凄まじいカビには言葉が出ません。
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面倒なのでシンクで水洗いです。
擦り傷を覚悟でクレンザーを併用します。
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上下のモール際まで完全に汚れをします。
これで、いわゆる「白物家電」に復帰です。
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横に倒した状態で、本体
底面も清掃します。
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2対8くらいの割合でほとんどお掃除に労力を投入したところで、
既に修理を終えたはずのサーモスタットが、やはり正常に動作
しません。ツマミを回すと途中で切れてしまうのではなく、「切」の
位置でも電源が入りっぱなしです。諦めて部品交換することに。
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30年ほど前の冷蔵庫ですが、この通り全く同規格の
サーモスタットが今も手に入ります。しかもアマゾンで。
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キャピラリーチューブが小さくまとめられている
ので、強く折り曲げないよう丁寧に伸ばします。
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サーモスタット固定用の
金属プレートを移植します。
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元のキャピラリーチューブを通していた
保護用ビニルチューブを引き抜きます。
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特に傷んでいるわけでもないので再利用し、
新しいキャピラリーチューブを通します。
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サーモスタットを
ケースに収めます。
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キャピラリーチューブを注意深くケース内に引き込み
ます。強く曲げると封入液の膨張・収縮を妨げます。
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ツマミを取り付けると
完全に元と同じ状態です。
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配線を接続し庫内の右側壁面
上部にケースを取り付けます。
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ツマミを回してみます。まだ封入液が常温なので最低
温度(目盛り6)でもコンプレッサーが回ったままです。
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冷媒が循環する「シュー」という音が聞こえ、吸熱器の表面が
冷たくなってきました。次は、ドアを閉めてしばらく待ち、庫内が
十分に冷えたところでサーモスタットが正常に切れるかです。
設定温度を色々と変えながら、何度も動作を確認します。
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カビを含みひどく汚れていましたが、逆に深い
傷や塗装の剥がれなどはほとんどありません。
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長年の間に塗装面がくすんでしまっている
ので、ポリッシャーで研磨してみます。
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自動車塗装面仕上げ用のコンパウンドを使い、ダブルアクション方式の
電動ポリッシャーで左右側面と上面、ドア表面を磨き上げます。樹脂製
グリル部品の退色だけはどうにもなりませんが、全体が輝きを取り戻し
ます。綺麗になっただけではなく、清潔になった冷蔵庫をお返しします。
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